びははせんたい・みんきーまま
★美母戦隊ミンキーママ★
その1『PTAから始まった!』 Vol.1 
[E:danger]この物語はフィクションです。実在の人物・団体等には一切関係ありません。

 朝8時40分。市立あかね幼稚園に子ども達が登園してくる時刻。先生やお友達に元気に挨拶する可愛い声に混じって、送り当番のお母さん達の井戸端会議の喚声がさわやかな朝の空気をびんびんと震わせている。
「ね、聞いた? 昨日またミンキーママが出たんだって!」
「知ってる! あたし見た!」
「えーっ、嘘ーっ、あんた河辺町じゃないでしょ」
「ミホちゃん家に遊びに行ってたんだもん。カッコ良かったわよ〜。って、あたしが見たのは後ろ姿だけだけどさ」
「なんだ、顔見てないの? っていうかさ、ホントにいるの、そんな戦隊シリーズのバチモンみたいな奴」
「だってこれで3回目でしょ。見た人いっぱいいるよ」
「でもさぁ、なんでミンキーママなの? なんで女なのよ? どうせだったらイケメンばりばりの戦隊ヒーローじゃなきゃさ。見てもしょーがないじゃん」
「それ言えてる〜」
 近ごろ巷に流行るもの。巨人、大鵬、卵焼き――じゃなくて、謎の戦隊ヒロイン、ミンキーママ。
 はぁ、っと大きくため息をついたところで。
「あ、木戸さん。木戸さんどう思う? ミンキーママが新手の番宣だって方に500円、どう?」
 えっ。
「だってさ、そんな正義の味方なんてホントにいるわけないじゃない、絶対なんかの宣伝だって! きっともうちょっとしたらテレビかなんかで始まるのよ。最近そーゆーの、自治体がやってたりするじゃない、『お掃除戦隊ワケルンジャー』とかなんとか。一口500円、乗らない?」
「いや、あたしはちょっと……」
 乗れるわけないだろー。当のご本人なのにさっ。
「もったいないのぉ。真実正義の味方である方に賭けといたら儲かるではないか」
 そそくさと園庭を逃げ出し、家路を急ぐ(って、家までたったの5分だけど)帰り道、耳元でじじぃの声がした。
「うっさい、しゃべんな! 誰かに聞かれたらどーすんのよ」
「そっちこそそんなに大きな声で独り言言っとると怪しまれるぞぃ」
 ばしっ。
 自分で自分の耳の後ろ叩いて。あー、全く、自分まで痛い。
 そう、あたしの耳元、髪の毛の中にはじじぃが一匹住んでいる。丁度『犬夜叉』に出てくるノミの冥加じーちゃんみたいな奴が。そんでもってあたしは。
 あたし、木戸玲子(きど・れいこ)は、ミンキーママの一員、ミンキーブラックだったりする。