はい、最後まで読みました!
何しろ50人もの方々へのインタビュー集。けっこうがんばって読んだのに時間かかりました。活字中毒者にはほんとに嬉しい分厚さです。
では早速続きの第4章から参りましょう。
【監督さんたちはじめ“今ではできない撮影”の裏話がたっぷり】
第4章「指揮」に登場するのは監督の村川透さん、一倉治雄さん、成田祐介さん、原隆仁さん。「演出部座談会」として伊藤裕彰さん、児玉宜久さん、隅田靖さんという、当時助監督を務められたお三方。そして製作主任の市川幸嗣さんと大塚泰之さん、製作進行の氏家英樹さん。
村川さんは言わずと知れた大御所、テレビシリーズはもちろん、『もっともあぶない刑事』『あぶない刑事リターンズ』、『さらばあぶない刑事』を手がけた監督さん。『さらば』の時は78歳かな? 今年の3月で87歳、まずはお元気そうで何よりですし、40年近く前の記憶がしっかりしていらしてすごい。
「いかに台本にないことをするか」「おもしろいことをしなきゃ」――『あぶ刑事』がアドリブ満載何でもありの方向になったのは村川さんのおかげと言っても過言ではないんですよねぇ。
舘さんや恭兵さんに対する「人物評」も面白いし、パパさん役・山西道広さんのことを「勉強家で芸術家タイプ」とおっしゃってるのも興味深い。
何より村川監督、「とにかく1本1本が楽しかった」っておっしゃってて、インタビュー全体が楽しそう。
続く一倉さんはテレビシリーズと『またまたあぶない刑事』、『あぶない刑事フォーエヴァーTVスペシャル』を監督。「ファンが少しでも喜んでくれるならいくらでも語りますよ」と言ってくださってるのが泣ける!!! ありがとうございます!
『またまた』の裏話なども面白いですが、『もっと』の第15話「不惑」のお話に、なるほどと思いました。『もっと』は無印に比べて面白くない、と「その1」でも言いましたが、特に序盤は微妙で、コミカルに、カジュアルになりすぎたきらいがある。で、一倉さんも「あぶ刑事が軽くなりすぎた」「鷹山と大下の違いがわからなくなってきていた」とおっしゃっていて。「セリフを入れ替えても成り立ってしまう」と。
あー、そこかぁ、と思いましたね。
なんかしっくり来ないのはそういうことだったのかと。
成田さんは無印第20話「奪還」で監督デビュー、映画『あぶない刑事フォーエヴァー』を手がけられた方。「奪還」を見た松田優作さんの感想とか、萩原聖人さんのデビュー秘話とか面白いお話が続々。無印45話「謹慎」のラストの新幹線ホームの「絵」とか、BS日テレ再放送を見たばかりで「あ~~~」ってなりました。46話「脱出」ラストの銃撃戦のところもね、いいよね。スローモーションで、『Night Wave』がかかって。
『フォーエヴァー』ラストでちゃんと殺したのに幽霊になって復活しちゃった、ってお話も面白すぎる。語られている伊地智さんとのやりとり、伊地智さんが『まだまだ』の幽霊オチにこだわったのは、もしかしたら成田さんの顔を立てるためだったのかな、と思ったり。
『まだまだ』でしれっと生きてたことにすると、『フォーエヴァー』の成田さんのお仕事が宙に浮いてしまう……みたいな。(※個人の妄想です)
監督陣の最後を飾るのは原隆仁さん。『帰ってきた』の原廣利監督のお父さま。息子さんが『あぶ刑事』新作を撮ると知った時に「いいなぁ~、うらやましいなぁと思った」っておっしゃっていて、人柄を感じます。
