何しろ50人もの関係者にインタビュー、当時のスナップ写真なども挟まれ、総ページ数は448ページ。柏原さんや大川さんなど2段組みになっているところもあり、活字中毒者には嬉しすぎる読み応え!
高鳥さんありがとう、立東舎さんありがとう。そしてインタビューに応じてくださった皆さん、本当にありがとうございます。
【まずは役者の皆さん】
第1章「出演」の部は『帰ってきたあぶない刑事』まであぶ刑事皆勤賞の5人、舘さん、恭兵さん、トオルくん、温子さん、ベンガルさん、そして香苗さんへのインタビュー。
メインキャスト4人のインタビューはこれまでもたくさん目にしていますが、「改めて今」、最初のTVシリーズ立ちあげ時のお話や監督さんたちそれぞれの思い出などを話してくださっていて楽しいです。
近藤課長こと中条静夫さんの思い出にはうるうるしてしまいますし。
テレビ第28話の「決断」で近藤課長が防弾チョッキを後ろ前に着て、ユージに「課長、それ、後ろ前です、こっち綿100%」とか言われるシーン、あれ、中条さんのアドリブだそうで、「へぇー!」と。
最初はみんな台本通りだったのがアドリブ合戦になったのも、ある時薫が近藤課長の頭をひっぱたいて、中条さんがそれを許してくださったから……みたいなお話もどなたかが。
薫にしても近藤課長にしても、もともと制作側ではそこまでキャラクターを作っていなかったのが、お二人のお芝居でどんどん存在感が出て、脚本や監督さんも「課長をもう少しいじってみよう」というふうになられたのだとか。
さすがだなぁ。
温子さんは「自由にしてたら案の定怒られた」とか言ってらして面白い。今回の『帰ってきた』でも「あれは本人の演技プランなんだ」と脚本の大川さんが言ってらっしゃいましたが。(→大川さんのツイート)
ベンガルさんもTVシリーズの際に「ここまでやるか?女優だろ」と思ってらしたのだとか。それでもテレビシリーズの頃はねぇ、まだちゃんと捜査もしてたのに。
港署セット内での撮影ではパパさんや吉田さん含め「みんなどうやって画に入るかに一生懸命だった」と。港署メンバーの変装シーンも役者さんたちがみんなでメイクや衣装に凝ってたとかで。タカ&ユージだけでなくチーム港署ほんとに全員大好きだけど、あの楽しさ、役者さんたちの努力と工夫のたまものなんですよねぇ。ありがたや。
瞳ちゃん役長谷部香苗さんは「娘から見た長谷部安春監督」のお話、そして無線係の良美ちゃんこと監物房子さんの思い出も語ってくださったり。
良美ちゃんも好きだったんだよなぁ。『リターンズ』以降は出てらっしゃらなくて寂しかった。
トオルくんはセントラル・アーツ退社の話までしてくれているし、「自分が当時の中条さんの年齢に近づいていることにびっくりしている」とおっしゃっていて、「ですよね!!!!!」と。見ているこっち以上に、ご本人が感慨深いですよねぇ、そりゃあねぇ。
『帰ってきた』でも差し挟まれている近藤課長の「大馬鹿者っ!」映像、あれ、『またまたあぶない刑事』での一コマだけど、あのシーンで「大馬鹿者」って言われてるの、実は鷹山大下ではなくトオルで、そのトオルが今度は「言う立場」になっているの、ほんとにね。
舘さんと恭兵さんの互いへのリスペクト、最初の頃の少しギクシャクした関係……。後で出てくるプロデューサーさん達のお話でも、どっちのクレジットを先にするかとか、エンディングでの二人のアップの回数はちゃんと同じとか、スター二人の扱い、色々“大人の事情”も明かされていて。
なんか、もう今のラブラブなお二人がすっかりデフォルトになっているので、「最初ってそうだったの?」と意外に感じてしまいます。
印象に残ってる舘さんのお芝居として恭兵さんがTV33話「生還」を挙げてらして、「ああああああ」ってなりました。再放送ではカットされてしまう「生還」、いいよね、「生還」。再放送してほしいよね……。
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【「あぶ刑事」の元ネタは「ダーティペア」!?】
第2章「始動」は企画の岡田晋吉さん、黒澤満さん、プロデューサーの初川則夫さんに広報の染井将吾さん。
黒澤さんはもう亡くなられているので、過去のインタビューの再録。
岡田さんは日テレのプロデューサーで、最初、1クールぐらいは「バカな部分を切れ」とさんざん言ってらしたそうで……。もともとは銃もあんなにバンバン撃つはずではなかったし、タバコの扱いについても視聴者からすぐクレームが来るので注意していたらしく。
うん、まぁ、今見返すとほんとにタバコ吸うシーン多くて、逆に最近の映画はまったくタバコ出てこなくてびっくりするんですけど、タカさんがマッチでしか火を点けないこだわりとか、くわえタバコも格好いいし、全部切られなくて良かったなと思います。
正直『あぶ刑事』で一番面白いの、無印テレビシリーズの2クール目以降だと思っていて、岡田さんが忙しくてチェックできなくなってからが面白いんですよね、ははは。
初川さんの裏話は全部面白いんだけど、もともと初川さんはアニメの『キャッツ・アイ』と『ダーティペア』を担当してらして、その流れで『あぶない刑事』になってるのがもうほんとびっくり! 「新しいバディものを」という根底に、『ダーティペア』があったとは。
確かにあれ、ユリとケイは普段男のことしか考えてなくて、仕事はきっちり片づけるけど彼女らが通ったあとには死屍累々、上司には褒められるどころかいつも始末書の山……。まんま女性版『あぶ刑事』ですよね。
