今、橋本治さんの『権力の日本人』
という本を読んでいる。
『双調平家物語ノート�』という副題が
ついている通り、橋本さんが『双調平家
物語』を書くにあたって調べたこと、
考えたことが、これでもかというぐらい
詰め込まれている。

ネットで買ったので、実物が届いて
その分厚さに恐れ入った。
352頁もあって、しかも小さいフォントの
2段組。すごいボリュームなのである。
まだやっと半分しか読めていない。

しかし本当に面白くて、また詳しい感想は
別サイトに書こうと思っているのだけど、
今日はとりあえず
『藤原摂関家と自民党は似ている』と
いう話。

というか、藤原家の説明をするのに
自民党を使った比喩が出てきて、
それがあまりにも「なるほど」なのだ。

平安時代、藤原家は天皇の外祖父と
して摂政・関白の地位を独占し、
政治の実権を握っていた。
これは、中学程度の日本史でも習う
あまりにも有名なことだけれど、
一口に藤原家と言っても本流・傍流
色々あって、藤原家の「氏の長者」が
自動的に関白になる、ことになって
いたらしい。

もちろん相続争いはとっても熾烈で、
ある時「氏の長者はおまえに譲るから、
関白の地位は俺にくれ」というような
ことが起こり、「氏の長者」と「関白」
が別々の人間になる。
ここで、「たとえばの話、Aは自民党
総裁で、Bは総裁の座を奪われた総理
大臣である」という比喩が出てくるのだ。

なるほど、でしょ。

摂関家の力が弱まって院政の時代に
なると、いよいよ摂関家は「氏の長者」
を自分たちで決められなくなる。
本来、「藤原家」という一族内部の
私的なことであるはずの「氏の長者」を
朝廷が任命する、ということになって、
摂関家は没落していく。

しかし裏を返せばこれは、それまでは
「藤原家の私的な決定である“氏の
長者”がそのまま公的な“関白
(行政の長)”の決定にもなっていた」
ということで、国のシステムということ
でいえば、それまでの方がおかしい。

がしかし、平安時代から1000年経った
現在、自民党の私的な決定である
“総裁”は、ほぼそのまま公的な
“総理大臣”の決定にもなるのである。

常々、総理大臣はなぜ国民が選ぶの
でなくて、自民党員が決めるのだろう
と思っていたが、“それが日本の伝統”
だったりはするのかもしれない。

『双調平家物語』を読んでいると、
「日本には実はまともな国家が存在
したことがないのかもしれない」と
いう気になってくるが、この『権力と
日本人』はそのことを橋本さんが丹念
に説明してくれるすごい本である。