びははせんたい・みんきーまま
★美母戦隊ミンキーママ★
その1『PTAから始まった!』 Vol.2
[E:danger]この物語はフィクションです。実在の人物・団体等には一切関係ありません。

 こんなはずじゃなかった。断然、こんなはずじゃなかった。可愛い一人息子の暁(あきら)がやっとこの春幼稚園に入園して、めでたく増えた自分の時間を目一杯謳歌するはずだった。映画に行こうか、スイミングに行こうか、はたまたフラメンコなんて習っちゃおうかな。いやいや、まずは今の内職より実入りのいいバイトを探して、それからそれからマンガを描くのだ! 子どもの頃からの夢、復活!
 ああ、それなのにそれなのに。バラ色の春が来る前に、あたしはPTAの役員に当たっちゃったのだ。別にそれ自体はしょーがないし、役員に当たっただけで人生お先真っ暗になるわけでもないんだけど。
 入園式はまだまだ先の3月下旬、第1回PTA役員会議でさらにめでたく副会長に当選。当選ったってくじ引きだよ。会長以下、副会長、会計、母親代表と全部くじ引き。普通、そーゆーのって園からの推薦とか、将来市会議員にでもなりたいお父さんとかが立候補するもんだと思ってたけど。
「皆さん公平にということで」
 年長の親も年中の親も、幼稚園初心者も引っ越してきたばかりの人も、下に赤ちゃんのいる人もおかまいなく。
 また私もこーゆー時に限って当たるんだよなぁ。お年玉年賀ハガキの記念切手すらろくに当たらないっていうのに。しかも引いた紙には『福』の文字。先生、これって『副』の間違いですかぁ。
「あ、すいません。ついうっかり」
 って、あのねぇ。喧嘩売ってるとしか思えないんですけど。
「それでは会長、矢沢伸明さん。副会長木戸悟さん。会計倉橋和也さん。母親代表は里見芳美(さとみ・よしみ)さんでよろしいでしょうか。承認される方は拍手お願いいたしまーす」
 ぱちぱちぱち。
 はい、おめでとう。
 当たったよ、副会長。がんばってね、ダーリン。
「へ? 俺? 幼稚園の会議って、だって昼間だろ? 行けるわけないじゃん」
 そうなのだ。なんでか役員の名前はみんな「保護者=父親の名前」になってるけど(だからこそわざわざ「母親代表」なんてのがいるんだけど)、実際動くのは私ら母親に決まっている。ったくね。むかつくよな。
 まぁでも会長じゃなかっただけましか、と思っていた。その時は。
 なんせPTA会長と言ったら早速入園式でご挨拶しなきゃいけないし、運動会でも卒園式でも、とにかく代表として前に立たなきゃならない。なんかあったら責任だって取らなきゃなんないだろう。たかが幼稚園のPTAにどんな大変な「何か」があるのかは知らないけれども。
 それに比べれば副会長は、せいぜい会議の司会進行をさせられるぐらいのもので、文責を負わされることもない。執行部の他の3人、そして先生達とうまくやっていけさえすれば、スミレ色の幼稚園生活ぐらいは送れるはずなのだ。きっと、たぶん。