原さんは無印第33話「生還」の脚本も手がけてらっしゃるんですよね。そうかー、そうだったのかぁ。すごいな、原監督。第50話「狙撃」で銀星会組長として室田さんをキャスティングしたのも原さん。「狙撃」での室田さんと中条さんとのやりとり、いいですよねぇ、うん。
無印最終回、伝説の幽霊オチ「悪夢」を撮られたのも原さん。どの裏話も面白い~~~。
「演出部座談会コーナー」では「誰と誰が仲悪い」みたいな赤裸々な裏話が(笑)。他の方のお話にもちょくちょく登場する手銭監督の脅威の早撮りエピソードもすごい。あと児玉さんが恭兵さんの代役としてヘリに乗ってて落っこちかけたとかで。助監督さんもそういうことやらされるのかぁぁぁ、って思いました。
続いて製作部のお三方。
「製作主任」とか「製作進行」とか、具体的にどんなお仕事をされるものなのか知らなかったので、まずそれが面白かったです。ロケ地の準備、維持管理、ロケの際の人止め&車止め、警察への道路使用許可申請……。
市川さんが「吉田刑事役・秋山武史さんがプロ級のレーサーだったから助かった話」をされてて、秋山さん、ドラマ中でボートも操縦してらっしゃるし、車の運転もプロ級って! 早くに亡くなられてしまったの、本当に残念。吉田刑事、「吉田春彦」というフルネームなんだけど、こないだ再放送見てたら「春さん」と呼ばれてるシーンがあってびっくりしました。何周もしてるのに記憶になかった。
大塚さんは映画「フォーエヴァー」に出て来たタンカーを借りる話がすごい。ミサイルにしろタンカーにしろ、正直「そんな大がかりにしなくても」と思っていたけど、本物のタンカー使って撮影するなんて、並大抵のことじゃないんですよね。もっとありがたがって見ないと。
あと「今ではできない撮影ばかり」というお話がほんとに沁みる。『あぶ刑事』のカーアクション大好きなんだけど、今は公道でパトランプ点滅させるのもダメらしいし、あの時代だからできたあの素晴らしいアクション。再放送見てて本当に楽しくてしょうがないですもん。「これよ、これ!」って。
去年舘さんとトオルくんがやった『さらば、銃よ』見て、あれもアクションが売りのはずだったけど、「いかにも取って付けたアクション」というふうに見えて。アクションのためにアクションシーンがあって、しかもそのアクションがたいしたことない(※個人の感想です!!!)。特に車部分は今はやりたくても撮影できないんでしょうけど、『あぶ刑事』だとただ現場に急行するだけのシーンでキキキーッ!とケツ振ってUターンしたりして、それがすごい格好いいじゃないですか。ストーリーの中にごく自然に、「遊び」としてアクションが組みこまれてる。
そんな『あぶ刑事』の見事なカーチェイスの数々、製作部の方々の警察その他との折衝と、しっかりした車止め&人止めがあってこそ、無事に撮影できてるんですよね。しかもあのクオリティで毎週放送してるんだもんなぁ。『あぶ刑事』製作チームまじハンパない。
製作進行の氏家さんは「内トラ(身内のエキストラ)」として本編にセリフ付きで登場しているらしく。「えーっ、あれ、スタッフさん!?」とびっくりです。カースタントにも参加していたり、愛車を撮影に使われてめちゃくちゃにされたり……。「よくこれだけ車壊すよなぁ、予算大丈夫なん?」と思ってましたが、スタッフの車やったんかい!
