「子どもとめぐる本の旅」という
カテゴリに入れるのはどうかと
思うのだけど、新しく別にカテゴリを
作るのも面倒だし、「作文教育の暴走」
という章なんかは、この先いくつも
読書感想文を書かされるであろう
息子とも多少は関係があると無理矢理
理屈をくっつけて、ここに書いてしまう。

この本は2002年の発行で、確か
新聞に書評も出ていたと思うし、
けっこう話題になった本らしい。
読書傾向が思いっきり偏っている私は
手に取ることなく過ごしていたのだが、
この間清水義範さんの
『はじめてわかる国語』を読んでいたら
この本のことが出てきて、
著者の斎藤さんとの対談まで入っていた
ものだから、興味を惹かれて図書館で
借りてみた。

面白かった。

一気に読んでしまった。

谷崎潤一郎の『文章読本』を皮切りに、
世に溢れる文章指南書の類をバッタ
バッタと斬り捨てていく。
そんな昔の文豪の本のことなんか
知りたくもないわい、という気が
するし、ぱらっと本文を繰ると
いっぱい引用文が並んでいるので
「うわ、なんか読みにくそう」と
思うのだけど、実際には全然そんな
ことなくて、すいすい読める。

斎藤さんのツッコミが面白いのは
もちろんのこと、引用されている
各『文章読本』の中身がまた、
「えーっ、そんなことが書いて
あるの!?」とびっくりさせられる。
ははーっ、と有無を言わさず頭を
垂れなければならない(ような気が
する)お偉方の『文章読本』が、
それはそれはハチャメチャで、
笑えるのだ。

一番私が驚いたのは丸谷才一氏の
『文章読本』で、よくこんなものが
ベストセラーになったもんだなぁと
感心してしまった。
丸谷氏が旧仮名づかいで文章を書く
人だということは知っていたけれど、
「いい文章の例」として古文、漢文、
果ては祝詞まで出てくる本を、
一体どんな人が読んだんだろうか。
1977年にはまだそーゆーものを
読める人がいっぱいいたってこと
なのか。

本多勝一氏の『日本語の作文技術』
では新聞の投稿欄に載った素人の
文章がやり玉に挙げられ、
「ヘドの出そうな文章」と言われて
いるそうだ。
ひょえ〜。
でも当の『日本語の作文技術』を
読もうという人は、そーゆー投稿欄
に載ることを目標としている
市井の文筆家だったんじゃないん
だろうか。
そんなに素人さんをこきおろして、
一体誰に読ませるつもりで書いた
んだろう。
別に読者におもねる必要はないけど、
「我こそは文章の達人」と思って
いる人はそんなにも高飛車になれる
ものかと感心してしまう。

(続く)