そんなわけで、『ジークフリート』のキャラクター3人が地中海のとある島でコスプレしてファンタジーする作品『危険な席』です。

朝日ソノラマ社の「眠れぬ夜の奇妙な話コミックス」(←すごいタイトルだ)で2005年に出ました。
初出は朝日ソノラマの「夢幻館」という季刊誌。2004年掲載。「夢幻館」では現在『ざくろの木の下で』という作品が連載中。

しかし。
朝日ソノラマ社は今月末でつぶれるのだな。
出版事業は朝日新聞社が引き継ぐので、「夢幻館」も存続するらしいけど、「しばらくの間」だけかもしれない。
大丈夫ですか、森川先生。
なぜいつもいつもそんな目に……(涙)。

このコミックスもいつ絶版品切れになるかわかりません。
興味のある人は早めに買っておきましょう。

帯と表紙の見返しに「歴史物の大家 森川久美の久々の新作!!」と書いてある。
帯はともかく、表紙にまで書いてあるのがすごいと思う。
まぁ確かに、間違ってはいないけど。

続けて「冒険活劇大作!!」とも書いてあるが、これはちょっと違うような。
冒険活劇ではない……と思う。

タイトルの「危険な席」というのは、アーサー王の伝説から来ている。
アーサー王の有名な「円卓」には一つ欠けた席があって、その席には「最高の騎士」だけが座ることを許され、そうじゃない者が座るとたちまち黒こげになって死んでしまうのだそうだ。

その伝説の「イス」を探して、ジーク扮するアンリが海洋神殿都市エメラルディーナにやってくるところからお話が始まる。
エメラルディーナの神殿騎士団の長が、えらく美形に化けたヴィリーで、島の片隅に居住地を与えられた異教徒の錬金術師がクルト。
貿易商でもあるクルトの扱うガラクタの中に「危険な席」と思しきイスがあったのだけれど……最終的なテーマは、騎士団長ヴィリーと異教徒クルトの純愛(?)だったりする。

……昨日、「男同士の恋の話でもない」と書いたばかりなのに、見事に男同士の話だったよ……あらま。
しょうがないね、美青年に女はいらないんだから(笑)。

『ジークフリート』本編と同じく「オレの特技は女心と宝物庫のカギ開けだ」と豪語するジークがやはり私好み。
いや、別に女たらしが好きというわけではなく、「しょせんこの世はうたかたの夢。醒めるまでせいぜい楽しむさ」というスタンスがね。
意外にいい奴だし。

併録は『流星の迷宮』。
1999年の作。
なるほど「眠れぬ夜の奇妙な話」かもしれない。
わかったようなわからないような、「こういうことか?」と読む方が考えさせられる、不思議な余韻を持った作品。
「こんな夢を見た」とか、そういう感じの。