びははせんたい・みんきーまま
★美母戦隊ミンキーママ★
その3『ゴミ置き場は魔の匂い!?』 Vol.8
[E:danger]この物語はフィクションです。実在の人物・団体等には一切関係ありません。
夜のうちにゴミを出す人なんていっぱいいる。ちゃんと囲いがしてあるんだし、前の日の夜ならさして問題があるとは思えない。ただそれを許せばずるずると、「何日も前から出す」人が出てきてしまうかもしれないってだけだ。
結局モラルの問題かぁ……。
ぼんやりと、あたしは窓の外を見続けていた。
と。
ぽつんと明るい点が視界の隅に映った。点はすぐににじんで、そこだけ闇をちぎり取ったような赤い裂け目になった。
「え?」
火だ。ゴミから火が出てるんだ!
ゴミ置き場の横から走り去る人影が見えた。まさか、放火犯!?
あたしは思わず口走っていた。
「ミンキー・ファンキー・スパンキー、ラブ・ライブ・アライブ!」
念珠の光に包まれながら、あたしはもう窓から身を躍らせている。ひらりと駐車場に舞い降りた時にはあたしはミンキーブラックだった。
道路に出る。逃げていく影はまだ、十分に射程距離。
「待ちなさい!」
あたしはピアスを投げた。魔法の泡立てスティックじゃない、輪っかのついた菜箸をデザインした方だ(……なんとかならんのか、このノリ。ママだからってなんでそう台所にこだわるかな)。銀の矢と化したピアスは夜を裂き、人影の背を貫いた。
やばっ、殺しちゃダメじゃん。
と思った瞬間、影はぱぁんと破裂した。しぶきのように残像が飛び散って、そのまま夜の中に溶ける。あたしはすぐに追いついた。万年ビリの木戸玲子とは思えない足の速さだ。黒燕尾に仮面なんていう妙な格好じゃなかったら地区運動会に出るのになぁ。
そこにあったのは、ピアスだけだった。人の姿はどこにもない。血とか服の切れ端とか、「確かに何かがいた」と思えるようなものは何もなかった。
どういうこと? 黒仙人だったの?
「火事だぁ!」
背後の声に我に返ると、火はそれとはっきりわかるほど大きくなり、焦げくさい嫌な匂いが漂い始めていた。
そうだ、とりあえず火を消さなきゃ。
駐車場に戻り、ミンキー・ホイップ泡攻撃で消火しようと身構えたあたしの後ろに、飛び出してきた住民たちの足音。
「ちょっとあんた、何してんの!」
「放火犯か!」
え。
ええーっ!
「ち、違います。あたしは火を消そうと……」
「じゃ、なんでそんな仮面つけてんの!? どこの誰よっ!」
うっ。確かに怪しいよな、このカッコ。ミンキーママです、って名乗っていいんだっけ? っていうか、名乗って信じてもらえるんだろうか。
連載小説『ミンキーママ』
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