もう5年ぐらい前のことになるけど、
とある博物館に「一昔前の日本の
暮らし」を再現した部屋があって、
昭和天皇の写真が飾られていた。
それを見た中学生ぐらいの子が、

「あ、この人知ってる!
天皇のお父さんだよね!」

と言った。
「そうか、この子たちにとっては
天皇といえば今の天皇なんだ」
と私はいたく感銘を受けたのだった。

私にとって、天皇といえば昭和天皇。
私が生まれた時には既に何十年も
天皇をやっていて、60年になって
もまだ健在で、「ひょっとしてこの
先もずっと昭和で行っちゃうのかな。
天皇はずっとあの天皇のままで、
皇太子さんはずっと皇太子さんの
まんまなのかも」
という気がしていた。

だから平成になっても、いちいち
「今の天皇陛下」なんて言い方を
ついしてしまうぐらい、代替わり
がピンと来なかった。
「今の皇太子殿下」はずっと
「浩宮さん」だったし。

もう、平成も18年。
あと2年で成人式だ。
私が昭和で過ごした年月と、ほぼ
同じくらい平成も時を重ねてしまった。
でもやっぱり、「天皇」と言って
とっさにイメージするのは昭和天皇。

あるいは昭和が終わった時点で
天皇制度をやめちゃえばよかった
のかもしれないなぁ。

昭和天皇は途中でその位置づけが
思いきり変わって、すごく特殊な
存在だった。
最初から「国民の象徴」として
存在する天皇は、今の天皇が初めて
なんだ。

今の子どもたちが大人になって、
昭和天皇を歴史の教科書でしか
知らない人間ばかりの時代になっても、
それでも天皇というシステムは
必要とされるんだろうか。