びははせんたい・みんきーまま
★美母戦隊ミンキーママ★
その3『ゴミ置き場は魔の匂い!?』 Vol.7
[E:danger]この物語はフィクションです。実在の人物・団体等には一切関係ありません。

 テロップが、ゴミ放火犯の逮捕を告げた。曰く、犯人は28歳の無職青年。
「ほらぁ。白仙人様がひと息ついてる間におまわりさんがちゃんと捕まえてくれたわよ。なんだかんだ言って日本の警察ってまだまだ優秀よねぇ」
「ほんとほんと」
 ほどなく番組と番組の間の短いニュースの時間になり、あたしたちはもう少しだけ詳しく犯人のことを知った。逮捕されたのはあたしたちの住む地区とは少し離れた、隣の学区の住人。3件の内の1件、犯行現場であるゴミ置場のすぐ近くに住んでいて、捜査員の聞き込みに対して自分がやったと認めたらしい。ただし他の2件については容疑を否認。
 その時あたしたちは、ゆかり野市という地味な地区で起こった地味な事件が、わざわざニュース速報として流れるという不自然さにまるで気づかずにいた。
「『ルールを守らない連中を懲らしめてやりたかった』だと。火を点ける方がよほどルールを守っとらんじゃないか。大体28にもなって働いてもおらんとは、まったく今の若いもんは何考えとるんじゃ」
 夕方のニュースを見て、おじいちゃんが言った。
「働かないんじゃなくて働けないのよ。企業の方が雇わないんだもの」
「なんだ、芙美子さん、あんた放火犯の味方をするのかね」
「そういうわけじゃありませんけど、おじいちゃんの言い方がね」
「言い方ってなんだ。ふん、どうせこいつが全部やったに決まっとる。むしゃくしゃしたとかなんとか、自分の人生がうまく行かんことを世の中のせいにしとるんじゃ」
 あたしとふみちゃん、思わず顔を見合わせてはぁ〜。確かにそういう部分がないとは思わないけど、言い方がねぇ。それだけ偉そうに言ってて、いざ鼻をかもうとするとすぐ横にあるティッシュが見つからなくて大騒ぎしたりするんだから。どうしてこんなとこに置いてあるんだ、とか言って。ご自分も人のせいにしてるんじゃありませんの、耄碌しちゃったことを。
 まぁおじいちゃんのことはともかく。
 問題はもう一人の年寄り、東流斎。おまわりさんに事件を解決されてしまったことがよほど悔しかったと見えて、「まだまだ安心できんわい!」と夜になるとゴミ置き場の巡回に。ま〜ったく年寄りってのは頑固なんだから。
 ま、こっちはうるさいじじぃがいなくてせいせいするけどね〜。あ〜極楽極楽。いいよいいよ、もう一生戻ってこなくて。
 その夜も、じじぃは留守だった。珍しくダーリンが早く帰宅して暁をお風呂に入れてくれたので、あたしは一人でゆったりお湯につかり、溜まっていたドラマのビデオを見たりして自分だけの時間を満喫していた。いい加減寝ようと思って居間の照明を消そうとした時、あたしは何かを感じた。
 何、と説明するのは難しい。ただ、「あれ?」という感覚だった。「あれ?ガスの元栓締めたっけ?」みたいな。何かが気になって、あたしの手は窓を開けていた。
 居間の窓からは、隣のアパートが見える。路地を挟んですぐ、アパートの駐車場。そしてその隅には、大きな鳥かごのようなゴミ置き場がある。
 人影が見えた。ゴミの袋らしき物を持っているのがわかる。明日はゴミの日だ。うちももう袋の口を締めて、朝一番に持って行けるよう玄関に置いてある。ゴミ置き場の扉を開けるきぃという音がかすかに聞こえた。ゴミを置いた人影はさっさと戻っていく。