びははせんたい・みんきーまま
★美母戦隊ミンキーママ★
その1『PTAから始まった』 Vol.6
[E:danger]この物語はフィクションです。実在の人物・団体等には一切関係ありません。

「さっき、なんか『その通り!』とかおっしゃってましたよねぇ。矢沢のくじ引きの話で」
 あのはた迷惑な“ざぁます夫人”が悪人パワーで当たりくじを引き寄せた、って倉橋さんが言ったら、このじーさんが現れたのだ。してみるとこのじーさんも矢沢の悪パワーの副産物なのでは? あたしらがあいつの悪口を言うと懲らしめに出てくるのだ。ひぇーっ、怖すぎる。
「アホ。逆じゃ、逆! わしは白仙人、おまえさん方をあの黒仙人の手先から守るために来たんじゃ」
「黒仙人?」
 じーさんの話を要約すると。
 世界には善のパワーと悪のパワーがあって、昔から闘いを繰り返してきた。仙界も白と黒、二つに分かれて争い続けている。悪に傾いた人間は容易に黒仙人の操り人形となり、人間界において代理戦争を繰り広げる。
「あの矢沢理恵子という人間はな、黒仙人達がこのゆかり野市に送り込んだ尖兵なのじゃよ」
 …………。
 あたしら3人、再び互いの顔を見合わし。
「行こか」
「うん、場所変えよ」
「あ、うち来てくれてもいいよ」
 そそくさ。
 付き合ってられるか、ってーの。
「こらーっ、無視するでないと言うとろーがっ!!」
 じーさん怒りの鉄杖がぽかぽかぽかとあたしら3人の頭を打ち。
「座れ!」
 じーさんが叫んだとたん、立って部屋を出ようとしていたあたし達、どすんとものすごい勢いで尻から床に叩きつけられた。
「何すんのよ、このくそじじぃ!」
「うるさい、人の話をしまいまで聞かんからじゃ。ほれ、椅子に座れ!」
 再びじーさんの言葉とともに、あたし達の体はひゅんっと空中を滑って椅子へ。
「しゅごー、しゅごー」
 すごい、と言いたいのだろう。詩月ちゃん、再び大ウケ。にこにこして拍手する詩月ちゃんに向かってじーさん、ピース。……あのな。
 しかしその力を認めないわけにはいかない。白だか黒だか知らないけれど、ともかく妙な力だけは持っている。あたし達を無理矢理椅子に座らせる程度の力は。
「あのさ、じーさん」
 腕を組み、さっきより更に冷たい視線をじーさんに浴びせながら、倉橋さん――ああ、もうめんどくさい、淳子だ、淳子。淳子が口を開いた。
「百歩譲ってあんたがいい仙人だったとしてもさ、信じられるわけないでしょ。大体あたし、世の中を単純に善悪に分けようっていうどっかの大統領みたいな考え支持してないし、いくら矢沢理恵子が困ったおばさんだとしたって、あの程度の人間、『クラスに一人はおりまんな』って奴でしょうが。自分の子どもを目立たせたいだけのただの親バカでさ。迷惑だけど、子ども虐待して死なしちゃうようなのに比べたら実害ないわけ。それを“黒仙人の手先”とか言われてもねぇ」
 いやぁ、実に正論。ぱちぱちぱち。