びははせんたい・みんきーまま
★美母戦隊ミンキーママ★
その2『ミンキーママ、デビュー!』 Vol.10
[E:danger]この物語はフィクションです。実在の人物・団体等には一切関係ありません。

 あー、疲れた。かえすがえすも疲れた。
 まったくこれじゃあ黒仙人の言いなりになってさっさと矢沢の子どもを発表会の主役に据えた方がよっぽど楽やん!
 あの後役員会、紛糾したのだ。矢沢の提案に賛成する人が3人もいて、かんかんがくがく、議論が始まってしまった。「毎年いやいやくじで会長を決めるぐらいなら、そういう特典をつけて気持ち良く引き受けてもらってもいいんじゃないか」という意見が出ると、そっちになびく人も現れた。「発表会」を私立の園なみに芸術性の高い(!?)ものにするという話に頷く人も。
 悪霊の落ちたお母さんたちは虚ろでもなんでもなく、十分に活発で「あかね幼稚園を良くしよう」という意志に満ちていた。「発表会」の件は先生の説得でとりあえず今年は見送ることになったものの、保護者にアンケートを実施することを約束させられ、今日のメイン議案であった「夕涼み会」のことでもけっこう色々な意見が出て……。
 帰ってきたらもう5時やん。がーっ、もう、今日レトルトカレーにしちゃおっかなぁ。
「ママーっ、今日ハンバーグやんなぁ。ぼくの大きいの作ってや。こんくらいのやで!」
 くぅ、覚えておったか。そうなのだ、今日はハンバーグのつもりで家を出る前にミンチをもどしておいたのだ。ちくしょー、まさか役員会がこんなに長引くとは思わないじゃないか。
「甘いのぉ。実に甘い」
 しょうがなく玉葱のみじん切りを始めると、耳元でじじぃがほざいた。
「問題が起こるのは初めからわかっておったじゃろうが」
「わかんないわよっ。まさか矢沢以外のお母さんまで悪霊憑きになるなんて思わないし、大体何も憑いてない方がよけいややこしいじゃない」
「それが甘いと言うんじゃ。自分たちの意見ならすんなり受け容れられると思うておったのか? 紛糾してこそ会議の値打ちがあろうというもの。ま、これからはもちっと理論武装して臨むことじゃな」
 たかが幼稚園のPTAでしょっ。国会や株主総会じゃあるまいし、いいじゃないのよ、なぁなぁで。
 と思ったけど口には出さなかった。どうせ言わなくてもじじぃには筒抜けだろう。しばし無言で玉葱を炒め、味噌汁の用意をする。
「ところでさ」
 玉葱に挽肉を混ぜながら、あたしは言った。
「あの、なんてったっけ、黒仙人の名前。ゲンなんとか」
「玄刃衛(げんじんえ)か? あれは仙人ではない。ただの使い魔じゃ」
 え、そうなの?
「恫漣士(とうれんじ)の奴はそうそう姿を現したりはせん。おまえさん達が直に戦うのは常に奴に操られた人間と、そして魔物達じゃろう」
 魔物達って……。