びははせんたい・みんきーまま
★美母戦隊ミンキーママ★
その3『ゴミ置き場は魔の匂い!?』 Vol.9
[E:danger]この物語はフィクションです。実在の人物・団体等には一切関係ありません。
「と、とにかく火を消しましょう。話はそれから」
言いながら、ミンキー・ホイップ! 夜目にも白い泡泡が炎を包み込んでいく。うーん、この泡って何でできてるんだろ。まるで消火器の泡のように見事に火は収まっちゃったけど……なめても甘くないんだろうなぁ。
とりあえずほっとしたあたしの背に突き刺さる、住民の冷たい視線。
「何なの、あんた……」
明らかにゲテモノを見るような目つきで、彼らはあたしを遠巻きにして。
がーっ、技なんか使ってよけい怪しまれちゃったじゃん。素直にバケツリレーでもすればよかった。『ザンボット3』の神ファミリーの孤独がわかるわ。正義のヒーローって実は日常から拒絶されるものなのよね。
「つ、捕まえろ!」
「誰か、110番!」
マジですかぁ。
しょうがない。かくなる上は逃げの一手。あたしはさっと跳躍してゴミ置き場の屋根に飛び上がり、そこからさらにジャンプして自分ちの屋根に飛んだ。
「皆さん、犯人はこいつです!」
だからあたしじゃないってば!
「俺は悪くねぇよ。夜中にゴミを出す奴が悪いんだよ。ったく、おばはんってのはモラルがねぇんだからな」
だみ声の反論。
もちろんあたしじゃない。
見ると、長身の男に首ねっこをひっつかまれた中肉中背のおじさんがわめいている。
「俺ぁちゃんと見てたんだぜ。ほら、そこの。あんた、さっきゴミ持ってきたよな。そっちのばばぁ、あんたもだ」
何? これってどういう展開なの? あのおっさんが犯人? じゃああたしが追いかけたのは、あの、一瞬にして雲散霧消しちゃった人影は一体……。
駐車場は騒然としてきた。いつの間にかうちのおじいちゃんやらダーリンまでも外に出てきている。あ〜あ、どうするよ、もう。
「殴り合いになりますかね」
突如耳元で囁かれて、あたしは屋根から転がり落ちそうになった。
いつの間にか、屋根の上にはもう一人別の人間がいた。長身の、すらりとした若い男。さっきあの犯人を捕まえてきた男?
「あ、あの……」
声が出ない。あたしはうろたえていた。いきなり隣に来られたら誰だってびっくりする。おまけにここは屋根の上だ。変身ヒロインでもなきゃそうそう飛び上がれない場所なのだ。
でも、あたしを真にうろたえさせたのは、その男の顔だった。
その男は、とんでもない美形だったのである。
あたしが好んでマンガに描くような、日本人離れした美青年。
「ほら、犯人そっちのけでケンカになってますよ」
彼の言う通りだった。ゴミを出したと名指しされたおばさんに対して、他の住人が詰め寄っている。肝心の犯人はケンカをあおりながらうまいこと人の輪から遠ざかっていこうとしていて。
「馬鹿ですね、人間ってやつは」
口の端をわずかにあげて、美青年は微笑んだ。魔的、というのはこういうものを言うのだろう。その目にじっと見据えられると、身動きが取れなくなる。息さえも詰まった。
腕の念珠がやけに熱い。背筋に嫌な汗が流れる。
連載小説『ミンキーママ』
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