【『あぶ刑事』を支えた技術スタッフの皆さん】
第5章「技術」の項は総勢14人。
撮影の松村文雄さん、藤澤純一さん、浜田毅さん、柳島克己さん。
美術の木村光之さん、装飾の大坂和美さん、記録の内田絢子さん、編集の川島章正さん、整音の小嶋信雄さん、メイクの大塚隆康さん。
技斗の高瀬将嗣さん、瀬木一将さん。(※高瀬さんはもう亡くなられているので過去のインタビューの再録)
カースタントの竹内雅敏さん、ガン・アドバイザーの納富貴久男さん。
松村さんのお話ではあのエンディングの「カタカタカタ」ってなってるやつ(わかりにくい)をどう実現してるか、って話がとても興味深かったです。解説されても実のところよくわかんなかったりはするんだけど(^^;)
あと松村さん、『あぶ刑事』は42話までのご参加なんですが、それは『仮面ライダーBLACK』のオファーが来たからだそうで。へぇーへぇーへぇー! もともと仮面ライダーや戦隊を撮ってらしたそうで、特撮好きとしてはなんか盛り上がってしまいました。
藤澤さんは「キャメラマンは危険なことに燃える」というお話を。『またまたあぶない刑事』の冒頭、いきなりレパードが片輪走行してるやつ、藤澤さんもあの傾いたレパードに乗り込んで撮影されているらしく。途中、横転した車がザザザーーーッとなるシーンでも中に入ってらっしゃるらしく。
……カメラマンって、スタントマンと同じくらいの度胸と身体能力がいるのか……。
「もう今では許されない撮り方」っておっしゃっていて、『あぶ刑事』の見事なアクションシーン、ほんとに色々な面で「あの時代だからこそ」なんですね。
レパードの片輪走行についてはカースタント担当の竹内さんもお話をたっぷり。なんであんなことできるの?という種明かしをしてくださってます。まぁいくら「種」があっても、実際にそれをできるのはスタントチームの腕あってこそ、横転してズザザーっと滑って目標の位置で止まるなんてのは「経験しかない」そうで。
「4台いっせいにスピンターン」とか、「あったあった!」と思うんですけど、ほんとによくあんなことを。
『あぶ刑事』シリーズにずっとカースタント担当としてクレジットされていた竹内さん率いる「TA・KA」さん、現在はもうスタントはやってないのだとか。竹内さんご自身のスタントも『さらば』が最後……。パパさんや谷村刑事、松村課長に深町課長、キャスト陣だけでなく、スタッフ陣も「これが本当に最後だ!」感がありますね。
タカとユージ、それぞれのアクションの方向を決めたのが技斗の高瀬さん。高瀬さんも『さらば』が『あぶ刑事』としては最後のお仕事となり、吉川晃司vs舘ひろしのアクションについて熱く語ってくださっています。
編集の川島さん、整音の小峰さんは、そもそも「編集」や「整音」というのが具体的にどういう作業をするのかピンと来ていなかったので、へぇぇ、と思いました。特に「整音」、セリフやBGM、効果音といったすべての「音」のバランスを整えるお仕事なのですが、「脱出」回ラストでのあの銃撃戦、途中から銃声なしで音楽だけになるのは小峰さんのアイディアなんだとか。
「音楽監督」とはまた別に、「整音」のところでもそういう工夫が入っていたんですねぇ、面白い。
あとメイクの大塚さんは「思い出すだけで涙が出ちゃう」「浅野さんや恭兵さんと一緒に遊ぶことができて本当に楽しかった」と。薫の毎回の素晴らしいファッションとメイク、花魁の時のあの髪は温子さんの地毛だそうで、つまりは大塚さんがあれを結わはったんですよね。ユージもよく変装してて、ほんと楽しかったですよね(しみじみ)。
【『あぶ刑事』の音楽は最高!】
第6章「旋律」は音楽の志熊研三さん、音楽監督の鈴木清司さん。そして音楽プロデューサー対談として佐久間雅一さんと浦田東公さんの両名。
