びははせんたい・みんきーまま
★美母戦隊ミンキーママ★
その2『ミンキーママ、デビュー!』 Vol.2
[E:danger]この物語はフィクションです。実在の人物・団体等には一切関係ありません。

 暁にとってはおばあちゃんになるわけだけど、おばあちゃんと言ってもまだ56歳。見た目も若い。ほんの数年前までばりばり働いていたので頭も若い。ちょうどこの家が建って間もなく、暁にはひいばあちゃんに当たるダーリンの祖母が亡くなった。もう家事を担う、ということはしていなかったけど、それでも自分と夫(私にとっては義祖父、暁にとってはひいじいちゃん)の身の回りの始末や、家庭菜園の世話なんかは元気にやっていたばあちゃんが急な心臓発作で亡くなり、それまで矍鑠としていたひいじいちゃんが一気に老けた。自分も体をこわして入院してしまい、その世話のためにお義母さん、思い切って仕事を辞めたのだ。嫁に来てまだ日の浅い、おまけに暁はまだ赤ちゃん、のあたしには到底じいちゃんの面倒は見られなかったから。
 ま、今はもうすっかり元気なんだけどね、じいちゃん。だいぶ言ってることが怪しくなってきて、暁とダーリンの区別がかなりごちゃごちゃになってきてるけど、とりあえず体は元気。
 ダーリン、暁、お義母さんにお義父さん。そしてひいじいちゃん。これからこの5人を欺いてかなきゃならないわけだよ。隠し通さなきゃならないんだ、このノミ仙人の存在を。
「あれっ、ママ、それどーしたの?」
 夕飯を食べながら、暁がめざとく念珠に気づいた。
「これ? あ、これね、これその、翔太くんのお母さんがくれたの。これからPTAで仲良くしなきゃいけないし、お近づきの印にって。夢月(ゆづき)ちゃんのお母さんと3人お揃いなのよ。色違いで」
 我ながらなかなかいい説明。
「ふうん。じゃ、ぼくも今度翔太くんになんかあげよっと。ね、何がいいと思う?」
 結局暁は折り紙でクワガタムシを折って翔太くんと夢月ちゃんにプレゼントした。自分のも作った。ゴムを付けて腕に巻き、「クワガタレッド、クワガタブルー、クワガタピンク! 3人揃ってクワガタレンジャー!!」 ……親はミンキーママで子はクワガタレンジャーか。ああ、平和だ……。
 実際それからの数週間は平和に過ぎた。入園式では矢沢の旦那さん、矢沢伸明氏が支社長らしい落ち着きと威厳でもって祝辞を述べてくれた。矢沢の夫だけあってちょっとばかしネクタイの色が派手で、チックでべったり横分けにした髪が古めかしかったけど、たぶんそれなりに年も行ってるんだろう。別に普通のおじさんだった。
 子どもが年中と年長で離れているせいもあって、矢沢理恵子本人と顔を合わすことは少なかった。送り当番の時も相変わらず「あんた一体どこ行くの?」って格好をしてたから、こっちから矢沢はすぐわかるんだけど、向こうは別にあたし達にそれほど興味は持っていないようで、会釈だけしてさっさと通り過ぎてくれていた。入園1週間後ぐらいにあった、PTAの部長会議にも、矢沢、上の子が熱出したとかでドタキャンだったし。またあたし達に全部押しつけるための仮病じゃないの、なんて思ったけど、まぁあたし達としても彼女がいない方が気分的に楽だったりはするのよね。