ずいぶん前に書評か何かで見て「読みたいリスト」に突っ込んでいた本書、ようやく読みました。久しぶりに頭を使う本、面白かったけど読んでいるとつい眠気が(^^;)

著者の鎌田さんは京大の教授でいらして、その講義「地球科学入門」は毎年数百人を集める人気講座なのだとか(※本の裏表紙の紹介より。本書は2019年の刊行なので、当時の情報となります)

まず「まえがき」に

ここには厳しい宇宙空間で特異な環境が38億年間も守られてきた歴史があります。(中略)地学はこうした壮大な歴史の上に成り立つ学問なのです。 (P4 ※「ここ」というのは地球のこと)

と書いてあって、私たちはみなその連続性の上に生きている、「言ってみればみんな38億歳」という言葉にいきなり目を開かされます。
さらに、地震&火山の巣である日本列島に住む我々日本人にとって、「地学」の知識は不可欠だと。

私もその通りだと思って本書を手に取ったわけなのですが、日本人には必要不可欠なはずの「地学」、他の理系科目に比べるとだいぶ影が薄いですよね。
「あとがき」には、「高校地学の履修率は5%程度」「そもそも全国の高校の地学教員が激減している」とも書かれています。

うちの子が高校に通っていた7~8年前、理系か文系かでクラス分けする時に、理系を選択すると地学が選べないことになっていて、「は?」と思ったことを覚えています。天文学や火山学を専門に学びたい子たちは「文系」になるの?と。

もう細かいことは忘れてしまったけど、子は理系で化学と物理を取って、高校では地学にはまったく触れなかったような…。私の時代は確か「理科Ⅰ」の中に地学も入っていて、文系理系に関わらず「地学基礎」的な授業を受けたのですが。
地学の先生、名前は覚えてないけど顔は覚えてるもんなぁ。

とはいえそれももうン十年前の話。共通一次は化学で受けたこともあり、習ったはずの「地学基礎」の知識は雲散霧消。
本書はセンター試験の地学の問題を提示しつつ、関連知識を解説していくスタイルで書かれているのですが、試験問題、ほぼわかりませんでした。目を通すのもしんどかった…。つい飛ばして解説だけ読みたくなる(^^;)

解説部分の文章はとても読みやすく、読んでいるとなんとなくわかったような気になってきます。地球の成り立ちから地震や火山のメカニズム、気象、そして宇宙や星の一生にいたるまで、「地学」で扱うトピックがどーんと幅広く取り上げられていて、サブタイトルにあるとおり「地球と宇宙をまるごと理解する」入門書。

「一応知っているはずのこと」も多かったですが、「沈み込んだプレートがその後どうなるか」という話には「へぇぇ」となりました。
「プレートが沈み込んでいてそれで地震が起こる」とはよく聞くんですが、常に動いているらしいプレート、つまりは「沈み込み続けている」ってことで、「それって最終的にどうなるん?」ということを、本書で初めて知りました。(もしかしたら高校で習ったのかもしれないけれども)

沈んでいったプレート、上部マントルの中をそのままどんどん入り込んでいって、下部マントルとの境界のところに溜まっていくのだそう。どんどん溜まって「プレートの残骸」は巨大になっていき、そのうち物質が変化して密度が大きくなり、下部マントルの中へ入っていけるようになる。そして今度は外核の表面に溜まっていくのだそうな。

下降するプレートの残骸=コールドプルームと、その反作用として起こる上昇するプルーム。結果的にマントル内では対流が起こり、物質の大循環が起こっている。
まさに「地球は生きている」なんだなぁ。その上の生き物たちだけじゃなくて、星そのものが。

で。
その、「プレートが常に動いている」せいで地震が起こるわけなんですけども。

日本列島は四つのプレートの相互作用でできあがっていて、常にその四つがせめぎあい、「ひずみ」が溜まりまくっている場所なんですよね。知識としては一応知っていたことですが、図表やら鎌田さんのわかりやすい解説のおかげで理解が深まると、「そもそもこんな場所に住んでる方がおかしくね?」という気分に。

日本列島は世界の陸地面積の400分の1(0.25%)しかありませんが、世界で発生する地震の約10%は日本で発生しています。 (P97)

地震は、日本列島に加えられ続けている巨大な力を解放するために起こっているといってもよいでしょう。この巨大な力が次にどこで解放されるのか、日本列島にはあまりに候補が多すぎて、地震がいつどこで起こるのかわからないほどです。 (P152)

はははははは。
昨今の地震状況を見ても、日本全国津々浦々、「ここは絶対揺れない」なんてとこ、ないですもんね。さらに世界の活火山の1割近くが日本に集中していて、富士山もいつ噴火してもおかしくないらしく。

いやぁ、マジで日本に住んでるの、ヤバくない……?

ちなみに「富士山は世界中を探しても他に例を見ないほど珍しい場所にできた巨大な火山 (P182)」なのだそう。
広い裾野を持ったあの美しい姿は、同じ場所に大量のマグマが噴出し続ける環境あったればこそなんだとか。うぇぇぇ、怖いよぉ。

「東海大地震の脅威」は私が子どもの頃からずっと言われてきて、でも実際には阪神大震災や東日本大震災、熊本に能登、と「大地震、違うとこばっかりやん!」と思ってきました。
しかし安心してください、東海大地震はちゃんと来ます。

地震学者たちは2030年代には次の「南海トラフ巨大地震」が起きると予測しています。私自身も2040年までには確実に起きると考えていますので、この場でも強調しておきたいと思います。 (P187)

マジですか…? 2030年代って、すぐそこなんですが……ほんとに???

「あとがき」部分で鎌田さん、「大丈夫です、日本人は揺れる大地の上で上手に生きる術を知っていますから」とおっしゃってくれるんですけど、それも程度問題っていうか…ねぇ? 東海、東南海、南海3つが同時に起きて(歴史的に考えて同時発生の可能性が高いらしい)、どうにか死者は抑えられたとしても、その後の生活……。
これらのこともさんざん言われてきていることではあるんですけど、「正常性バイアス」というか、怖すぎてあまり向き合いたくない話なので、改めて「うわぁぁぁぁぁぁぁ」となってしまいました。

よくこんな場所で長いこと生きてきたよね、日本人。

「あとがき」にはさらに「遅くとも10億年後にはよその星に引っ越さないと」ということも書かれていて、「長尺の目で考えることの大切さ」を説いてくださるんですが、ついつい「10億年後なんてもう人類は」と思ってしまいます(^^;)

短いスパンでは温暖化が進んでいるのは事実、でも長い目で見れば地球は氷河期に向かっていて、さらに長い先を考えると太陽の膨張で地球は熱いどころではなくなる。

いや、なんかほんと、すごいですね。たまたまこうして、この星に生きている現在。