そんなわけで、映画『蟲師』の話です。

いちいち“蟲”という漢字を出すのがめんどくさいですが…シフトJISコードE5B3。私は職業柄「ワープロ漢字辞典」を持っているのでコードがすぐ調べられますが、ATOKなら文字パレットで「虫」の異体字を出せばいいでしょう。

漢和辞典を見ると、「虫」と「蟲」は本来別字で、「虫」の方はもともと「まむし」を指す字。「蟲」の方が、小さな虫が多く集まるさまから、「うじ虫・むし」の意味を表すらしい。
だからどうってこともなく、『蟲師』の“蟲”は「まむし」でも普通の「むし」でもないわけだけど、辞書を引くのは楽しいということで。

一夜明けて、「体にたかる“蟲”」の夢は見なくてすんだ。(それどころか、なぜか今朝は『ベルばら』について池田理代子さんとしゃべっている夢を見てしまった)
なんというか、ホントに感想を言いにくい映画だった。
お話としては割と淡々と進んでいくので、アクション好きの私にとってはやはり退屈な部分もあり、あからさまに寝ているのでは、と思えるお客さんもいた。

でも、だから「全然面白くなかった」というわけでもない。
物語のキーになっている「とこやみ」と「ぎんこ」という二つの“蟲”の関係というか詳細が、今一つしっかり呑み込めなかったので、ラストシーンも「あれ?」という感じで、「こういうことだったのかな?それとも??」と自分で想像を巡らさなきゃならない。

説明しすぎるお話は面白くないし、見る者の想像をかきたてることこそが、むしろ「成功した映像」であろうとは思う。
うーん、でも、やっぱりちょっと「もう1回説明してください」というか、「そこのセリフ、もう1回ゆっくりお願いします」というか。

淡々と、静謐な感じ。

蟲師ギンコは主役なんだけど、「大活躍!」っていうのでもないから、演じるのが難しいのでは、と思う。
オダギリジョーはどんな格好で何をしてても居るだけでカッコいいし、存在感あって、まぁ私も「オダギリジョーだし見とこう」って思ったのが本音。
ギンコの少年時代を演じた男の子が可愛かった。

蒼井優はやっぱり可愛い。
「文字で“蟲”を封じる」っていうのが面白いし、その文字がまさに「虫」のごとく床やら壁やらを蠢く様は映像ならではの面白さがあった。

蒼井優演じる淡幽の乳母のような役所、「たま」さん。
すごくいい感じの、しゃきっと背筋の伸びたおばさんで、「これ誰だったっけ」と思ったら李麗仙。
さすがでした。

「誰だっけ?」とも思わず見てたらクレジットに「りりィ」とあって驚かされた「庄屋の女主人」。りりィって、あの、「私は泣いています」の人だよね……。全然わからんかった。

主人公ギンコと関わりの深い女蟲師ぬい役、江角マキコ。元々苦手な人なので、「ああ、やっぱり好きになれない」って思った。江角マキコがやっていない、後半の「ぬい」の生き方というか執着も、怖かったし。
うん、やっぱ何が怖いって、人間の執念ほど怖いものはありませんね。

そして。
この映画の真の主役(?)、風景。
これは、素晴らしかった。
日本にまだこんな山や田んぼや森があるんだ、よく撮れたな、って感じ。
その、かなり多くの部分が、滋賀県なわけで。

ちょっと誇らしい(笑)。
新幹線の駅作るより、これを守るのにお金使う方が絶対滋賀の価値を高めるでしょう。
まぁ、あすこに住めって言われたら確かに困るけど……。
「ロケ地」として観光スポットにしようにも、普通には行けないとこだったりするし。

オダギリジョー、滋賀に来てたのよねぇ。
遭遇したかったなぁ。