12月1日の夜中に、BS11で『宇宙世紀への道』とかいうガンダムの番組をやっていた。それにGacktさんが出ているというので録画しておいたのだが。
2時間ぐらいある番組の最後に、6分間ぐらい司会をしていた福井晴敏さんと対談するという、予想通り短い出番だった。
しかしその対談を見て、「『ガンダムUC』読んでみようかな」という気になったのだ。

福井さんが『亡国のイージス』や『終戦のローレライ』の作者だということは私は全然知らなくて、「この間『BSアニメ夜話・装甲騎兵ボトムズ』の時にも出てた人だよね〜」としか思っていなかった。
そういえばあのボトムズの時も、ガンダムがどうとか、富野さんがどうとかってしゃべってたな、とは思ったのだが、ちゃんとした(?)文芸作家の方だとは思っていなかったのだ、ははは。

で、『機動戦士ガンダムUC』のサイトやら、Amazonでの書評やらを見てみて、俄然興味を惹かれ、買ってみた。

面白い!

ファーストガンダムの歴史に直につながる続編。
プロローグの、宇宙世紀開始直前のエピソードも、どきどきしながら読んだ。
「宇宙世紀ダブルオーセブンティーナイン…」というオープニングのナレーションにわくわくしていた1stガンダムファンとしては、「そうか、宇宙世紀の始まりって、こんなだったんだ」と妙に感慨深い。
自分がその世紀に生きているわけでは全然ないのに、何か「歴史」を目の当たりにしているような気になる。
「ガンダムUC」の「UC」は「ユニコーン」なんだけど、「ユニバーサル・センチュリー(宇宙世紀)」とも引っかけてあって、人類が宇宙に進出し、スペースノイドとアースノイドが対立しあう世界の物語、1stガンダムの根底にあった世界観を、そのままタイトルにしたようなものとも思える。

プロローグの後、本題は宇宙世紀0096年。かの1年戦争からは16年の歳月が経ち、「逆襲のシャア」の3年後の世界。
アナハイム・エレクトロニクスという社名を聞くだけでも「ああ〜」と思ってしまうし、ブライトさんも名前だけちらっと出てきたり、ハロがいたり、本当に色々1stガンダムファンにはたまらないところがたくさん。
主人公の住むコロニーでいきなり戦闘が始まってモビルスーツに乗る羽目になってしまう、という展開も憎い。

ファンへのサービスもたっぷりしながら、ストーリー自体もちろん面白くて。
ボーイ・ミーツ・ガールな部分も素敵だし、祖父と孫、父と子の描写もねぇ。
これから読む人のために、あまり細かいことは書かずにおくけど、父と子のシーンはうるうるしてしまった。
私も年を取ったせいか、父の方に感情移入しちゃったしなぁ。

死を覚悟し、それを目前にした人間の心理というか。
多くのことを成し遂げた自負があったとしても、そしてそれが周囲には理解されないことを受け容れていたとしても、やっぱり最後には、赦しや救いが欲しい。
自分が死んでも、続いていくという未来への希望が欲しい。

そーゆー描写にじーんとなっちゃうのよね。
そーゆーのって、セリフや表情だけでない、「小説で読む」醍醐味だと思うし。
まぁモビルスーツの戦いのシーンとかは、「アニメでやってよ」と思うけど。

そのうちアニメになるかな。
クシャトリヤの動きとか見たいよな。

現在書籍として発売されている1、2巻ではやっと「発端」が描かれただけなので、一体この先どれくらい続くんだろう、と心配になったりもします。
ガンダムファンの溢れる期待を背負いつつ、いい意味で裏切りながら「福井晴敏」としての物語を紡いでいくのって、ものすごいしんどいことだと思うので。
長いと大変だよねぇ。
でも続きがすごい楽しみ。
早く読みたい。
『ガンダムA』買えば連載してるけど……単行本になるまで待ちます。3巻、今月末に出るらしいし。

それにしても。
Amazonの書評にも色々な人が書いていたけど、この作品が「コミックス」扱いなのはどーなんでしょうか。
「角川文庫」とかじゃなくて「コミックA」として出てて、コミックスの棚に置いてあるんだよ。
小説なのに。
ものすごくしっかりした文学なのに。

ガンダムファンの目にしか触れないのはもったいないよなぁ。