おととい、息子ちゃんがまた川原泉さんのマンガを読み返していた。

うちの息子ちゃんは4歳にして『るろうに剣心』を読破した強者であり、小学校3年ぐらいで『のだめカンタービレ』や『彼方から(ひかわきょうこ)』、『修道士ファルコ(青池保子)』など少女マンガも普通に読んでいた。

最近では『百億の昼と千億の夜(萩尾望都)』、『ダークグリーン』&『ディープグリーン』(佐々木淳子)も読破。昨秋、新型インフルエンザにかかった際、自宅待機であんまり暇そうだったので、「これも面白いよ」と川原泉さんを差し出したらば、予想通り大受け。

文庫版の『空の食欲魔人』『甲子園の空に笑え』『美貌の果実』、そして『メイプル戦記』をあっという間に読破。

何度も読み返している。

おとといまた読み返していたので、本棚に配架していなかった(入らないから)ジェッツコミックス版『ブレーメンⅡ』を引っ張り出してきて、「どうぞ♪」とご紹介。

もちろんあっという間に全5巻読了。

くすくす笑いながらいかにも楽しそうに読んでいるので、ついうっかり私も1巻を手にとってしまった。…読み始めたら止まらない。5巻全部読むまでやめられない。

いやぁ、ほんとに面白いなぁ。楽しいなぁ。何度読んでも、わかっていても、やっぱり泣いてしまうし。

食欲魔人シリーズの一つ、『アンドロイドはミスティ・ブルーの夢を見るか?』に登場した宇宙飛行士キラと、その雇い主たる社長ナッシュ、そして「ブレーメン」と呼ばれる「働く動物たち」を乗せた貨物宇宙船「ブレーメンⅡ」の旅を描くこの作品。

ほのぼのと楽しい一方で、泣かせてくれるんだなぁ。

遺伝子操作だかなんだかで、もとの動物の特長はそのままに、人間並の知性を持った「働く動物たち」。いくら優秀でも、やっぱり人間の側には「所詮動物じゃないか」という偏見、差別意識があり、なかなかその仕事を認めてもらえなかったり、「動物はお断り」とレストランその他で入店拒否されたり。

「ブレーメンⅡ」の船長を任されたキラでさえ、最初は「動物たちが操縦する宇宙船がほんとに飛んでるよ、おい」と不安に駆られている。

何しろ人間はキラとナッシュだけ。副長はマウンテン・ゴリラ、航宙図士はウサギ、航宙士は黒ヒョウ、甲板員はカエルという具合。マンガだからまぁみんな可愛いけど、リアルに人間大のカエルがセーラー服着てにこにこしゃべってると考えるとけっこう怖い(笑)。

素直で正直で勤勉で優秀な彼らの言動に触れ、すぐにキラは彼らを信頼し、「仲間」として「部下」として受け容れる。そして彼らが入店拒否された日には烈火の如く怒り出す。

最後の5巻に、キラが「でも、私も人のことは言えないんだ」と出航の日のことを反省するシーンがある。へこむキラにナッシュが「偏見や先入観をまったく持たない人間などいないよ。肝心なのはそれを自覚しているかどうかだ」と言う。

いいこと言うなぁ、ナッシュくん。

最後のエピソードでは、それまでに出逢った色々な人々の尽力で、ブレーメン達の自由と権利が法律で保証される。

みんないい人すぎるな~、とか、そんなにうまいこといくもんかい、とついツッコミを入れたくなってしまうけど、でもそーゆー自分自身の「先入観」が、良くないんだよな、と思ったり。

「働く動物」という「極端な存在」が、川原さん独特の可愛らしさとユーモアを持って描かれているけど、これって「異質なものをどう受け容れるか」という、とっても普遍的なテーマだと思う。

ブレーメンの英雄、シベリアン・タイガーのシャキールさんと人間の相棒さんの話とか、ホントにしみるのよね。

一方で、謎の火星人リトル・グレイの傍若無人ぶり(笑)、時々入るチネチッタ星人のお話など、小学5年生男子の笑いのツボを刺激する要素も多数。

チネチッタ星人の名前、全部スナック菓子の名前やもんなー。

むしろ小学生男子にこそ受けそう(笑)。


今朝も息子がその辺にほったらかしていた『メイプル戦記』の3巻をうっかり読んでしまい、うっかり『葡萄月の反動』で泣いてしまった。

ああ、川原泉さんの新作が読みたい。