『あぶ刑事』の音楽は本当に良くて、特にテレビシリーズと初期映画3部作のサントラはこの38年間ずーっとヘビロテ、今も聞きながらこの記事を書いています。楽曲そのものが良いだけでなく、その使い方が絶妙なわけですが、音楽監督の鈴木さんの頭の中に曲が全部入っていて、2チャンネルモノラルで録られた音源のどっちにどんなパートが入っているかも全部把握されていて、監督の要望やご自身のセンスによってそれを6㎜テープの切り貼りでピタッと合わせていく……。すごすぎる。
恭兵さんの『ラブ・ロマンス』の頭の部分の音だけ使われていたり、再放送で見返しても本当に絶妙で素晴らしいです。
プロデューサー対談は裏話が大変面白く。特に佐久間さんはファンハウスで舘さんを担当されていた方で、舘さん絡みのお話がたくさん。「ええっ、そんなことが…!」と思います。ふふふ。
(※歴代サントラのサブスク解禁嬉しい~。『もっとあぶない刑事』分も7月には解禁されるということで楽しみです♪)
【やっぱり『まだまだ』は…(笑)】
最終章「復活」はプロデューサーの奥田誠治さん、美術の山崎秀満さん、監督の鳥井邦男さん、そしてプロデューサーの近藤正岳さん。
『リターンズ』以降、何度でもよみがえってきた『あぶ刑事』を支えてきた皆さん、『リターンズ』でミサイルを出したいと言ったのは奥田さんだそうで。
お前か!!!(笑)
私としてはミサイルやタンカーといった大仕掛けはない方が好みなんですけど、でも「映画ならではのスケールを」というのは当然だし、両方きっちり映像化していたのはすごいですよね。タンカー借りるのも大変だったわけで。
『フォーエヴァー』の時の『踊る大捜査線』とのお話はちょっぴりせつなく、『さらば』や『帰ってきた』の別タイトル案などは興味深く。
美術の山崎さんの項では『フォーエヴァー』と『まだまだ』の時の港署セット図面も掲載。「『あぶ刑事』はカメラマンと照明技師が強い」というお話が面白い。
『まだまだ』を監督された鳥井さんはテレビシリーズでは助監督として参加されていて、なんと「銀星会」の名付け親は鳥井さんなのだそうな。てっきり脚本家さんが考えられたものと思っていました。
助監督時代の裏話もほんとに面白いんですが、やはり『まだまだ』の話が気になりますよね。ここまで他のスタッフさんも「『まだまだ』はちょっと…」みたいなことをおっしゃっていましたが、監督された鳥井さんも「よくわかんない脚本」と思っていらしたそうで。
鳥井さんもやっぱり「ミサイルとかタンカーとか、そんなデカい組織とやり合う必要ある?銀星会で良くない?」と思ってらしたと聞いて、全俺の「ですよね!」が止まらない(笑)。今回『帰ってきた』で「あのときの銀星会会長の息子」が敵、25年前の因縁も銀星会絡みっていうの、「やっとそこに戻ってきたか!」でしたよね、ほんとに。
で、ラストを飾る50人目はその『帰ってきた』のプロデューサー、近藤さん。もともと近藤さんは東映の宣伝室にいて、『ビーバップ・ハイスクール』の時にはトオルくんのマネージャーみたいなこともしてらしたのだとか。
近藤さんも「やっぱり『まだまだ』は不思議な作品」とおっしゃってて、伊地智さんがなぜ幽霊オチにこだわったのか、近藤さんなりのお考えを話してくださっています。
著者高鳥さんの「おわりに」によると、関係者に片っ端から連絡してインタビューのアポを取ってくださったのも近藤プロデューサーだそうで、奥付には「企画監修 近藤正岳」というクレジットもあります。
黒澤さんのご逝去やコロナ禍を乗り越え、『あぶない刑事』が“帰ってきた”のも近藤さんのおかげ。
奥田プロデューサーが「近藤さんがいなかったら映画版も続いていない」「“プロデューサーが何を作りたいか”という熱がいちばん大切」とおっしゃっていて、近藤さん、歴代プロデューサーさん、『あぶない刑事』という作品を作ってくださって、本当に本当にありがとうございました。
そしてインタビューを受けてくださった皆さん、高鳥さん、出版社さん、よくぞこんな本を出してくださいました。最後のシリーズ一覧リストに至るまですべて、隅から隅まで面白かったです。ありがとうございました!
