(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください!)

先日、久しぶりにバウホール公演を観てきました。バウは『アルカサル』以来ですね。3年ぶり。


トドちゃん(轟悠)はじめ専科のお姉様方が5人も出る。コメディで楽しそうだし久しぶりにバウ公演観たい、でもチケット取れるのか……?と思っていたらe+の先行予約にめでたく当選、しかも2列目!

ひゅううう。
端の方だったけど、もう金輪際こんな前の方で宝塚を観ることはない気がする。ありがとうe+!



観たのは11月21日火曜日の11時公演だったのですが、主演のトドちゃんが風邪なのか、声がかなりかれてて。

主演だし、声が出にくいながらも歌もお芝居もちゃんとこなしてはいたんだけど、「無理してる」感は否めず、どうしても気になってしまう。「風邪かなー、だいぶ具合悪いんじゃないのかなぁ、今日も2回公演なのに大変だなぁ」とか。

ちょっと集中できない感がありましたね……。

ストーリーは、第二次世界大戦後のアメリカ。西部戦線で九死に一生を得て帰ってきたイヴァンは父の死を知らされる。一代でターナーズコーポレーションを築いたビルことウィリアム・ターナー、でもイヴァンはその後を継がず、コーポレーションを解散して神の道に進みたいと言う。

なんとなれば。

ターナーズコーポレーション、実態はマフィアなのですね。「ボルチモアの治安を守ってきた」と自負する幹部達ですが、子どもの頃から「マフィアのボスの息子」ということで何かと肩身の狭い思いをしてきたイヴァン、戦地で多くの死を目の当たりにし、また、自分自身生きて戻れたのは「奇跡」だったという思いから、「もう抗争なんてたくさん。神に仕える」と。

幹部6人も「ジュニアを見守りお支えするのが自分達の役目」と、嫌々ながらも教会に身を投じることに。

この辺までは公演紹介のあらすじにだいたい書いてあったので、「ああ、『二代目はクリスチャン』みたいな感じか」と思って見に来たんですよね。

神の道に進んだものの、そこで教会立ち退きの危機とかあって、昔取った杵柄、チャンチャンバラバラ大暴れ……みたいなのを想像してたんです。

そしたらかなり違った(^^;)

死んだはずの父親ビルがまだ成仏してなくて、「ちょっとおまえの体貸せ!」とたびたびイヴァンに憑依し、心優しい神父のイヴァンとマフィアの父ちゃんとの「二重人格」芝居。そこにイヴァンの母親の謎が絡んで、「ぼくたちはファミリーなんだ。ここがターナーズコーポレーション、ターナーズファミリーは永遠さ!」みたいなほっこりエンディングで終わる。

ううむ。

これはこれでまぁ悪くはないけど、アクション好きとしては「せっかくマフィアなのに」というがっかり感が。

専科というか理事として、どうしても大人の役が多いだろうトドちゃんの「心優しい可愛い青年」イヴァンはファンとしてはきっと嬉しいだろうし(ぷーっとほおを膨らませて拗ねる轟悠とかなかなか見られまい)、サングラスでイェーイ!とヤンキーしてるトドちゃんも楽しいのだけど、どうせならもっと本格的にヤクザしてくれた方が私としては好みでした。すみれコードあっても「格好いいギャング」はいくらでも描けるはずだもんね。

コメディとはいえ、「これがボルチモアスタイル、イェーイ!」というノリが、ビミョーだった……。

専科さん+月組生3人が演じる幹部たちもなんかわちゃわちゃしてるだけで、せっかく芸達者が揃ってるのにぃぃぃぃぃと物足りなかった。芸達者な皆さんだからこそ、特に動きのない会話劇をしっかり成立させられた、と言えばそうなのかもしれないんだけど。

うん。

汝鳥さんは相変わらず貫禄のお芝居で、最年長にも関わらず声も一番出ている感じで硬軟緩急素晴らしかったし、一樹さんは格好良く、悠真さんは豪快で楽しい。

月組生も専科のお姉様方にひけを取らない好演、特に「オカマ言うな!」の蒼瀬さんの美貌とお芝居は印象的でした。

紅一点の早乙女さんも複数の役をこなしてて、ヒロインよりもむしろDJの役が良かったなぁ、と。

出演者たった9人で回す舞台、「ラジオ」をうまく使い、客席に聖書を売りに来る演出(運のいいお客さんはサインと写真入りの聖書がもらえる!もちろん私は運が悪かった!(笑))も楽しく、肩の凝らないハートフルコメディで、一緒に観劇した母は「面白かった」と喜んでいました。

音楽も生演奏だったし、華形さん演じるビルのお葬式用写真も秀逸。

うーん、悪くはなかったけど、でもなんか物足りなかったなぁ……うーん。

むしろこれ、若手の子たちがフル回転で何役もがんばって、初主演みたいな子が可愛いイヴァンとヤンキーな父ちゃんを汗だくで演じ分け、とかの方が楽しいのではと思ったり。

パンフによるとイヴァンは25歳設定で、幹部達は48歳~67歳ということになってる。でもどう考えても蒼瀬さんの方がトドちゃんより若く見えるわけで。
もちろん、舞台では演者と“役の年齢”なんて合わないのが普通だけれど、声がかれてる「無理」もあいまってか、トドちゃんの「可愛い25歳」にムズムズ(^^;)

まぁ、「物足りなさ」の主因は勝手にアクションコメディを期待していたせい、っていうのが一番大きいとは思います。ユル・ブリンナーの『荒野の七人』も大好きなだけについアクションものをなー。


お姉様方のお芝居を久々に間近に観られて、それ自体は楽しかったです。