『赤と黒』の時に書いたけれども、かねてからものすごーく気になっていた古典新訳文庫版の『カラマーゾフの兄弟』を読み始めた。
もうすぐ第2巻が終わる。

感想を書く前に、以前読んだ時の話を少し。

私が大学生の時に『カラマーゾフの兄弟』を読んだのは、これも前にお話した通り、宝塚で上演されたからである。
トルストイの名作『戦争と平和』でも主人公を演じた日向薫さんが、今度はバウホール公演で『カラマーゾフ』をやったのだった。

と言っても、お芝居のタイトルは『シチリアの風』となっていて、だいぶアレンジがされている。
そもそもロシアとシチリアじゃあ全然違うだろう、と思うものね。
原作では兄弟の末の弟アリョーシャが主人公なのだけど、舞台では長兄ドミートリーが主人公。場所が「シチリア」なので、名前もドミートリーではない。
グルーシェニカにあたるヒロインを毬藻えりちゃんがやっていて、とても素晴らしかった。話の筋は全然覚えてないのだけど、男を手玉に取るようないわゆる「はすっぱな悪女」のえりちゃんがとっても魅力的だった。
宝塚だから「はすっぱ」といったって下品じゃないし、「押しの強さ」がいきいきと美しくキュートなのだ。

主人公の記憶は……あまりない(笑)。
ごめんなさい、日向さん。同じ名前なのに(爆)。
っていうか、私、ネッシーさん(日向薫さんのニックネーム)好きだったので、しっかり見てたはずなんですけど、ストーリーがあんまり思い出せない。
原作が原作だけに、まぁあまりわかりよいストーリーではなく、かなり実験的な雰囲気の作品だったような……。

次兄イワンに当たる役を夏美ようさんがやっていたような気がするけど、もしかしたら違うかもしれない。
三男は神田智。
この舞台は主役以外はオーディションで決めたということで、まだ研1、入団したばかりの嘉月絵理ちゃんが女役で出ていたと記憶している(彼女は本来男役)。「え、めっちゃうまいやん」と思ったことを覚えているが、実は全然違う人やったりして……(笑)。

舞台を見る前に原作を読んじゃったのか、見てから読んだのか、それも覚えていないけど、とにかく新潮文庫版の『カラマーゾフの兄弟』全3巻を読んだのは確かである。
今でもちゃんと本棚にある。

トルストイの『戦争と平和』の方はすごく面白くて、就職活動の時に「好きな本は『戦争と平和』」などと偉そうに言っていたぐらいなのだけど、『カラマーゾフ』の方はたぶんあんまりよくわからなかった。
その後『悪霊』に手を出しているところを見ると、それなりに楽しんで、「もう一つドストエフスキーを読んでみよう」と思うぐらいには面白かったんだろうと思うけれども。
(正直『悪霊』は全然わからなかった。なので『罪と罰』は読まずじまい)

20年経って、『カラマーゾフ』でちゃんと覚えているのは「大審問官」のところだけである。
次兄イワンが弟のアリョーシャに語る物語詩「大審問官」。地上に現れたキリストの再来を老審問官が「異端者」として裁こうとするお話。
その、自作の物語詩を話す前にイワンが幼児虐待について述べる部分、「反逆」と題された章だけにいたく感動して、それ以外の部分は「大まかなあらすじ」しか覚えていない。

昨日、ちょうどその部分を古典新訳文庫版で読んだ。
やっぱり「ここはとても共感できる」だった。
1巻目の前半は少し読み進むのに苦労したけれど、後半からがぜん面白くなってきて、2巻目も「反逆」と「大審問官」があるというのでわくわくしながら読み進んでいる。
本当に「それ以外の部分」っていうのを覚えていなかったので、非常に新鮮(笑)。
「へ〜。こんな場面あったんだ」みたいな。
「大審問官」以外のところもなかなかに面白い。

詳しい感想はまた後日。