(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください。記憶違い等多々あると思いますが、ご容赦ください。)

本当はぜひとも生で見たかった鳳月さんの業平、チケット取れなかったので配信で楽しみました。
良かったです!!!!!!
予想通り鳳月さんの色気がダダ漏れ、高子が一目で心惹かれてしまうのも仕方ない、各所でモテモテの色好みでも仕方ない。

鳳月さんの業平、天紫さんの高子、そして風間さんの基経という布陣は2023年の『応天の門』と同じ。まったく別の作品で複数人が同じ人物を演じるってなかなかないですよね。『応天』の時は仇役ながらも裡に葛藤を秘めた基経でしたが、今回はストレートに悪い! 憎たらしい!! 家のため、自分の出世のためしか考えない、妹高子の思いなどまるで意に介さず、業平を排除しようとする悪役。風間さんの「ヤな奴芝居」が見事でした。

そして『応天』の時は一緒にいるシーンがなかった業平と高子。今回は出逢いから別れまでがっつりしっかり。初対面で互いに惹かれあい、2度目には3度目を約して、さっさと高子のいる邸に出かけていく業平。あの時代、「邸に行く」ということはもうそういうことで、さすが色好みの業平、仕事が速い。

鳳月さんの色気がすごいので、ラブシーンはこちらもドキドキしてしまいました。

最初はおきゃんで可愛い雰囲気の天紫さん高子。業平との恋を知ってしだいに大人に――哀しい女性になっていく。天紫さんはすらっと長身で、お顔立ちも洋風のイメージで、見る前はどうかな~?と思っていたんだけど、魅力的な高子でした。歌が少し弱いのだけが惜しい。

多美子姫が先に入内して、焦る藤原良房と基経。藤原良相親子と四すくみの対立とか、『応天の門』で履修済みだったので、お話が頭に入りやすい。応天門が炎上し、「誰だ!誰がこんなことを!」と梅若が叫ぶ場面では、「道真来て!」って思ってしまいました。

史実である「応天門の変」。お芝居の中では良房親子が良相と親しい伴善男を追い落とし、それによって良相の力をも削ぐために良房親子が仕組んだ……ように見えましたが、歴史上の真実ははてさて。

伴善男役は佳城葵さん。佳城さんいいよね~。無実の罪着せられるのお気の毒だった。

で、えーっと、先に名前を出してしまいましたが、『応天の門』にはいなかった「梅若」。業平とは懇意の「市を仕切る頭領」。庶民風なんだけど、実は貴族の出で、藤原一門に取り潰された橘何某の子息。
なんかとてもいい役で、演じる礼華はるさんの雰囲気によく合ってて格好良かった。お芝居も歌も立ち姿も良かったなぁ。紅葉柄の衣装とか、出で立ちも良いのよね。

彩みちるさん扮する女官あけびはかつて彼の生家に仕えていて、最後梅若が内裏での花の宴に参加することになって感無量、「あのお方が花の宴に――!」。キャスト表に「内裏の不良女官」ってあるのを見た時は「何それ」って思ったけど、手癖の悪い女官たち、お話のいいアクセントになってて面白かった。彩さんもさすがのお芝居。初演にはなかった役みたいだけど、彼女たちのおかげで退屈しませんでした。梅若、初演よりもいい役だったのでは???

ノルさん(稔幸)主演の2001年の初演、観てるんだけど主題歌以外の記憶があんまり残ってなくて、梅若誰がやったんだっけ、と調べたらブンちゃん(絵麻緒ゆう)でした。そりゃそう、と思ったけど、この時もうブンちゃん星組じゃなかったんですよね……。あの悪名高い新専科制度で異動になってて、専科からの出演。基経役のタータン(香寿たつき)も安倍清行役のガイチ(初風緑)も専科からの参加だった。

その後タータンは『花の業平』東京公演で星組のトップになるわけで、ノルさん業平は宝塚のみという、色々と変則的な時代でしたね……。タータンの業平もさぞ色っぽかったろうと思うし、鳳月さんとタータンって以前から雰囲気もオールマイティなところも似てると思っていたので、鳳月さんによる『業平』再演、すごく「わかる!」だったんですよね。劇団的には『応天の門』からの流れかとは思いますが。

初演のプログラムを家捜しするの大変なので、手近にあったラガールカードの写真を。でもポスター、業平じゃなかった……。(寂しいのでおまけで『黄金のファラオ』を)


初演の伴善男が鈴鹿照さんだったと知ってなんかほっこり。あー、佳城さんは鈴鹿さん枠なのか、なるほど。(「鈴鹿さん枠」って何)

話がめちゃめちゃズレましたが、初演でガイチがやった安倍清行、業平の親しい友人で出番も多い役、今回は夢奈瑠音さんでした。安心して見ていられるお芝居でしたね~。

『BLUFF』以来大注目の彩海せらさんは藤原良相の息子、藤原常行役。あんまり出番がなくて、今ひとつ見せ場がなかった……さびしい。ちなみに初演の常行はトウコちゃん(安蘭けい)だったらしい。

高子の乳母役白雪さんもさすがのお芝居だったし、威厳ある太皇太后を務めたかと思うと市場の庶民になっている組長・梨花さん。大活躍でした。

入内が決まった高子を屋敷からさらっていく業平。けれども逃避行は長くは続かず、結局は引き裂かれる。残された高子の打ち掛けを手に業平が慟哭する場面、鳳月さん、本当に涙を流してらしたよね……。そしてあの場面、高子と業平二人ともが梅のお着物で、後ろの几帳に掛かっている布も梅で。雅だった。

あと、基経によって都を追い出された業平が、任地に向かう途中で伊勢の斎宮(恬子内親王)とよろしくやるエピソードがあるんだけど、斎宮って、神に仕える乙女なんじゃないの? すんごい罰当たりなことしてない???

劇中では斎宮と業平はもともと顔見知りで、斎宮の方が業平を慕っていて、「こんなところに閉じこめられていて寂しい」と迫るんですよね。史実(というか『伊勢物語』)にも業平との逢瀬が描かれているらしいのだけど。

「高子と引き離れて寂しくて他の女と」は時代的にまぁしゃーねぇな、って感じだけど、「斎宮と契る」は時代的にかなりヤバい気が。

それでこの恬子内親王、最後都に戻ってきて高子と言葉を交わすシーンがあるんです。なんかめっちゃヒヤヒヤした!!! 業平のこと口に出すんじゃないかと思って。高子と業平の話は都では公然の秘密というかみんな知ってることだったろうと思うんだけど、恬子様、どういう感情で高子と喋ってたんだろうなぁ。無駄に緊張感のあるシーンだった。

恬子役は『BLUFF』でヒロインを務めた花妃舞音さん、堂々と落ち着いたお芝居だった気がします。


全体的にとても良かっただけに、ツアーじゃなく大劇場でやってほしかったですねぇ。大劇場ならどうにかチケット取れただろうに……。
あと初演も見返したくなりました。大昔に録画したVHSテープがあるのはあるんですけど、見るの大変なので、NHKさん『メモリーズオブ宝塚』で放送してくれないかしら。もうあの番組が復活することはないのかな。

ちなみに楽天TVでは初演『花の業平』を550円でレンタル配信中。なんてうまい商売だ!!!(→楽天TVの配信ページ


月組さん、次の『GUYS AND DOLLS』も楽しみです。彩さんと彩海さんのダブルキャスト、どっちも気になる~~~。