突如「森川久美熱」に浮かされ、持っていないコミックス2冊をネットで注文した私。
そのうちの1冊『危険な席』が、『ジークフリート』の登場人物達のコスプレだ、という話だったので、予習のため本棚から引っ張り出してきた。

『ジークフリート』は連作になっていて、1〜3話は1996年発表。あすかコミックス(角川書店)として97年に出版されている。
今は、入手できない。
だから、ここで紹介して興味を持った人がいても、古本屋をあたるしかないのだ。
森川さんの作品で、今本屋で買えるものは非常に少ない。
なんというもったいないことでしょうか。

今買える本と、この『ジークフリート』に関するお話は森川さんのサイトの中の「BOOKS」のコーナーに出ているので、興味のある方はそちらをご覧下さい。
麗しいジークのイラストだけでも一見の価値があると思います。

『ジークフリート』の舞台はミュンヘン。
時は1929年。
第2次世界大戦前夜というところは『南京路』とおんなじで、ドイツではナチスが幅を利かすようになっている時期です(たぶん)。
登場人物は3人。
金髪碧眼、美形の一匹狼ジーク(と言っても殺し屋とかではなくジゴロ)。
その幼馴染みらしいユダヤ人で共産主義者のクルト。
ボヘミアから出てきたウブな青年ヴィリー。
この3人が――というか、ヴィリーがジークとクルトに出逢って振り回される、というお話です。

昔、コミックスを買って読んだ当初(つまり10年前)は、そんなに「大好き!」という感じではなく、今回本棚を探す時も「確か持ってたはずよね」というテキトーな記憶しかなかった。

今回改めて読んでみて。

面白かった。
続きが読みたいと思った。
なんというか、比較的淡々とした話というか、「血湧き肉躍る」というようなもんではないのだけど、時代背景そのものがドラマチックなこともあり、「もっと読みたい」という気になる。

何より、美形のジークが非常に好みだ(笑)。
皮肉屋で、誰も信じず誰も頼らず、一見享楽的に生きてて、でも実は「哀しい過去」とかありそうで、「借りは10倍にして返す」主義。

好きやなぁ、こーゆー無茶な人。
まぁこれで不細工やったらはた迷惑なだけやけど(爆)。

3話でクルトがベルリンへ行って、ジークとヴィリーもミュンヘンにいられなくなって(ヴィリーはジークのとばっちり)、さぁ次はベルリン、というところでコミックスは終わる。

クルトの過去を描いたらしい4話があるのだけど、掲載誌がつぶれ、コミックスは出ずじまい。
え〜、こっからええとこちゃうの???
ジークの過去とかめっちゃ読みたいけど。

1話〜4話まで、昨年「波瀾万丈の女たち」という雑誌に再録されたらしい。
もうちょっと早く森川熱が再燃していたら第4話が読めたのか、と思うが、なぜ「波瀾万丈の女たち」なのだろう。
女なんか全然カンケーないのに。

うん、女って、出てこないよね、森川さんの作品。
ヴァレンチーノは女だけど、オスカルなんか目じゃない男っぽさで、女の人好きになってたりするし。
男女の恋が出てきても、それがメインではまったくない。
かといってもちろん男同士の恋の話でもなく。
(まぁ多少はそーゆー雰囲気もあるけど)

時代に翻弄される男達の話?

美青年に女はいらない、は私の持論(!)だけど、実は男は女なんか必要としてないんじゃないか、女だって男を必要としてないんじゃないか、と思ったりもします。
もちろん生理的欲望として異性を必要とはするんでしょうが、「中身」は必要ないというか。
「男の友情」って、あるでしょう。
男の友だちと女の恋人だったら、男は友だちの方を選ぶような。知らんけど。
「女の友情」は儚いからね(笑)。
でも女だって、男の中に自分の幻想を追い求めているだけで、本当にその相手自身が好きなのかどうかは謎だと思うな。
でなきゃあんなにボーイズラブ物が流行ってないだろう……。

何の話だっけ?

そうそう、『ジークフリート』。
なぜこの作品がレディースコミック誌に再録されるのか、よくわからない。
世の中どうなってるんだろう。

ジークの過去が読める日は来るのだろうか。