びははせんたい・みんきーまま
★美母戦隊ミンキーママ★
その2『ミンキーママ、デビュー!』 Vol.9
[E:danger]この物語はフィクションです。実在の人物・団体等には一切関係ありません。

 ピンクが胸元のペンダントを取り、ぴぃと吹いた。くりんと可愛い勾玉のような形をしたペンダントトップがホイッスルになっているのだ。ピンクの吹き鳴らす涼やかな音に合わせて、まるで踊るように散らかっていた机や書類が元に戻っていく。
 うわぁ、これうちの片づけに是非欲しい。
「お次はこれね」
 さっとパープルが羽根扇を広げて煽ぐと、正体を失っていた役員たちがふらふら幽霊のように自分の席に戻った。
 うっそぴょーん。
「ほれ、もういいぞ」
 もういいぞって……ああ、そうか。再びあたしの脳裡に神の啓示が舞い下りた。
「神ではない、仙人じゃ」
 うるさいっての。
 あたしはただ一言、『ぱたぽん』とだけ言った。それが変身を解く呪文。ってそれ、暁が持ってる「幼い子の詩集」のタイトルじゃん。どーゆーつながりよ。
 ともあれあたし達はミンキーママから普通の格好に戻り、席に着いた。子どもたちを守っていたバリアーは解け、そして。
 耳元で東流斎のじじぃがぱんと手を打ったと思ったら。
 矢沢がしゃべっていた。
 会長の挨拶だ。長々と、さっき聞いた開会の挨拶。
 あたしは机の上の資料を見た。会則のところ。会長の子息は発表会の主役ができる、なんていう条項はもう見当たらない。どこをどう見ても、あたし達が作った資料のままだ。
 ふと時計を見ると、会議が始まってからものの5分も経っていなかった。さっき黒仙人たちと闘っていたのはたったの10秒だったとでも言うんだろうか。まさかそんなはずはない。じじぃが時間を戻したのだ。黒仙人の介入がなければ当然そう流れるはずだった時間へ。
「えーっ、お手許の資料をご覧下さい」
 さっきも言ったセリフを、あたしはまた言った。今日の段取りを説明して、まずは会則の確認だ。変なところはどこにもない。あたしが会則を読み上げる間、役員のお母さん達はあくびをかみ殺し、ひそひそと関係のないことを囁き合っている。それでこそ正常というものだ。
 が。
 何かご質問のある方はいらっしゃいますか、と言ったとたん。
 矢沢が「はい」と、手を上げた。「よろしいですか?」と言って口を開いた矢沢が言ったことはもちろん。
 「会長の子息は発表会で主役を張る」という案件。
 おーい、黒仙人は撃退したんじゃないのかぁ。
「しょうがなかろう。彼女自身の意志は仙術では止められん」
 ……何だったのよ、さっきの闘いは。