今日も雪。

起きた時にはもう雪景色だったけど、さらにその上にしんしんと降り積もっていく。

「しんしんと」って表現を最初に考えた人、すごいよね。

雪って音を吸収するから、ほんとにこう、「しんしんと」だよなぁ、って窓の外を見ててしみじみと思った。

それに。

照明の加減もあってか、外の景色がほんのりと「青く」見えて。

ああ、「青って灰色のことなんだよな」って、これまたしみじみと思った。

日本語の「あお」って、昔は「灰色」を指す言葉だったって聞いたことがあって。

日本の空は「青灰色」だから。

空の色が「あお」なら、「灰色」も「あお」になる。

「あおうま」には「白馬」という表記もあるんだよね。「白馬の節会」という宮中行事があって、発音は「あおうま」なんだけど、「白い馬」なの。

日本語の「あお」は、英語の「blue」とは違う色。

たとえばエーゲ海の、濃い青空と濃い海原の写真を見て、「なんてきれいな青だろう」と思うけど、でも日本のぼーっとした、灰色がかった水色の空も、私は大好きだ。

「色」は土地に根ざし、土地にはぐくまれる。

明治の洋画家達が、油絵で日本の風景を描こうとして苦労したのが、なんとなくわかる。

よその土地ではぐくまれた色で、日本の風土を描くことの違和感。

それは技術の問題ではないんだ。

きっと、同じ雪でも、日本に降る雪と、スイスに降る雪の色は違うだろう。


今日、私は出かける予定がない。

温かい部屋の中から、のんきに外を見て、「きれいだな」と思う。

幸せだなと―――。