これもサブタイトルが長くて、「〜この世で、俺に盗めぬものはない〜」。
カリブ海を舞台に繰りひろげられる泥棒とプリンセスとの恋物語。
いや〜、これもめっちゃ良かった!
久々に、「もう1回見たい!!!!!」と思った。
お話自体は「ローマの休日」ならぬ「カリブの休日」、他愛ないおとぎ話で、途中でオチも予想がついてしまうし、主人公の泥棒“ダグ”は「俺に盗めないものはない」と豪語している割にはあっさり騙されすぎで、しかも「泥棒詐欺師」とプログラムに書いてあるのに「ダグは嘘をつくのが下手だから」なんてセリフが出てきたりする。

それじゃ詐欺師できひんやろ(笑)。

でもそーゆー細かいツッコミすらまったく気にならないというか、むしろそれさえもご愛敬で、面白さのうちにしてしまっている感じ。
見終わった後、母と二人で「こーゆーのが見たかったんだよね。こーゆーHappyな他愛のない話がいいんだよね」と誉めちぎり。

開演アナウンスまでも芝居の一部にしてしまうユーモアたっぷりのオープニング。
宝冠を盗みだす冒頭では盗みの手順を「かごめかごめ」や「チューリップ」をモチーフにした歌で聞かせ、まさに「掴みはOK!」。
またホントに、トウコちゃん(安蘭けい)が巧い。

トウコちゃんのことは、初舞台から知っている。
忘れもしない、カナメさんがオスカルをやった91年月組の『ベルばら』で初舞台を踏んだのだ。
音楽学校を首席で卒業した実力は本舞台でも遺憾なく発揮されて、下級生の頃から抜群に巧い人だった。
私の好みのタイプでもあり、ずっと応援していたんだけど、なかなかトップの座が回ってこず、「もうなれないのかなぁ」と諦めかかっていただけに。

このお披露目公演は見ているこっちも感無量。

トウコちゃんの魅力は、あの圧倒的に響く声(一人だけマイクの音量が違うのかと思うほど)と滑舌の良さ。自在で洒脱な演技。目つきの鋭さ。
声のキーが高いこともあって、こう、ナイフのようなスパッと斬れ味の良い、「凛とした」というよりは「キッパリとした」という感じの……う〜ん、どう言えばいいんだろう。

前に「フェルゼン」をやった時に、「絶対フェルゼンちゃう!」って思ったのよね。甘くて優柔不断な困った貴公子でしょ、フェルゼンって(笑)。絶対ちゃうのよ。
トウコちゃんは『ベルばら』なら……ジャンヌ!(笑)。
今までに石川五右衛門とかアイーダとかやってるわけだけど(アイーダはすごかったな〜)、義賊とか、ギャングとか、中国の皇帝とか、なんかそーゆー色の濃い、自信に満ちあふれたタイプの役が合う。
それでいてコミカルなのもバッチリだし。
間の取り方とか、ホントにうまいのよねぇ。

春野さんも「一人だけ全然違う」だけど、トウコちゃんも「一人だけ全然違う」。
周りが全部学芸会に見えるもんな。
みんな、あの発声と滑舌だけでも見習おうよ。

2番手の役をやった柚希さんも、憎めないチョイ悪青年でなかなか良かった。トウコちゃんとの掛け合い、楽しかったし、バランス的にもいい感じ。

いったん専科に行って、トップ娘役として戻ってきた遠野あすかちゃん。
専科→トップ娘役、というのはかの檀れいちゃんと同じパターンやね。
遠野さんといえば、3年目で抜擢された樹里ちゃん主演『FREEDOM』での熱演を思い出すけれども、あれから7年……。
娘役は早くにトップになることが多い中、トウコちゃん同様、「やっとトップ」。
うん、さすがに安心して見ていられました。

トウコちゃん自身の魅力、お話の楽しさに加え、このお芝居は音楽も最高だった。
カリブ海が舞台ということで、ラテン音楽が全編を彩るのはもちろん、スチールドラムやコンガといった楽器が舞台に出てきて、生徒が生演奏!
グランドフィナーレではリコーダーまで加わってしばし「器楽発表会」のようになってたし、その前のフィナーレ!

「エル・クンバンチェロ」に始まって「ベサメ・ムーチョ」「キサス・キサス・キサス」とラテンの名曲のオン・パレード。
ひょ〜、たまらん〜。
一人異常に盛り上がって手拍子足拍子に体を揺らしていた私。
生まれ変わったら絶対舞台で踊るのだわ(笑)。

お話の途中、カーニバルのシーンでは客席に入っての踊りもあり、日本物ショーに対する「洋物ショー」の色合いも入って、ホントにお得な二本立て。
初舞台生のラインダンスも一味違った感じで、楽しかった。
宝塚初心者の皆さんには超おススメな舞台です。
大劇場は今月いっぱいで終わっちゃうけど、また東京(5月18日〜7月1日)もあるので是非ご覧ください。
私ももう一回観たい!!!!!

次、トウコちゃんは青池保子さんの『エル・アルコン』!
これも非常に楽しみだ〜〜〜〜〜。
今回改めて「やっぱトウコちゃん好きだなぁ」と思ったので、せめて3年ぐらいトップでいてほしいと思うけど……最近みんな任期短いし、もう研16だし……。

春野さんとトウコちゃんが辞めたらもう好きなスタァさんがいなくなってしまうので、ちょっとでも長く続けてほしい。
宝塚に通わない人生なんて……。