びははせんたい・みんきーまま
★美母戦隊ミンキーママ★
その2『ミンキーママ、デビュー!』 Vol.6
[E:danger]この物語はフィクションです。実在の人物・団体等には一切関係ありません。

「先生だけではないぞ」
 耳元で、突然じじぃがしゃべった。
「よぉく見てみぃ。他の役員たちの顔を」
 へ?
 コの字型に並べられた机。20数人の役員達の前に、あたし達執行部の人間が座っている。長方形の一辺だけが、他の三辺と切り離されて置かれた格好。事務局担当の川端先生だけ芳美ちゃんの隣で、園長先生を含む他の先生5人は窓際の別の列に控えている。
 みんな一様にうつむき加減で、みんな机の上の資料に目を落としていて、そしてみんな――。
 みんな、何も見ていない。
 みんな、虚ろだ! こんな退屈な席で、あくびの一つもしていなければ、隣の人とこそこそ囁き交わすことさえしていない。隅でブロック遊びをしてる子ども達(役員の子どものうちでも詩月ちゃんのような比較的小さい子達。大きい子はほとんど外で遊んでる)だけが、ちゃんとした生気を持ってて。
「なんか出てるよ。黒い、煙みたいなの」
 淳子が言った。
 目を凝らすと、確かに見えた。虚ろなお母さん達の頭の上に、まるで背後霊のようにゆらめく黒い影が。
「邪気じゃ。みんな操られておるのよ」
 あたしの耳元に隠れていたじじぃがぱっと机の上に飛び降りた。ノミから10�大の姿に戻る。
「正体を現せ、下郎ども!」
 気合いとともにじじぃが杖を振ると、矢沢と川端先生の顔がみるみるどす黒くなった。表情が変わる。顔かたちはそのまま2人のものなのに、明らかに目つきが違う。口が裂けて、牙が覗く。まがまがしいとしか言いようのない、強烈な気。
 げーっ、冗談でしょ。これじゃまるで三流ホラー映画じゃないのよ。怖すぎっ!
「冗談ではないわ、それ、ミンキーママ、変身じゃ!」
 変身って――。
 どうやるの、と考える間もなく、勝手にあたしの口が動いていた。
「ミンキー・ファンキー・スパンキー、ラブ・ライブ・アライブ!」
 なんじゃ、そりゃっ! テキトーやん!!
 でもそれは呪文だった。腕の念珠がまばゆい光を発し、あたしの体を包み込む。あたしだけじゃない、もちろん淳子も芳美ちゃんも。
 一瞬の後には。
「地域の平和を守るため」
「子どもの未来を紡ぐため」
「愛と美貌で悪を断つ」
「美母戦隊ミンキーママ、ただいま参上!」
 がーっ、誰だ、こんな口上考えたの。なんで勝手に口が動くのよぉ。