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CSで放送されていた『聖戦士ダンバイン』。録画してほぼ一週間遅れで見ていたんだけど。

やっと、やっと見終わったぞぉ!

全49話。昔のテレビシリーズは長いなぁ。

本放送は1983年から1984年にかけて。私は中3ぐらいかな。その後再放送なんか見た記憶がないから、25年ぶりに見たことになる。

地上世界と魂だか精神だかで繋がっている(オーラロードで行き来ができる)異世界バイストン・ウェル、「アの国」「イの国」という一文字国名、オーラバトラー、フェラリオ、主人公の名前はショウで、途中でオーラバトラーが「ハイパー化」する……ということは覚えていたんだけど。

覚えてなかったことがものすごくいっぱいあった。

そもそも私、25年前は最後まで見ていない。

たぶん、途中で「つまんない」と思ってやめてしまったんだと思う。後半の展開にはまったく見覚えがなかった。

25年ぶりに見てみて、「なるほど中学生ぐらいの私には退屈だったんだろうなぁ」と思ったもん。

何しろ展開がゆっくりというか、一進一退というか、1話の間では話が進んでるんだか進んでないんだかよくわからない。もちろん何話か経ていくと事態は確かに進んでいくし、「地上に出ちゃう」という急転直下もあるのだけど、途中はかなりじれったい。

しかも国と国との政治状況や設定が複雑で、しかもしかも決して親切には説明してくれない。「お話」を飲み込み、咀嚼し、楽しむためにはかなりの根気と集中力がいるような気がする。

でもその「じっくりした展開」と「不親切さ」が、40歳の今見るとすごく面白かったんだよね。

前半は、異世界ファンタジーの「国盗り合戦」としてその攻防、戦略が面白かったし、一旦地上に出てしまった時の、「地上人の反応」なんて、めちゃめちゃ面白かった。

バイストン・ウェルの側は自分たちの世界とは違う「地上の世界」があると知っているけど、地上の人間はバイストン・ウェルなんてものの存在を知らない。

だから突如出現したオーラバトラーを「敵」だとしか思えないし(実際オーラバトラーの強力な戦闘能力は核爆弾並の威力で都市を壊滅させてしまう)、もともと地上人であるショウが何を言っても、「宇宙人がショウの体を乗っ取っているのではないか」と考えたりする。

どうしたって主人公側に肩入れして見てるから、「なんでわからへんねん、アホっ!」って思うけど、でも現実にあんなことあったら私だって絶対信じないよなぁ。むしろ、地上からバイストン・ウェルに呼ばれたショウ達がさっさと異世界に適応して「戦士」になっちゃう方が不思議なぐらいだもん。

後半、すべてのオーラマシンが地上に出てきた後は、地上の人間もさすがに「宇宙人の来襲」では済ませられず、共同戦線を張ったりもするようになる。

民間の武器会社か何かの社員がオーラシップに乗り込んで仕事したりね。

ナの国の女王シーラ・ラパーナとエリザベス女王の会見とか。

「政治家には任せておけません。だからあなたに会いに来たのです」みたいなシーラのセリフ、良かったな。

思ったよりずっと地上に出てからの話が長くて、これには色々と商業上の理由もあったみたいなのだけど、地上戦がまた一進一退でなかなかケリがつかないんだよね。

何回作戦失敗してんだ?って感じで(笑)。

でもその戦況の変化の細かさも、なかなかに面白かった。

キャラクター的には私はシーラよりエレの方が好きで、身を挺して黒騎士のハイパー化を阻止したエレの亡骸を抱いてエイブ艦長が特攻をかけるシーンにはうるっと来た。

最終決戦。このエレの死を突破口に戦局は主人公側に有利になるものの、敵も味方も次々と命を落としていく。

敵方の総大将はドレイクというおっちゃんで、そこに地上人でオーラマシンの製作者であるショットの野望とか、クの国の王ビショットとか、黒騎士の個人的なショウへの復讐心とかが絡んでいた。

ずっとドレイクが「悪の元凶」のように言われてて、ドレイクを倒し、強大な力を持つがゆえに人の欲望を刺激するオーラマシンをすべて破壊することがショウやシーラの目的だった。

ああ、それなのにそれなのに。

実はドレイクの奥さんルーザこそが「この戦いを引き起こした者」で、ルーザは自分を断罪しようとした実の娘リムルをあっさり返り討ちにしてしまう。

このリムルのあっけない死に方には、恐れ入ってしまった。

リムルって、お話の最初から「ロミオとジュリエット」のジュリエットとして、あたかもヒロインのように登場して、時に「ロミオ」役ニーのもとにたどり着けたり、また連れ戻されたり、色々ドラマを作ってきていたのに。

「ええっ、そんな容赦のない死に方!?」

……『イデオン』入ってるゾ、と思ったんだ、このリムルの最期で。

最終回、チャム・ファウを除いて敵味方すべて全滅。

……やっぱり『イデオン』や~~~~~。

きっとみんな魂はバイストン・ウェルに帰ったんだろうと思うんだけど、そーゆー描写は一切なく、ただ一人地上に生き残ったチャム・ファウが救出され、「戦艦を抜け出し、そのまま戻らなかった」で終わってしまう。

え゛。

これで終わりなの?

呆気に取られた。

呆然とした。

エンディング見ながら「結局あの戦いは何だったんだ。どーしてみんな死ななきゃならなかったんだ」と登場人物の代わりに憤った。

Wikipediaによると、「転生まで描いちゃうと『イデオン』と同じになっちゃうから描かなかった」らしい。

……やっぱり『イデオン』……。

でも、あの終わり方はあまりにも救いがないってゆーか、唐突ってゆーか。

もちろん、転生したから「救われた」ってもんでもなくて、「生きてるうちに幸せになる」のが本来だと思うよ。

だからこそこの終わり方は強烈に、「強大な力(=武器)は人の欲望と悪意を増幅し、不幸な結果しかもたらさない」ということを示すものでもあるのだろうけれど。

戦争に勝者も敗者もなく、ただ無益な死だけがある、という真実。

オーラマシンという「力」を得てバイストン・ウェルの支配を企んだドレイク。そのドレイクを倒すために、こちらもオーラマシンという「力」を持たなくてはならないのだ、というセリフが確か途中で出てきた。

「力」が「悪」であり、「排除すべきもの」であることはわかっていても、その「悪」を排除するために、こちらも「力」を持たなければならない……。

「殺し合うのが正義ではない」というオープニングの歌詞。シーラもエレもわかっているから、自分達の「力=悪=オーラマシン」もろともの討ち死に。

その「どっちも滅びるしかない」という最後を地上の軍人達は目の当たりにして、テレビ中継で世界中の人間が見て……そして、地上人は何かを学べたんだろうか?

我が身を振り返っただろうか。


さすが富野さんと言ってしまえばそれまでだけど……すごいお話だなぁ。

今回ちゃんと最後までじっくり見られて、良かったです。