これを踏まえてまたテレビシリーズ1話から見返したくなるなぁ。それぞれの監督さんたちの違い、脚本家さんの違い、実はスタッフさんだったあの役……。
※AmazonPrimeVideoでテレビシリーズ『あぶない刑事』を見る
あー、そこかぁ、と思いましたね。
なんかしっくり来ないのはそういうことだったのかと。
成田さんは無印第20話「奪還」で監督デビュー、映画『あぶない刑事フォーエヴァー』を手がけられた方。「奪還」を見た松田優作さんの感想とか、萩原聖人さんのデビュー秘話とか面白いお話が続々。無印45話「謹慎」のラストの新幹線ホームの「絵」とか、BS日テレ再放送を見たばかりで「あ~~~」ってなりました。46話「脱出」ラストの銃撃戦のところもね、いいよね。スローモーションで、『Night Wave』がかかって。
『フォーエヴァー』ラストでちゃんと殺したのに幽霊になって復活しちゃった、ってお話も面白すぎる。語られている伊地智さんとのやりとり、伊地智さんが『まだまだ』の幽霊オチにこだわったのは、もしかしたら成田さんの顔を立てるためだったのかな、と思ったり。
『まだまだ』でしれっと生きてたことにすると、『フォーエヴァー』の成田さんのお仕事が宙に浮いてしまう……みたいな。(※個人の妄想です)
監督陣の最後を飾るのは原隆仁さん。『帰ってきた』の原廣利監督のお父さま。息子さんが『あぶ刑事』新作を撮ると知った時に「いいなぁ~、うらやましいなぁと思った」っておっしゃっていて、人柄を感じます。
原さんは無印第33話「生還」の脚本も手がけてらっしゃるんですよね。そうかー、そうだったのかぁ。すごいな、原監督。第50話「狙撃」で銀星会組長として室田さんをキャスティングしたのも原さん。「狙撃」での室田さんと中条さんとのやりとり、いいですよねぇ、うん。
無印最終回、伝説の幽霊オチ「悪夢」を撮られたのも原さん。どの裏話も面白い~~~。
「演出部座談会コーナー」では「誰と誰が仲悪い」みたいな赤裸々な裏話が(笑)。他の方のお話にもちょくちょく登場する手銭監督の脅威の早撮りエピソードもすごい。あと児玉さんが恭兵さんの代役としてヘリに乗ってて落っこちかけたとかで。助監督さんもそういうことやらされるのかぁぁぁ、って思いました。
続いて製作部のお三方。
「製作主任」とか「製作進行」とか、具体的にどんなお仕事をされるものなのか知らなかったので、まずそれが面白かったです。ロケ地の準備、維持管理、ロケの際の人止め&車止め、警察への道路使用許可申請……。
市川さんが「吉田刑事役・秋山武史さんがプロ級のレーサーだったから助かった話」をされてて、秋山さん、ドラマ中でボートも操縦してらっしゃるし、車の運転もプロ級って! 早くに亡くなられてしまったの、本当に残念。吉田刑事、「吉田春彦」というフルネームなんだけど、こないだ再放送見てたら「春さん」と呼ばれてるシーンがあってびっくりしました。何周もしてるのに記憶になかった。
大塚さんは映画「フォーエヴァー」に出て来たタンカーを借りる話がすごい。ミサイルにしろタンカーにしろ、正直「そんな大がかりにしなくても」と思っていたけど、本物のタンカー使って撮影するなんて、並大抵のことじゃないんですよね。もっとありがたがって見ないと。
あと「今ではできない撮影ばかり」というお話がほんとに沁みる。『あぶ刑事』のカーアクション大好きなんだけど、今は公道でパトランプ点滅させるのもダメらしいし、あの時代だからできたあの素晴らしいアクション。再放送見てて本当に楽しくてしょうがないですもん。「これよ、これ!」って。
去年舘さんとトオルくんがやった『さらば、銃よ』見て、あれもアクションが売りのはずだったけど、「いかにも取って付けたアクション」というふうに見えて。アクションのためにアクションシーンがあって、しかもそのアクションがたいしたことない(※個人の感想です!!!)。特に車部分は今はやりたくても撮影できないんでしょうけど、『あぶ刑事』だとただ現場に急行するだけのシーンでキキキーッ!とケツ振ってUターンしたりして、それがすごい格好いいじゃないですか。ストーリーの中にごく自然に、「遊び」としてアクションが組みこまれてる。
そんな『あぶ刑事』の見事なカーチェイスの数々、製作部の方々の警察その他との折衝と、しっかりした車止め&人止めがあってこそ、無事に撮影できてるんですよね。しかもあのクオリティで毎週放送してるんだもんなぁ。『あぶ刑事』製作チームまじハンパない。
製作進行の氏家さんは「内トラ(身内のエキストラ)」として本編にセリフ付きで登場しているらしく。「えーっ、あれ、スタッフさん!?」とびっくりです。カースタントにも参加していたり、愛車を撮影に使われてめちゃくちゃにされたり……。「よくこれだけ車壊すよなぁ、予算大丈夫なん?」と思ってましたが、スタッフの車やったんかい!
