びははせんたい・みんきーまま
★美母戦隊ミンキーママ★
その1『PTAから始まった』 Vol.5
[E:danger]この物語はフィクションです。実在の人物・団体等には一切関係ありません。

 あたし達、互いに顔を見合わせ、辺りをきょろきょろ見回し。
 もちろん誰もいない。幼稚園の隅っこ、『おかあさんの部屋』と銘打たれた小さな部屋にはあたしら3人と里見さん家の下の子、もうすぐ2歳の詩月(しづき)ちゃんしかいない。もちろん廊下にも誰も見当たらず、園庭で遊ぶ暁や翔太くんの姿がかいま見えるだけで。
「えっと、それで今度の会議の議案なんだけど」
「年間行事の検討だよね。特に7月の夕涼み会のやり方について」
「7月のこともう決めるの?」
 気味の悪い謎の声なんか聞こえなかったことにするあたし達。わざとらしく頭を突っつき合わせて資料をひっくり返す。
「こらー、無視するでないっ!」
 声とともに机の上、あたしらの視線の真ん中にぼんっ!と小さな煙が上がり。
 じーさんが立っていた。体長わずか10�足らず、白い髭に杖を持った、できそこないの福禄寿みたいなじーさんが。
「誰ができそこないじゃ、誰がっ!」
 ぱこっ! じーさん、ノミのようにジャンプしてあたしの頭を杖でぽかり。小さいくせにけっこう痛い。
「じぃ、じぃ」
 ぱちぱちと拍手して、なぜか詩月ちゃん大ウケ。机の上のじーさんに手を伸ばす。はっ、と気づいた里見さん、慌てて詩月ちゃんを引き戻して。
「何なの、あんた」
 倉橋さんが訊いた。
 じーさん、もったいぶった咳払いを一つ。
「おっほん。『何なの、あんた』と訊かれたら、答えてあげるが世の情け」
 ロケット団か、おまえは。
「愛と真実の正義を貫く、ラブリーチャーミーな白仙人、東流斎(とうりゅうさい)とはわしのことじゃ!」
 って、大見得切られてもな。仙人だって?
「なんだか知らないけど、続けて『ホワイトホールが待ってるぜ』なんて言ったらぶっ叩くわよ、じーさん」
 何事にも動じない、この倉橋さんの冷静さがたまらん。
 倉橋さんに冷ややかに睨みつけられたじーさん、ぽりぽりと頭を掻いた。
「まったく近ごろの娘っ子は礼儀を知らんのぉ。一昔前ならわしら仙人に向かってそんな口を利くような奴は首打たれても文句は言えんかったもんじゃ。あー、まったくなさけない」
「で、その、ありがたーい仙人様がどのようなご用件で姿を現してくださったんでしょうか」
 本当に仙人だと信じたわけじゃないけど。そもそもこんなちみっこい、人形みたいな年寄りが口利いて動いてるっていうところからして全然現実味がなくて、たちの悪いぺてんにかかってるような気分だったんだけど。