びははせんたい・みんきーまま
★美母戦隊ミンキーママ★
その4『若さと美が世界を救う!?』 Vol.5
[E:danger]この物語はフィクションです。実在の人物・団体等には一切関係ありません。

 彼の名前は笹ヶ谷聖也(ささがや・せいや)。ゆかり野市のとなりの春菜(はるな)町が数年前におっ建てたむやみにでかい町民健康スポーツセンターで、この春から30代以下女性限定フィットネスクラスを受け持っているらしい。
『やはり美と健康、これに尽きますね。体を動かしていい汗をかけば、自然に美しくなっていきますし、特に女性にはいつまでも若々しくあってほしいですから』
 なんてことをにこやかにしゃべって、王子様は退場した。ローカル局のニュースの中の、“かがやく人”というコーナーだったらしい。
 次の日、幼稚園に行くと、けっこうな数のお母さん達がエアロビ王子様の話をしていた。
「ねっ、カッコイイでしょ〜。もう、ホントに素敵なのよぉ」
「いいなぁ、あたしも行こうかな」
「ダメよ、今、もう教室いっぱいだもん。順番待ちだって言ってたわよ。それに春菜町民優先だって」
「え〜、そうなのぉ」
 わざわざ春菜町までエアロビに通っている人がいるらしい。「春菜町の友だちから話には聞いてた」という人もいて、意外にも既に聖也くんは有名人だった。
 つーことは矢沢も通ってんのかな、エアロビ。ラメ入りの派手なレオタードとか着て。……いかん、想像してしまった。
「あのね、木戸さん」
 たまたまお迎えの時に矢沢に出会って。
 珍しく声をかけられた。
「執行部主催の講演会の話なんだけど」
 ああ。なんかあったなぁ。年に1回、秋頃に、外部から講師を招いて子育て講演会とかって。もう準備しなきゃいけないんだっけ?
「ただ話を聞くなんてつまらないでしょう。それでわたくし考えたんだけど」
 と、ここでなぜか矢沢、声を落とし、こそこそと。
「エアロビ講座なんてどうかしら」
「エアロビ?」
「考えておいてくださる? あさって、ちょうど執行部会でしたでしょ」
 いつもなんだかんだ理由をつけてサボったり遅刻したり早退したりする矢沢が珍しく一番に“お母さんの部屋”に来ていた。会長以下執行部役員4人と主任の川端先生だけでの執行部会は、“絵本の部屋”を間仕切りした小さなスペース、“お母さんの部屋”で行われる。今日のメイン議題は来月に迫った『夕涼み会』のことだったはずなのだけれど。
「先日テレビにも出演なさった、聖也先生をお招きしてのエアロビ講座なんてどうかしら」
 と、矢沢が提案したとたん。
「はいっ! やるっっ!! やりますっっっ!!! やらせてっっっっ!!!!」
 すごい勢いで食いついた芳美ちゃん、川端先生の呆れ顔をよそに矢沢を質問攻め。