『エロイカ』もついに35周年。私が初めて読んだのは中学生の時ですが……いやぁ、35周年か。続いてくれてホントにありがたい。置き場所確保は大変だけど、35年で39巻だから、週刊誌連載のやつなんかに比べれば全然巻数は少ないですね。途中中断もあったし。

『やじきた』が中断しても昭和のまま時間軸が地続きで、主人公達が年を取らないのに比べ、『エロイカ』ではちゃんとベルリンの壁が崩壊し、ソ連がロシアになり。

伯爵や少佐が初登場時からどれくらい年を取っているのかは謎なのですが。

Aくん以下部下達も、部長も、異動すらしてませんものね(笑)。新人だったZくんの後には新人が入ってこない。

最初25歳くらいとして35年ちゃんと年を取ったらもう還暦になっちゃうから、舞台背景としては時間が経っていても、登場人物は年取らない、ってパターンがいいですよね、やっぱり。

そこがマンガ(二次元)のいいところでもある。

いくら『あぶない刑事』が好きで、舘さんや柴田さんが今でも十二分に格好良くても、今「続き」を作るとしたらどうしたって昔のままではいられないもの……。

二つ入ってる番外編のうちの一つは伯爵のお話、ロンドンが舞台で、今年の「ダイヤモンド・ジュビリー」や「オリンピック」の話題がしっかり出てくる。

つまり伯爵がいるのはまごうかたなき2012年のロンドンなのよねぇ。

ケータイが出て来なくてお店で電話を借りる『やじきた』と違って、この39巻で完結する「聖ヨハネの帰還」ではスマートフォンが大活躍。一般市民が書き込む情報がNATOやロシア情報部(あれ、ミーシャ達のいる組織って今なんて呼ばれてるんでしたっけ)のそれよりも迅速で有用だったり。

この辺の「時代」の取り込み方は青池さん、ほんと巧いなと思います。

象牙トリプティックとか「デイシス」とか、いつもながら美術品の知識もすごいですし、ヨーロッパから中東に及ぶ地理・歴史……どれだけ膨大な資料を読み込んでいらっしゃるのだろう、と。

美術品泥棒と情報部の将校が主役なんですものねぇ。よく35年もお話を考えそれを実際に「マンガ」に落とし込めるものですよねぇ。

青池先生ほんとすごい。

番外編2つも楽しく面白く。

特に伯爵のご先祖にまつわるお話「コッツウォルズの手稿本」が味わい深かったです。伯爵に泥棒の手ほどきをしたあのおじさまが久々に登場。「あしながおじさん」、言い得て妙ですわ、ジェイムズ君。

しかし今どき「貴族」やっていくのも大変だな、と思いました。お城持ってるなんて素敵だけど、「固定資産税」払うだけでもねぇ。伯爵って本編中ではいつも結局狙った品を手に入れられなかったり、入手できても旅費その他支出もかなりのものだと思われるし、そもそもあの人気に入ったものは売らずに愛でるんだろうから……。

「税金を払うためだけに不本意な仕事を続ければ魂も腕も荒んでしまう」という伯爵の亡き父の願い。

それを支えているのが「あしながおじさん」とドケチのジェイムズ君なわけですよね(笑)。

あと、貴族である伯爵が「アッパーな英語をしゃべっている」というくだりでふと思ったのですが。

伯爵は英語、少佐はドイツ語、ミーシャはロシア語でしゃべっているんですよねぇ、きっと。別に3人とも数カ国語普通に操れるんだろうから、相手に合わせたりはしないのでしょう。

道端で強面のハゲと長髪ドイツ人がロシア語とドイツ語で怒鳴り合っている光景をギリシャとかで目撃するわけですよね。怖いな~(笑)。

来月には35周年メモリアルブックも刊行される『エロイカより愛をこめて』。末永く続いてほしいです♪