【『あぶ刑事』を支えた技術スタッフの皆さん】
第5章「技術」の項は総勢14人。
撮影の松村文雄さん、藤澤純一さん、浜田毅さん、柳島克己さん。
美術の木村光之さん、装飾の大坂和美さん、記録の内田絢子さん、編集の川島章正さん、整音の小嶋信雄さん、メイクの大塚隆康さん。
技斗の高瀬将嗣さん、瀬木一将さん。(※高瀬さんはもう亡くなられているので過去のインタビューの再録)
カースタントの竹内雅敏さん、ガン・アドバイザーの納富貴久男さん。
松村さんのお話ではあのエンディングの「カタカタカタ」ってなってるやつ(わかりにくい)をどう実現してるか、って話がとても興味深かったです。解説されても実のところよくわかんなかったりはするんだけど(^^;)
あと松村さん、『あぶ刑事』は42話までのご参加なんですが、それは『仮面ライダーBLACK』のオファーが来たからだそうで。へぇーへぇーへぇー! もともと仮面ライダーや戦隊を撮ってらしたそうで、特撮好きとしてはなんか盛り上がってしまいました。
藤澤さんは「キャメラマンは危険なことに燃える」というお話を。『またまたあぶない刑事』の冒頭、いきなりレパードが片輪走行してるやつ、藤澤さんもあの傾いたレパードに乗り込んで撮影されているらしく。途中、横転した車がザザザーーーッとなるシーンでも中に入ってらっしゃるらしく。
……カメラマンって、スタントマンと同じくらいの度胸と身体能力がいるのか……。
「もう今では許されない撮り方」っておっしゃっていて、『あぶ刑事』の見事なアクションシーン、ほんとに色々な面で「あの時代だからこそ」なんですね。
レパードの片輪走行についてはカースタント担当の竹内さんもお話をたっぷり。なんであんなことできるの?という種明かしをしてくださってます。まぁいくら「種」があっても、実際にそれをできるのはスタントチームの腕あってこそ、横転してズザザーっと滑って目標の位置で止まるなんてのは「経験しかない」そうで。
「4台いっせいにスピンターン」とか、「あったあった!」と思うんですけど、ほんとによくあんなことを。
『あぶ刑事』シリーズにずっとカースタント担当としてクレジットされていた竹内さん率いる「TA・KA」さん、現在はもうスタントはやってないのだとか。竹内さんご自身のスタントも『さらば』が最後……。パパさんや谷村刑事、松村課長に深町課長、キャスト陣だけでなく、スタッフ陣も「これが本当に最後だ!」感がありますね。
タカとユージ、それぞれのアクションの方向を決めたのが技斗の高瀬さん。高瀬さんも『さらば』が『あぶ刑事』としては最後のお仕事となり、吉川晃司vs舘ひろしのアクションについて熱く語ってくださっています。
編集の川島さん、整音の小峰さんは、そもそも「編集」や「整音」というのが具体的にどういう作業をするのかピンと来ていなかったので、へぇぇ、と思いました。特に「整音」、セリフやBGM、効果音といったすべての「音」のバランスを整えるお仕事なのですが、「脱出」回ラストでのあの銃撃戦、途中から銃声なしで音楽だけになるのは小峰さんのアイディアなんだとか。
「音楽監督」とはまた別に、「整音」のところでもそういう工夫が入っていたんですねぇ、面白い。
あとメイクの大塚さんは「思い出すだけで涙が出ちゃう」「浅野さんや恭兵さんと一緒に遊ぶことができて本当に楽しかった」と。薫の毎回の素晴らしいファッションとメイク、花魁の時のあの髪は温子さんの地毛だそうで、つまりは大塚さんがあれを結わはったんですよね。ユージもよく変装してて、ほんと楽しかったですよね(しみじみ)。
【『あぶ刑事』の音楽は最高!】
第6章「旋律」は音楽の志熊研三さん、音楽監督の鈴木清司さん。そして音楽プロデューサー対談として佐久間雅一さんと浦田東公さんの両名。
『あぶ刑事』の音楽は本当に良くて、特にテレビシリーズと初期映画3部作のサントラはこの38年間ずーっとヘビロテ、今も聞きながらこの記事を書いています。楽曲そのものが良いだけでなく、その使い方が絶妙なわけですが、音楽監督の鈴木さんの頭の中に曲が全部入っていて、2チャンネルモノラルで録られた音源のどっちにどんなパートが入っているかも全部把握されていて、監督の要望やご自身のセンスによってそれを6㎜テープの切り貼りでピタッと合わせていく……。すごすぎる。
