(ネタバレ大ありです。これから観に行かれる方で、結末を知りたくない方はご覧にならないでくださいね)

昨日、観に行ってきました。

トウコちゃん(安蘭けい)のサヨナラ公演。

昔は好きなスターさんのサヨナラと言ったら、3回ぐらいは観に行ったものですが。

今は滋賀住まい。お金もないし、そんなに行けるわけもなく。

昨日が、トウコちゃんの見納めでした。ううう。

なんか、それだけでも感無量になるんだけど、お芝居の方がなんかすごく私のツボにはまっちゃって、ボロボロに泣いてました。

一緒に見てた母は全然泣いてなかったのに(笑)。

私、『ベルばら』で大泣きできる人ですし、感情移入が激しいんで、「一体この作品のどこで泣くんだ!?」というような作品でも、一人で泣いてます。

でも、良かったんですよ、『愛する我が街』。

別に大作でもないし、「すごい盛り上がるお話」ってわけでもなく、地味な作品だと思うんだけど、しみじみと、心に沁みてくるっていうのかな。

1920年前後のアメリカ。トウコちゃん扮する主人公のジョイは黒人と白人との間に生まれた混血児で、幼なじみとバンドを組む歌手。

遠野あすかちゃん扮するヒロイン・ルルも混血の女性で、家族を養うためにその界隈を取り仕切るフランス人実力者の愛人になっている。

少年の頃、ジョイはルルを助けたことがあって、2人は互いに相手のことをずっと気にしながら生きてきた。

10年後に再会して、強く惹かれ合って、でもルルは、家族のために「愛人」をやめることができない。どんなにジョイを愛していても、その自分の想いに正直になることができない。

ジョイの胸に飛び込むことは、家族を路頭に迷わすことだから。

街の実力者であるフランス人には、ジョイのバンドから仕事を取り上げることだって簡単にできて。

「私みたいな女と関わったら不幸になる」

トウコちゃんはもちろんすごく良かったけど、今回このあすかちゃんの「耐える大人のヒロイン」像もすごく良かったな。

このトップコンビだからこそできる、「大人のお話」で、いちいちの台詞が、心に沁みるの。

「ひとかけのパンと小さな靴、それだけが望みだった少女に、どうして“愛”なんてものがわかるの?」とか。

「生きててよかったって、どんな感じかしら」

「死ぬのは怖くない。自分の生きた意味がわからないまま死んでいくのが怖いの」

結局ルルはジョイのもとを去る決心をして、でも「別れ」は告げられないまま、「ちょっと出かけてくるだけ」と部屋を後にする。

この時のルルの気持ちを思っただけで……ボロ泣きや。

そんで、弟のレニーに「代わりに伝えてきて」って伝言を頼むんだけど、レニーは「姉ちゃんは僕だけのもの」と思ってる超シスコン野郎なので、「姉ちゃんはおまえのことなんか愛してなかった。ただの遊びさ!」とジョイに嘘を言う。

でもジョイは「俺は本気だった」って答える。「あんたはそれでいいのか?」ってレニーに問われて、「俺が勝手に惚れた。惚れちまったんだ」

ああ、泣けるわ……。

こーゆー気障なセリフも、宝塚ならではでしょ。

宝石の代わりに「君の歌だ」ってラブソングを贈って許されるのは、宝塚の男役とGacktさんぐらいなものよ(笑)。

一緒に過ごせた時間は短くて、ともに生きることはできなかった二人。

でも、「そばにいる」だけがハッピーエンドじゃない。

二人が互いを想いあって、その想いを支えに生きてきた、これからも生きていくだろうっていう、そういう「大人の愛」。

♪たとえ二人が どんなに遠くなってもいいさ~
 僕は待っているから♪ (by Gackt『君が待っているから』)

ジョイとルルの二人の想いにも泣けたし、黒人や混血だからという理由で虐げられる仲間達の話にも泣けるの。

ジョイのバンド仲間の黒人の男の子が、奥さんを守るために白人を脅して、そして射殺されてしまうんだけど……。

その後の、教会での歌のシーン。

「神様はもっとも弱い者のそばにいて下さる」という牧師の言葉が、私には白々しく聞こえて。

神様はなぜ彼らに苦難を与えるのか。なぜ、彼らを“救って”はくれないのか。

『百億の昼と千億の夜』読んでる最中でもあるし、「神様なんて」と思いながら、やっぱり「祈りの歌」にぐっと来てしまう。

ジョイが「音楽で見返してやる!」って決意する場面でもあるし。

ここ、トウコちゃんもほんとに泣いてるように見えたもん。

さっと涙をぬぐう仕草。

双眼鏡で見たら、ほんとに涙で濡れてるように見えた、瞳と頬。

「音楽には肌の色も国籍も関係ない。俺には音楽がある!」

抜群の歌唱力を誇るトウコちゃんのサヨナラならではの、演目です。だからよけい、泣けちゃう……。

ニューヨークで歌手として成功して、故郷の街に錦を飾るジョイ。

「♪時は流れ すべては想い出に変わり 愛しい日々遠ざかっても
 My Home ここが故郷 My dear NewOrleans♪」

千秋楽では、「My dear 宝塚♪」って歌うんちゃうかな。こんな歌歌われたら、泣くって、もう!

ジョイのお母さん役のジュンコさん(英真なおき)がまた、「おまえはこの町の誇りだよっ!」って叫ぶし。

ジュンコさん、前はトウコちゃんのお父さんだったよね。お父さんもお母さんも、ジュンコさんなんや(笑)。

ジュンコさんがまたさすがのうまさで、最初のクレオールシンガーでの登場も、わずか数小節の歌なのに「ガツーン!」と来るし、お母さん役も素敵でね。

ジュンコさんって、私が足繁く宝塚に通っていた頃からずっと星組で、あの頃の「我が青春の星組」を今に伝えてくれる最後の生き残りみたいな人で……。

ジュンコさんが舞台にいてくれるだけで、私は嬉しくなる。

そして、どれだけのスターさんをこうして見送ってきたのだろうと思うと……せつなくなる。

もともと雪組だったトウコちゃんだけど、星組に来てからも、もう9年?

そんなになるんだな。

なんだか……ああ、もうなんだかホントに、とうとう『我が青春の宝塚』が終わってしまう気がする! 一番通いつめていた頃からずっと見てきたスターさんが、とうとう、みんな宝塚を去ってしまう!!!

もう、組長さんと専科さんしか、残ってない。

ぐっすん。

……ショーのことは、また明日……。