昨日の夜、居間にブイブイが出た。正確に言うと、まず階段の電気のところでブイブイ言っていて、窓から外に出すために階段の電気を消して居間に誘導した。

そんで、どっか影になってるとこに止まって行方不明になった。

私は早速つぶやいた。




(注:慌てていたので後半「ぶいぶい」と打つつもりが「ぶい」になっちゃってます)

そうすると「ぶいぶいって何?」という反応があって、まぁ「ぶいぶい」が正式名称ではないだろうことくらい私も承知しているのでググってみたら。

「ブイブイとはカナブンのこと。兵庫県の方言」みたいに出てくるのである。

え。

ブイブイはブイブイでしょ!? カナブンとは違うよ!

上のツイートでも私は「こないだはカナブンで今度はブイブイ」と言っています。私の中では別の生き物。

ちなみにその「こないだ」の時は




とつぶやいている。

それはカナブンだったのである。緑でぴかぴかした、カナブンだった。

翻って昨日のは、何色だったか確認できなかったけど、飛び方が違うのである。もっとこう、丸っこい感じで、飛んでる様子がいかついというか、羽の回転がすごいというか音がほんまにブイブイすごいというか。

……でも色々調べてたら、カナブンとブイブイが本当に「違う」のかどうか、自信がなくなってきた……。

ドウガネブイブイという名の虫がいて、それは光沢がなく茶色っぽくて大きめということで、もしかしたら私はそれを「カナブン」と区別しているのかもしれないのだけど、そもそも「うわっ、ブイブイや!」と日常生活でブイブイという言葉を私にたたきこんだ神戸育ちの母が「区別」していたのかどうかわからない。

もしかすると母は緑のぴかぴかなヤツのことも「うわっ、ブイブイや!」と言うのかもしれない。

昨夜のブイブイは姿が見えなくなって、そのまま私は寝室に入って寝てしまった。なので今朝、その後で帰ってきた夫に「夕べこの部屋ブイブイおらんかった?」と聞いてみた。

「ブイブイ?カナブンやったらおったで」

……カナブンなのか?やっぱり世の中的にはカナブンなのか?……

大阪でも「ブイブイ」は通じないらしいので、滋賀人の夫に通じないのは仕方ないとして、ちゃんと姿を確認したらしい夫が「カナブン」だと言っている。

ということは。

カナブンなのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。

コガネムシの仲間には種類が多くて、「カナブン」という言葉も総称的に使われているようなので、そのうちのある種類を私が「ブイブイ」だと思っている、ということなんだろう、きっと。

かたや日常的に「うわっ、ブイブイや!」と言う母がおり、かたや図鑑やテレビ等で「カナブン」という言葉を聞き、子どもの私は勝手にそれを使い分けたのだと思われる。

図鑑で見る特徴的な緑のピカピカは「カナブン」、家の中に入ってきてブイブイいわしながら電気にぶつかっていく大きなヤツは「ブイブイ」と。

こういう「方言と標準語を勝手に別の意味として使い分ける」というのを私は「ゆがむ」と「いがむ」でもやってます。

漢字で書けば両方「歪む」で、「い」と「ゆ」の音韻変化だけなので、これは純粋に同じ意味・同じ言葉の発音が違うだけ、と思われるのですが。

私の中では微妙に意味が違う。

「机がいがんでる」とか「ネクタイがいがんでる」というのは、「基準となる真っ直ぐな線に対して位置が斜めにずれている」というイメージ。

一方「机がゆがんでる」と言うと、何か机が異次元に呑み込まれそうになって輪郭がぐにゃぐにゃおかしくなってるイメージなのです。

凸レンズとか凹レンズに映った景色、蜃気楼みたいに輪郭がしっかりしていない、曲線的なイメージ。うん、「位置」じゃなくて物体そのものが変な感じ。

「性格がいがんでる」だと普通に「ひねくれ者」だけど、「性格がゆがんでる」だと偏執狂的な。

ええ、「個人の感想」ですけど。

たぶん、母なんかはそもそも「ゆがむ」という言葉を日常で使わないから、全部「いがむ」でいいんだろうと思う。

で、話し言葉で「いがむ」、書き言葉で「ゆがむ」を習得した私は勝手にその意味の範囲を切り分けて、勝手に使い分けてしまった。

「アルバイト」という言葉はドイツ語では普通に「働く」という意味だけど、日本人はそれを限定的な意味で使っているでしょう。普通に働くのは日本語で「働く」と言えばいいから、限定的な意味にだけあてはめて使い分けてる。

方言話者にとって、「え?これってよそでは通じないの!?」という語彙はよくあって(つまり「方言」だと思わずに使っている)、標準語で同じ意味を指す言葉があった時に「それは方言では○○」という理解にならずに、どっちも「自分にとっては標準語」で、「○○はここまでを指して、××は全体を指す」みたいに意味を棲み分けてしまう……。

という研究はどこかにないでしょうかね。

私だけじゃないよね……?