サイバーで難しげな設定からは意外なほど「ほろっとさせられる人情モノ」アニメ、『RD潜脳調査室』

日本テレビではもう最終回まで放映されちゃったみたいだけど、よみうりテレビではまさに今が佳境。

ハルさんとミナモの「愛があれば年の差なんて!」という関係も良いのだが、なんといっても「愛があれば機械と人間の差なんて!」というソウタとホロンの関係から目が離せない。

ソウタはヒロイン・ミナモのお兄ちゃん。料理もうまいが趣味は格闘。22歳男子。

ホロンは介助機能と秘書機能をインプットされたアンドロイド。セクシーボディの美形女子。

この二人が、恋に落ちている。

ホロンをはじめとする「女性型アンドロイド」は「書記長」と呼ばれる実力者の美人のおばさんをモデルに作られていて、ソウタはなぜかそのおばさんとデキていた。

おばさんとソウタができていると知った時は「ぎょえー!」とものすごく驚いた。

ソウタ、趣味ワル~。

ってゆーか、一体どーゆー経緯でそんなことに……。

おばさんと付き合いながらも、ソウタはだんだんホロンを「女性」として意識し始める。

格闘フェチのソウタは、アンドロイドゆえの戦闘能力を備えたホロンと格闘の練習をする。

ホロンを取り巻くミナモやハルさんも彼女を「人間」として扱っているので、ホロンには他のアンドロイドにはない「自我」のようなものが芽生え、ホロン自身もソウタに対して特別な「感情」を抱いているように見え始める。

第16話で、戦闘力を強化された自分と同じ顔のアンドロイドにずだぼろにされ、ソウタもやられっぱなしで危機一髪の時に、ホロンは叫ぶ。

「ソウタさんっ!」

良かったな、あのシーン。

涙も流れてたよね、確か。

ソウタと付き合ってるおばさんが、「しょせんあの子は機械よ。感情があるように見えても、すべてはプログラムにすぎない」みたいなことを言った後の、ホロンの「本物の感情」。

そして21話になると、ホロンは自分でソウタに靴を買ってプレゼントするのよねぇ。

ソウタはソウタで「infinity」と刻まれたペアブレスレット用意してるし。

ちゃんとおばさんにも別れを告げに行くし。

自分をモデルにしたアンドロイドに「若いつばめ」を奪われてしまうおばさんも、気の毒っちゃ気の毒なんだが。

「あなたもいずれ老いる。でもあの子は年を取らない。私ならあなたと一緒に時を重ねられるわ」と言っても、「でも俺は今、あいつといたいんだ!」と言い返されて……。

めでたく人間とアンドロイドの恋は成就したかと思いきや!

ホロンちゃん、初期化。

うわ~~~~~~~っ。

「バックアップは3か月前のデータしかありません」。

3か月前って、ソウタとはまだそんなに付き合ってないんだっけ? あの話、始まってからどれだけ過ぎたことになってんだろ。

でも、まぁ、人間の恋人同士だって、どっちかが記憶喪失になることはあるわけで、「人工知能の初期化」である以上、喪われた時を「思い出す」ことは二度とないとはいえ、同じように接していれば、再びホロンに「自我」が芽生え、ソウタに特別な感情を抱くこともないとは言えない。

がんばれ、ソウタ。

ってゆーか、結局「人間」と「機械」の差はどこにあるかってことなんよね、これ。

『RD』の中では、「義体」と言って、肉体の一部(または全部)を人工のものにする技術が完成していて、ソウタの上司である久島さんなんか、本来の彼の肉体は「脳」だけで、あとは全部「義体」。なので全然年を取らない。

本当は82歳なのに、見た目はせいぜい40代。

この久島さんの「脳」が奪われて、初期化されそうになっているところを救おうとして、身代わりにホロンが初期化されてしまったわけだが。

久島さんとホロンの違いは「脳」が人工のものか、生物由来のものか、ってことでしかない。

久島さんの脳は人間の手で「プログラミング」されたものではないけれど、脳のシステムそれ自体は「プログラム」のようなもので、そこに「心」や「意識」がなぜ生まれるのか、ってことはまだよくわからない。

人が作った「プログラム」にだって、「心」が芽生えるかもしれない。

もしも「心」こそが人間なら(じゃないと久島さんはもう「人間」じゃないことになる)、「心」を持ってしまったアンドロイドは「人間」で、アンドロイドと人間が恋に落ちたって何の不思議もない。

ホロンって、いい女なんよね。

「プログラム」だから不必要なことはしないし、冷静だし、控えめで、それでいてちゃんと「人の役に立つ」っていうこともインプットされてるから、一見親切で優しくて、人間の女みたいにいちいちヒステリー起こしたりしない。

久島さんを助けに行く時のソウタとホロンを見てると、控えめでありながら有能なホロンの「女っぷり」がよくわかる。

ソウタが惚れるのも無理ないよなぁ。

「自分が初期化される可能性」をホロンはちゃんと知ってただろうと思うし。

知っていて、でもにこっと微笑んで、「よろしくお願いします」とソウタに後を託す。

ええ女や~~~~~。

アンドロイドを描くことは、「どこからが人間なのか? “人間”を定義するものは何か?」を描くことになる。

清水玲子さんのジャック&エレナのシリーズとか、樹なつみさんの『OZ』の19(ナインティーン)とか……。好きやな、このテーマ。

あと4話、ソウタとホロンはハッピーエンドになるのかしら。

幸せになってほしい。