2011年12月31日土曜日

『水晶玉は嘘をつく?』/アラン・ブラッドリー



11歳の科学大好き探偵少女フレーヴィアシリーズ第3弾です♪

(1作目『パイは小さな秘密を運ぶ』の感想はこちら、2作目『人形遣いと絞首台』の感想はこちら

1950年のイギリスの、田舎が舞台。バックショー荘という大きなお屋敷に、父と二人の姉と住んでいるフレーヴィア。今作の解説に書いてあって初めてピンと来たんだけど、

“まだまだ階級差がはっきりしているこの時代、しかも英国の片田舎で、村の地主のお嬢様と言えば、世が世なら領主館の姫君なのですから”

あー、そうなんだ!

バックショー荘がでかくて、お父さん退役軍人でもう働いてなくて切手収集以外に何もやってなくても生活できてて、もともとはお金持ちなんだろうなぁ、というのは理解してたけど、フレーヴィアがまったく「お嬢様」という感じじゃないので、そういう発想がなかった(笑)。

フレーヴィア・ド・ルースって、「ド」がついてるもんねぇ。あれ、「ド」がつくと貴族っていうのはイギリスじゃなくてフランスだったっけ…?

ともあれ読んでると立派な(?)ご先祖様達の話も出てくるし、東棟、西棟、使われていない部屋がいっぱい、かつては女王陛下も泊まりに来たとか来ないとか、「領主様」なんだよねぇ。

ただ、1950年ということで第二次世界大戦が終わって5年、世の中も移ろってきたせいか、過去の遺産だけではやっていけないようで、ひたひたと財政難がバックショー荘にも迫ってきている。

これまでにもその片鱗はあったけど、今作でフレーヴィアもそれを実感しています。

と、そんな家庭の事情に行く前に。

今回の事件。

お祭りにやってきたジプシーの占いテント。そこでフレーヴィアは亡き母のことを当てられ動揺してろうそくをひっくり返し、テントを火事にしてしまう。

それでフレーヴィアは彼女を自分の家の敷地(屋敷からはけっこう離れている原っぱ的な場所)に招待する。ジプシーは幌馬車をキャンピングカーみたいにして生活しているんだけど、その幌馬車を敷地に停めてていいよ、と。

実は昔、フレーヴィアの母も同じように彼女たちジプシーをそこに住まわせていたんですね。でも母が亡くなって、父が追い出したと。

フレーヴィアのお母さんというのは、フレーヴィアを生んでまだ間もない頃にチベットだったかどこだったか、山へ行って死んじゃったんですね。産後すぐそんなことするお母さんってどんだけ行動的やねん、フレーヴィアはどう考えてもお母さん似だな、って思うけど、フレーヴィア自身には母親の記憶がほとんどない。

だからお母さんのこと言われると、トラウマというか、こう、必要以上に敏感になっちゃうんだよね。

2歳上と6歳上のお姉ちゃん2人はちゃんとお母さんのこと覚えてて、折に触れ「お母さんが死んだのはあんたのせいだ」「お母さんはあんたのこと嫌いだった」「あんたは妖精の取り替え子だ」とフレーヴィアをいじめるし。

何しろ記憶がないもんだから、フレーヴィアとしては「もしかしたら…」とつい思わざるを得ないわけで。

これまでもお母さん(ハリエット・ド・ルース)のことはお話の一つの軸だったけど、今回は特にそれが前面に出てきた気がします。

えーっと、それでジプシー(老女です)を敷地内に連れ帰ったところ、彼女が襲われて重傷を負い、もちろんその第1発見者はフレーヴィアで……。

持ち前の好奇心と科学的知識、そして大胆な行動力で捜査を始めるフレーヴィア。その前に現れるもう一つの死体(…って、ジプシーは死んでなかったんだけど)。

フレーヴィアの生意気さとか、人物関係・名前とかに慣れるまで多少とっつきにくいけど(年に1冊の刊行ペースなので前2作でわかっているはずの私もちょっと最初読みにくかった)、だんだん引き込まれて後半はハイペースで読了。

いつもながらフレーヴィアの捜査はあっちへ行ったりこっちへ行ったり、ばらばらな手がかりを繋げるのに苦労するんですけどねー。いや、それって11歳の少女に推理力で負けてるってことか(笑)。

事件の謎解き以上に、少しずつ明らかにされてくる母ハリエットの「記憶」、寡黙で厳しく、娘達にどう接していいかわからない不器用なお父さんとフレーヴィアの、少しずつ狭まる距離――そんな家族の謎解きにドキドキします。

お姉ちゃん達と完全に仲直りしちゃっても面白くないけど(笑)、でももうちょっとうまくやっていければいいと思うし、不器用なお父さんも、もう少し。

タブーのようになっているハリエットのことも、家族みんなで話せる日が来るといいな。

4作目『I Am Half-Sick Of Shadows』も刊行されているようですが、日本語訳はまた来年かな~。タイトルの意味すらわからん(笑)。「影の半病人」?

ちなみにこの『水晶玉は嘘をつく?』の原題は『A Red Herring Without Mustard』というのですよね。「辛子なしの燻製にしん」。巻頭にこの語句が出てくる文章が引用されているんだけど、お話の内容との関連はあんまりわかりませんでした、ははは。

ド・ルース家の財政難はどうなるのか……。創元社さん、なるべく早く翻訳刊行お願いしますね。

英語で読める方はこちら ↓


そしてフレーヴィアファンクラブはこちら♪(これも英語…全然わかりません(T_T))

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