昨日、やっと行ってきました!

美術館「えき」KYOTOで開催中の「四大浮世絵師展~写楽・歌麿・北斎・広重~」。

いやぁ、めっちゃ良かったです。

土曜日なんで混んでるかな、と思ったけど、びっくりするほどではなく、じっくりたっぷり楽しめました。「まだあるの?」って思うぐらい、作品数多かったもん。これが全部個人のコレクションなのかと思うと、なんぼほど金持ちやねん!

いや、ほんまにね。

この間「葛飾北斎展」に行ったばかりなので、やはり注目は写楽だったんだけど。

なんか私、最初から「これ、版はどうなってるの!?」って、そっちの方が気になっちゃって。

着物の柄がすごい細かくて、型押しに見えるところとか、どういうふうに刷ってるのかなぁ、って。彫り師の職人さん、すごすぎる!

だって、「蚊帳」を透かした人物画とかあるんだよ。すごい細い線でさぁ、色だって、「蚊帳がかぶってる部分」とそうじゃない部分じゃ変わるし、上から「蚊帳」の版を載せればちゃんとなるんだろうか、それにしたって……と色々考えてしまう。

うちの夫も、「これ、着物の柄は彫り師の方が考えてたんじゃないの? 下絵の段階で細かく決めてたらかえって彫るの大変やん」って言ってたもん。

夫婦ともに「絵」そのものより版下に興味がある……。

浮世絵って、やっぱり「版画」だったからこその「美」だと思うのよねぇ。浮世絵師の肉筆画には実はそんなにいいものがない、って「ひらがな日本美術史」に書いてあったと思うけど、「筆のタッチ」がない、「版画の線」だからこその表現があの「美」を生み出したのだと。

版画なのに、「ぼかし」とか「シルエット」とかちゃんとあるし、「よくもまぁこれだけ高い技術があるもんだ」と思って感心してしまう。

しかもこれが「大衆向け」の娯楽だからな。

当時、世界中であれだけの文化水準を誇った「大衆」は、絶対日本にしかいなかったと思うぞ。

どうしてこれが廃れちゃったかな、と思うよね。

まぁ、マンガとかアニメとか、サブカルチャーの方がすごい、っていうのは今でも続いていることかもしれないけど。「輪郭線による大量生産の絵」っていう意味では、「マンガの絵」って「浮世絵の絵」に近いと思うし。

で。

今回、自分でも意外なことに、「歌麿」に惹かれた。

美人画で有名な歌麿。今回の作品も、ほとんど美人画。

でもなんか、北斎が富士山に芝居をさせたように、やっぱり歌麿も美人に芝居をさせているというか、シチュエーションを色々自分で作って描いてるところが面白いなぁ、と思った。

写楽は「役者絵」で、一応実際に上演された芝居から題材をとって、「状況設定」も芝居に拠っている。

でも歌麿は、実際に「美人」のモデルがいたとしても、その描き方には色々趣向を凝らして、「ただきれいな人がいたからその人の美しさを絵にしてみました」じゃない描き方をしている(ように思う)。

「写真」じゃないっていうか。

当たり前やけど。

日本の美術って、「デザインの妙」だというのが「ひらがな日本美術史」に出てきて、それっていうのはやっぱり、「ただ目の前にあるものをその通り描くんじゃない」っていうことでしょう?

写楽のデフォルメにしてもそうなんだけど。

歌麿は、普通の「美人画」から、「海女」だの「山姥と金太郎」だのというものへ進んで、だんだん「リアルになっていった」とかいう説明が書いてあった。

その辺にいる遊女とか町娘を描くより、いるんだかいないんだかわからない「山姥」を描く方が「リアル」だっていうのも、なんか不思議な話だけど。

普通の遊女を描く「描き方」にはもう決まりがあるから、そうじゃないものを描こうとしたら「海女」とかになるのかな。

「山姥と金太郎」っていうのが、子どもの金太郎が山姥の乳を吸ってる絵なんだけどさ。

取り締まりが厳しくなって、エロチックな絵が描きにくくなったから、「ほほえましい母子像」にして取り締まりを逃れたとかなんとか。

金太郎のお母さんって、山姥だったんだ……。

っていうか、あの絵を見て「ほほえましい母子像」って思うかなぁ。

なんか、ドキドキしちゃうけどなぁ(笑)。

歌麿の春画、「ひらがな日本美術史」で見たけど、あまりにもそのものずばりすぎて、逆にドキドキしないんだよね。グロいだけ、っていうか。

「山姥と金太郎」の方が、よほど艶めかしい。

「ひらがな日本美術史」の中で、「やってる最中の男の目がむちゃくちゃ醒めている絵」が紹介されてて、橋本さんが「歌麿はそーゆー“リアル”をわかる人間だった」みたいなことを書いてらっしゃった。

うん、この人好きだな、って思ったよ。実物を見て。(もちろん春画は展示されてないよ! 見たかったら本を探しましょうね(笑))。

あと、「広重」の「五十三次」じゃない作品が面白かった。

広重の「五十三次」は、「別に変な芝居をしなくても、日常だって十分絵になる」ということを発見・実現してしまった「風景画」だけれども、私は「芝居しまくり」な北斎のスペクタクルな「富嶽三十六景」の方が好きなの。

でも広重にも武者絵とかあって、「清盛怪異を見る図」(だったかな?)なんて、すごい面白かった。

画面の右半分が極彩色のお屋敷と清盛(と、もう一人誰かいたような)。

左半分が、白黒の雪の庭。

その、庭に積もった雪のいちいちが「どくろ」になってるの!

うわぁ、広重ってこんなのも描くんだぁ!

「雪がどくろになってる」っていうのは、別に広重が考えたモチーフではないのかもしれないけど、右と左の画面の対比も面白くて、「こーゆーのも描けるんだ」と思った。

それから。

「写楽のそっくりさん」というコーナーで、同時期に似た感じの大首絵を描いていた人達の絵がいくつか並んでいたんだけれど。

「夭逝の天才画家」と紹介されていた歌川国政って人の「桜丸」、良かったなぁ。

「これ欲しい!」って思った。

なんか、ダイナミックなのにすっきりと美しくて、題材が「桜丸」だったせいもあって、「女の子ウケするきれいなイラスト」みたいな。

もしあの中でどれか一枚くれるって言われたらあれが欲しい。

くれへんやろな(笑)。


実は昨日、夫は昼から出勤、息子も2時半からスイミングスクールというめちゃくちゃ厳しいスケジュールで、せっかく京都まで行ったのに、「浮世絵展」だけ見てとんぼ帰り。

慌ただしくて疲れたけど、でもがんばって行って良かったわん♪