恭兵さんの『ラブ・ロマンス』の頭の部分の音だけ使われていたり、再放送で見返しても本当に絶妙で素晴らしいです。
プロデューサー対談は裏話が大変面白く。特に佐久間さんはファンハウスで舘さんを担当されていた方で、舘さん絡みのお話がたくさん。「ええっ、そんなことが…!」と思います。ふふふ。
(※歴代サントラのサブスク解禁嬉しい~。『もっとあぶない刑事』分も7月には解禁されるということで楽しみです♪)
【やっぱり『まだまだ』は…(笑)】
最終章「復活」はプロデューサーの奥田誠治さん、美術の山崎秀満さん、監督の鳥井邦男さん、そしてプロデューサーの近藤正岳さん。
『リターンズ』以降、何度でもよみがえってきた『あぶ刑事』を支えてきた皆さん、『リターンズ』でミサイルを出したいと言ったのは奥田さんだそうで。
お前か!!!(笑)
私としてはミサイルやタンカーといった大仕掛けはない方が好みなんですけど、でも「映画ならではのスケールを」というのは当然だし、両方きっちり映像化していたのはすごいですよね。タンカー借りるのも大変だったわけで。
『フォーエヴァー』の時の『踊る大捜査線』とのお話はちょっぴりせつなく、『さらば』や『帰ってきた』の別タイトル案などは興味深く。
美術の山崎さんの項では『フォーエヴァー』と『まだまだ』の時の港署セット図面も掲載。「『あぶ刑事』はカメラマンと照明技師が強い」というお話が面白い。
『まだまだ』を監督された鳥井さんはテレビシリーズでは助監督として参加されていて、なんと「銀星会」の名付け親は鳥井さんなのだそうな。てっきり脚本家さんが考えられたものと思っていました。
助監督時代の裏話もほんとに面白いんですが、やはり『まだまだ』の話が気になりますよね。ここまで他のスタッフさんも「『まだまだ』はちょっと…」みたいなことをおっしゃっていましたが、監督された鳥井さんも「よくわかんない脚本」と思っていらしたそうで。
鳥井さんもやっぱり「ミサイルとかタンカーとか、そんなデカい組織とやり合う必要ある?銀星会で良くない?」と思ってらしたと聞いて、全俺の「ですよね!」が止まらない(笑)。今回『帰ってきた』で「あのときの銀星会会長の息子」が敵、25年前の因縁も銀星会絡みっていうの、「やっとそこに戻ってきたか!」でしたよね、ほんとに。
で、ラストを飾る50人目はその『帰ってきた』のプロデューサー、近藤さん。もともと近藤さんは東映の宣伝室にいて、『ビーバップ・ハイスクール』の時にはトオルくんのマネージャーみたいなこともしてらしたのだとか。
近藤さんも「やっぱり『まだまだ』は不思議な作品」とおっしゃってて、伊地智さんがなぜ幽霊オチにこだわったのか、近藤さんなりのお考えを話してくださっています。
著者高鳥さんの「おわりに」によると、関係者に片っ端から連絡してインタビューのアポを取ってくださったのも近藤プロデューサーだそうで、奥付には「企画監修 近藤正岳」というクレジットもあります。
黒澤さんのご逝去やコロナ禍を乗り越え、『あぶない刑事』が“帰ってきた”のも近藤さんのおかげ。
奥田プロデューサーが「近藤さんがいなかったら映画版も続いていない」「“プロデューサーが何を作りたいか”という熱がいちばん大切」とおっしゃっていて、近藤さん、歴代プロデューサーさん、『あぶない刑事』という作品を作ってくださって、本当に本当にありがとうございました。
そしてインタビューを受けてくださった皆さん、高鳥さん、出版社さん、よくぞこんな本を出してくださいました。最後のシリーズ一覧リストに至るまですべて、隅から隅まで面白かったです。ありがとうございました!
これを踏まえてまたテレビシリーズ1話から見返したくなるなぁ。それぞれの監督さんたちの違い、脚本家さんの違い、実はスタッフさんだったあの役……。
※AmazonPrimeVideoでテレビシリーズ『あぶない刑事』を見る
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