数ある公式企業アカウントの中でもダントツの人気を誇る@NHK_PRさんのご本です。

今これを書いている時点でフォロワーが49,3025人。49万3千人!!!

いやー、すごいですね、ホント。日本のtwitter人口って何人ですか?ほとんどの人がフォローしてるんじゃないの???

と、ググってみたら日本のTwitterアカウント数は2990万とか。でもbotや放置アカウントもあるし、一人で複数アカウント持ってる方もいらっしゃいますしね。PRさんのフォロワーがとんでもなく多いことは間違いありません。

ちなみに2010年度、鳥取県の人口が59万人弱だそうです。

で、その、PRさんのアカウント開設から現在に至る(?)までのエピソードをPR1号さん自ら振り返ったご本がこちら。

予想に違わず面白かったです!

なんていうか、PRさんってほんと、「いいお人柄」なんですよねぇ。

あったかくてユーモアがあって、ちょっとトボけた感じだけど1本芯が通っていて。

日々のツイートからもそれは伺えますけど、こうして1冊の本としてまとまった散文ではさらにそのお人柄がしのばれます。実に心地のいい語り口。なんか読んでると幸せな気分になっちゃいます。

読んでると……PRさんって、女性だったんだな、って……。

いや、中の人はいないので、アカウントに性別があるのかってことになっちゃうんですけど、でもこの語り口、女性ですよね???

なんか、男性だと思ってたというか、「女性だとは思わなかった」というか、そういえば「性別」を気にしたことなかったのかな、という。

この本を読む限り、PRさんはすごくお茶目で可愛くて素敵な女性、という感じがする。

ツイート拝見しててもその頭の回転の速さ、絶妙な切り返し、言葉や顔文字の使い方のセンスにはいつも感心し、「すごいなー、私もこんなふうにつぶやける人になりたいなー」と憧れているのですが。

PRさんったら長い文章もうまい。

ずるいなぁもう、と思っていたら「脚本を書きあげて」というような話が出てきて。

そーか、PRさんは脚本家なのか。NHKの広報ってそーゆーお仕事もするんだ。へぇぇぇぇぇ。

「ユルいけどブレない、一本芯の通ったツイート」で有名なPRさんの、その「揺るぎのなさ」が遺憾なく発揮されたのがあの震災の対応だったと思うんですけど、その時のことを描いた「3.11――地震のこと」のくだり、読んでて泣きそうになりました。

なんか、あの日のことがありありと思い出されてきたっていうのもあるし。

PRさんは、本当に大変だっただろう、すごい経験をされたんだ、って思って。

当時でもフォロワーの数、フォローの数はものすごかったはずで、PRさんのメンション欄には続々と現地からの叫びが押し寄せてくる。

「助けてください!」

「どこへ逃げたらいいんですか?」

そんな悲痛な叫びがあとからあとから……。

東京にいるPRさんには、何も答えることができない。「どうすれば助かるか」をアドバイスできる人なんて、あの時日本のどこにもいなかったでしょう。政府すら詳しい情報がわからずパニックになっていたであろうあの日に、一介のNHK職員に何ができたと言うのでしょう。

それでも、PRさんのメンションには「助けてください」が流れてくる。「二階にも水が入ってきそうです!」って刻々と現地の悲惨が飛び込んでくる。

テレビの画面の中で、怖ろしい勢いで津波に呑み込まれていく田畑を、道路を、車を、あの日私も呆然と見てた。テレビの前で「ダメだよ、もっと遠くへ逃げなきゃ」と走る車に呼びかけても、そんなものは届くはずもない。逆に車の中にいる人の声も、焦りも、もちろん聞こえない。

大災害すぎて現地の情報がなかなか入らない中、あの日もっとも多く「助けて!」という生々しい叫びを聞いてしまったのが、PRさんだったのかもしれない。

その怖ろしさ、その無力感。

想像するに余りある。

それでもPRさんはツイッターに向かい続けて、NHKの放送を個人でネット配信しているアドレスを自分の判断で拡散したり、「こんな時だからこそ日常のユルいツイートを続ける」と覚悟して実行する。

すごいよPRさん。ホントにすごい。

そんなPRさんに対して怒ってくる人ももちろんたくさんいて。

フォロワーの数がとんでもないから、お叱りや誹謗のメンションの数もそりゃあハンパないでしょう。

でもPRさんは譲らない。「不謹慎ならあやまります。でも不寛容とは戦います」

PRさん、カッケー!!!

私なんか「それは違うだろう」と一つメンションが来るだけでも心臓ばくばくするのに……。

PRさんがTwitter始める時に考えたこと、Twitter続けながらさらに考え、確信したこと。

それはTwitterとか企業アカウントどうこうとかいう話を超えて、「人と人との関係」についてもあてはまるような気がして、なるほどなーと思います。

「宣伝と広報の違い」とか「企業は幻想」とか、「Twitterは媒体じゃない」とかいうのも面白い。

ページ番号の横に時々さりげなく顔文字入ってたりね。うぷぷ。

PRさんがすでに万単位のフォロワーを抱えていらっしゃる時に「新しい広告媒体」としてTwitterのプレゼンに来る広告会社のお話なんて、苦笑するしかありません。遅すぎるよ!ちゃんと相手の会社調査してから来いよ!!!

「はじめに」で語られている話もそうだけど、マーケティングとか商売的な分析とかにTwitterは馴染まないですね。どんな戦略を考えても、結局「キーボードを叩く人の個性」が如実に出てしまうのがTwitterというツールで、その出来不出来はどんな人が担当者になるかに大きく左右される。一口に「ユルいツイートがウケる」と言ったって、そうそう狙ってつぶやけるものじゃないですもん。

NHK_PR垢を始めてくれたのがPR1号さんでホント良かったと思う一方、この先1号さんが異動したり退職したらどうなるんだろうという危惧も。

「2号先輩登場!」のくだりで、1号さんも「担当者が変わってもうまく公式垢を引き継いでいくにはどうしたら」ということを考えていらっしゃる。

1号さんも、生涯NHK_PRでつぶやき続けるってわけにはいかないものね。もちろんファンとしては、なるべく長く1号さんでいてほしいけれど。


あと、文中に出てくるNHKのインターネット統括担当のKさんがすごく気になる! おまえは『永遠のジャック&ベティ』か!と突っ込みたくなる翻訳文口調。ぜひ実物にお目にかかってみたい(笑)。

「最後に」のところに「文中の人物は必ずしも実在しません」というふうに断られてはいるけど、いや、でも、きっとKさんは本当にいると……NHKにはこーゆー面白い人がいっぱいいるんだと……勝手に想像してます。うぷぷ。