今、橋本治さんの『ひろい世界の
かたすみで』を読んでいる。
その中で、昨日「女って何だ?」
という一章を読んだのだけど、
とても面白かった。

女帝の話が出てくるのだ。
奈良時代とか平安時代の、「強い女」
の話。持統天皇が相当すごい女だった
ってことはけっこう知られていると
思うけど、大化改新当時天皇だった
中大兄皇子のお母さんの斉明天皇の
ことなんて、あんまりみんな知らない
でしょう。

「わがまますれすれの強い女」だった
らしい。

だから何なのかと言ったら、男だって
女だって権力を持ったら「やな奴」に
なりうるし、日本にはそーゆー女の
権力者−女帝−っていうのがちゃんと
いたんだよ、っていう話。
なんでそこが無視されてるんだろう、
歴史の中に「やな女」を発見しないで
見て見ぬふりをするのは差別じゃないか、
という。

ここの記述は本当に面白くて、
「未亡人ではなく、最初から皇太子と
なって天皇になる女性=孝謙天皇」の
話は、「ほら、そういうことって
ちゃんとあったんだから」とナントカ
有識者会議の皆さんに言いたくなる
ような。
もっとも、孝謙女帝は「一生独身」を
前提にされて、そのせいでか道鏡という
お坊さんに迷って道を誤ってしまうので、
「ほら、女を天皇にすると婿の問題で
困るじゃないか」と逆に言われてしまう
のだろうけど。

今どき男が天皇でも嫁はなかなか来て
くれなくて、困るのはおんなじだと
思うけどね。
雅子さまなんて、嫁いでくれただけでも
有り難いんだから、もっとみんな大事に
してあげなきゃダメだよ。

大体なんで天皇家がなくなると困るん
だろう。
「日本の顔」が、ころころ変わる貧相で
品のない自民党総裁しかいない、って
いうのは確かにどうかとは思うけど、
「国民の象徴」などという人間ではない
人生を生きなければならない「天皇陛下」
は気の毒な気もするし、いなきゃいない
でなんとかなってしまうもののような
気もする。

さっさと徳川家が天皇を廃していれば
ややこしいことにならずにすんだのにね。
江戸時代の天皇家が何をしていたかなんて
全然歴史に出てこないのに。

天皇の后がある時期から藤原氏に占め
られて、実質的に藤原氏が朝廷を牛耳
っていたということは中学の教科書にも
出てくることだ。
女系で見れば、天皇家は「藤原家」に
なってしまう。

だから女系天皇に反対するのかなぁ。

天皇の子どもであることよりも、
藤原の娘の子どもであることが
重要で、天皇自身に権力はなく、
祖父である藤原の男が実権を握る。
「俺だって好き放題したい」と思った
天皇はさっさと位を譲って「上皇」
というものになって好き放題する。

橋本さんの『双調平家物語』を
読むとそこらへんのごちゃごちゃが
よくわかって、日本には昔から政治
がなくて人事だけがあるんだな、
ってこともよくわかる。

天皇がいなきゃやだ。
それも万世一系の男の天皇がいなきゃ
やだ、と思う心理って、どういうもの
なんだろうなぁ。