サンライズチャンネルで『ダーティペア』の配信があった時に脚本が大川俊道さんなのに気づいて、「あぶ刑事じゃん!」って思ったんですけど、よもやよもやですよ、ほんとに。好きなものってちゃんと繋がってるんだなぁ。
原作も読んでいた『ダーティペア』、配信で見返して、アニメ版は動きもすごいしオリジナルのお話もよくできていて面白かった。サンライズチャンネルさん、どうか続きを配信してください。ちなみにユリ役島津冴子さんも『あぶ刑事』のファンだったとか(→島津さんのツイート)脚本があぶ刑事でもお馴染み大川さん!なるほどこれタカ&ユージでもできそうなお話だわ。なるほど
— ひゅうが霄 (@showV3) January 20, 2022
【第8話】ダーティペア〔サンチャン〕 https://t.co/6QWPA2y8zZ @YouTubeより
【やっぱりテレビシリーズが最高だよね!】
第三章「展開」は脚本家の皆さん。丸山昇一さん、那須真知子さん、柏原寛司さん、大川俊道さん、田部俊行さん、峯尾基三さん、岡芳郎さん、そしていとう斗士八さん。
どの方のお話も面白いんですが、頻繁にテレビシリーズのサブタイトルが出てきて「あの話は」ということになるので、お手元にテレビシリーズのDVDが必須です。ちょうどBS日テレで再放送してくれてるのがほんとありがたい。「無謀」や「狙撃」「悪夢」など、脚本家さんのお話を読んでからの視聴になって、いっそうドラマが面白かったです。
トップバッターの丸山さんは第一話「暴走」と第9話「迎撃」を書かれた方。丸山さんが書かれていたというキャラクター一人一人の履歴書、見てみたいです。プライベートが描かれない鷹山大下、どんなふうに設定されていたのかなぁ。
あと丸山さん、『またまたあぶない刑事』と併映だった『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』も手がけてらして、その思い出話をしてくださってる。バービーボーイズのKONTAさんが主演だった『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』、あれすごく良くて印象に残ってるので思いがけず作者の方のお話を聞けて面白かったです。
※AmazonPrimeVideoで『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』を見る
柏原さんのくだりは『まだまだ』でのあの幽霊オチを書く気はなかった、というのが興味深かった。じゃあなんであんなことに?と思ったらどうも伊地智さんのこだわりだったよう。プロデューサー伊地智啓さんもすでに鬼籍に入られていて今回のインタビュー集には入っていませんが……どうして幽霊オチにこだわったのか、そこ詳しくお聞きしたかったな。
『さらば』の時に「変に新人刑事とか出てこないのも良かった」って感想書いたんですけど、柏原さんも「歳を取っててもレギュラーだけの方がいい」「鷹山と大下がしっかりやってる方がいい」っておっしゃってて、「制作側もおんなじこと思ってたんだ!」って喜んじゃいました。
他の脚本家さんのお話にも「テレビだと強敵が出なくても面白い話が書ける」「映画は大仕掛けだけどテレビの方が面白い」と、これまた私が常々思っていることが出てきて、いちいち「ですよね!」とうなずきながら読んでました。
映画は変にスケールを大きくしようとしすぎて『あぶ刑事』の面白さを削いでるなぁ、と常々常々。特に『リターンズ』以降は……。まぁ何話も作れるテレビと違って単発でヒットさせなきゃいけない映画、豪華なゲストで大画面に耐えるスケールの事件、となるのは仕方ないんでしょうけど。
『帰ってきた』の「カプリアイランドの夏子」は大川さんの趣味だそうで。なんでまた「夏」なんだろう、と思っていたらそういうことだったのかー。
無印最終回の「悪夢」、そして『もっと』の最終回「一気」、両方とも脚本は大川さんなんだけれども、『もっと』は「一気」1作だけ。
なんで「一気」だけなのかという理由の一つに、『もっと』は放送時間も変わってわかりやすくコミカルな路線になった、それに対する不満と抵抗もあった、とおっしゃっていて。
あーーーーー、それなーーーーーーー。
『もっと』の最初の方、あんまり面白くないもんね……。後半はスケジュールの都合でタカさんの出番が少ないし、やっぱり無印中盤以降が一番脂がのってるよね。
田部さんは「独断」や「狙撃」、峯尾さんは「決断」が印象深い。
そして今回『帰ってきた』にも参加されている岡さんは『あぶ刑事』がデビュー作で、いきなり「興奮」を書いてらっしゃる。「興奮」って、あのサバイバルゲームのとっちゃん坊やの回だけど、私ちょうどこの辺りから本放送を見始めていて、めちゃめちゃ印象に残ってるお話なんですよね。ルージュの伝言「タカヤマさんにきいて」。
『もっと』の「不惑」の話も興味深い。
いとうさんも『あぶ刑事』が本格デビューで、いきなり「無謀」。ちょうどこのインタビューを読んだあとにBS日テレで「無謀」の回を見て、色々なるほどでした。
あと脚本家さんのお話の中にたびたび出てくるエド・マクベインの『87分署』シリーズ。刑事ドラマを書くなら必読のバイブルのようで、私も「お噂はかねがね」なのですが、これまで1冊も手に取ったことがなく。ちょっと読んでみないと。
でもその前に『核心』を読み進めないとね。なんかもったいなくてちびちびお一方ずつ読んでるので、なかなか進まない。永遠に読んでいたいw
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