やっと全巻読破しましたぁ。ふぅ。

9巻はわりと一気に読んだんだけど(単に耳鼻科の待ち時間が長かったから[E:sweat01])、そこからまた10巻がなかなか手に取れなくて。

なんなんだろ。

面白かったんだけど……待合室で読んでた9巻、最後うるうるして鼻ズルズルなって大変だったし、10巻も喉にぐっとくるものがあったんだけど……。

手放しで「良かった!最高!!」とは言えないんだよなぁ。何が気に入らないの、私(笑)。

あ、この先ネタバレありますからね。まだ読んでいない人はご注意下さい。また、1巻からの感想へのリンクは最後にあります。

主人公2人が「いいとこの子」なのが気に入らない、っていうのは、8巻の感想でも書いたんだけど、「いいとこの子」な上に優等生だから、なんかこう素直に感情移入できないところがあって。

まぁ、単に私自身がもう「若くない」ってことなのかもしれないけど。

若者に感情移入できん(笑)。

この『UC』は大人達の葛藤やがんばりもしっかり描かれているから、どちらかというとそっちの描写をより楽しんでいたし、「そっち目線」で主人公を見ていたところもあって。

うーん、いいとこの子でしかも「いい子ちゃん」なバナージとミネバのカップルが、どうしても気にくわない(爆)。

応援しようという気にならないんだぁ。リディ可哀想やん(笑)。

一旦は悪い子になった、これまた「いいとこの子」で生真面目なリディくん、最後はしっかり活躍させてもらえてよかったな。

バナージの異母兄のアルベルトさんも、最後すっかり「いい人」になっちゃってたし。

あまりにも良くなりすぎて、ちょっとつまんない気がしたぐらいだった。

「いいとこの子」に生まれたプレッシャー、生真面目ゆえの不器用さ、コンプレックス、葛藤……そういう「弱さ」を抱えてもがく二人が、けっこう好きだった。

うん、アルベルトさん、好きやったな。

マリーダさんとの仲、応援してた。

……一体どーゆーカップルになるのか想像つかないけど……だからこそ恋は楽しいのよ(笑)。


9巻の最後で、マリーダさん死んじゃった。

そういう運命だろうな、と予想はしてたけど、一番好きなキャラクターだったから、「やっぱり殺すのか」と思って哀しかった。

諸手を挙げて「良かった!」と言えない一つの原因かも。

死ななければ伝えられないなんて。

生きている間に、どうしてもっとわかりあえないんだろう。

……と読者に考えさせるためにこそ彼女の死はあるのかもしれない。

最後、「魂」を持っていかれそうになりながら、どうにか「肉体」に踏みとどまるバナージ。福井さんの結論もやはり、「生きていればこそ。“肉体”込みでの人間なんだ」というふうになっていたと思うから、マリーダはそこへ至るのに必要な、「尊い犠牲」なのだろうけど。

“肉体”という縛りから解放されて「ああ、アムロ、時が見える」な境地に達してしまうのがニュータイプだとしたら、やっぱりそれはもう「人類」ではなくて別の「何か」なんだろう。

“魂”と“肉体”って、二項対立ではなくして、一体となって「一人の人間」を形作るのだと思う。

「肉体がなければ温もりも感じあえない」っていうような表現、作中にあったと思うのだけど、そのとおりだと思うから。

「肉体」という境界線は「わかり合う」ためには邪魔なのかもしれない。でも「自動的にわかり合える」なんていうのは嘘というか、無意味であって、そう簡単にわかり合えないからこそわかり合おうと努力するのだし、そのために人間には「想像力」ってものがあるんだと思う。

シャアの再来フル・フロンタルの部下のアンジェロは、バナージと「わかり合う(意識を共有する)」ことを拒絶した。

そのことでフル・フロンタルはバナージをいぢめて、バナージにとってはショックなことだったけれど、「拒絶する権利」はあってしかるべきで、誰でも彼でもが「自動的にわかり合えてしまう」っていうのは、そんなにも人を幸せにはしないだろう。

そこはまさに「可能性という光」(作中にやたらと出てくる言葉)で、「わかり合える」という可能性があればそれでいいというか。


アンジェロくんといえば、彼の過去。ちょっと、あざとい感じがした。

フル・フロンタルの死体が彼のところに流れていくのも、かなりあざとい感じがした(笑)。

「シャアの似姿」として作られた強化人間。本物のシャアの亡霊が取り憑いていたのかもしれない、というふうにも描かれている。

『逆襲のシャア』の時のシャアがかなりなさけなくてイヤだったから、万一フル・フロンタルが「シャア本人」だったら、「もうあんたなんか知らない!絶交よ!!」って感じやったんやけど(爆)。

でもその「なさけなさ」、絶望と八つ当たり、その「弱さ」もわかる部分はあって。

シャア・アズナブルも、人間だもんね。

可哀想な人だよな、シャアって……。


うーんとそれから???

「宇宙世紀(ユニバーサル・センチュリー)」と「ユニコーン」をかけた『UC』というタイトル。すごいな、よく考えたな。

1巻の最初、宇宙世紀がどうやって始まったのか、すごくわくわくした。

創生から、1stガンダム、『Z』、『逆襲のシャア』を経て、その3年後の『UC』の世界。

宇宙に出た人類と、地球に留まる人類との葛藤、「ニュータイプ」の意味、「宇宙世紀」になっても現代とそうは変わらない大人達の愚かな権力争いや、打算的な駆け引き。

『ガンダム』ワールドの深さを、改めてまのあたりにさせてもらったな、という気がする。


さて、この『UC』、今度アニメ化されるわけだけれど。

テレビシリーズじゃないんだね。絶対テレビだと思ってたのに。

じっくりと、1年かけて見たかったな。

50分×6話って、なんかすごく駆け足な気がする……。

でもシナンジュやクシャトリヤが動くの、楽しみだ。正直文章でモビルスーツ戦を追うのは大変で、ついつい読み飛ばしたりしてたから。

主題歌はもちろんGACKTさん!?

歌ってくれないかなぁ。

ちなみにこの記事は劇場版『Z』のサントラをバックに書きました。久しぶりに聞いたけど、いいな。モビルスーツ乗りたくなる(笑)。マリーダさんの声、やりたかった(爆)。


【ちなみにこれまでの『UC』の記事】

『機動戦士ガンダムUC』/福井晴敏
『機動戦士ガンダムUC』第3巻赤い彗星/福井晴敏
『機動戦士ガンダムUC』第5巻/福井晴敏
『機動戦士ガンダムUC』第6巻/福井晴敏
『機動戦士ガンダムUC』第7巻/福井晴敏
『機動戦士ガンダムUC』第8巻/福井晴敏