2013年7月2日火曜日

『盗まれた細菌』他/H・G・ウェルズ



偕成社のルパン本は持ち運ぶにはかさばるので、電車の中で読む用に文庫本を、と思って借りたんですが、ルパン本をあっという間に読んでしまったため、電車に乗る予定の日(通勤してるわけじゃないのでたまのお出かけしか乗りません)よりずっと早く読んでしまいました。

借りた意味がない(笑)。

いや、まぁ、読んだから意味はあるけど。

特にウェルズに興味があったわけではなく、ちょうどいい薄さだったから借りたんですが、まずまず楽しめました。

『タイムマシン』『宇宙戦争』などで有名なウェルズの、短編集です。

1894年から1910年までに発表された11の短編と、マックス・ビアボウムという人がウェルズのパロディとして発表した短編が収められています。

表題作の『盗まれた細菌』が一番古くて1894年作。

この頃、「バイオテロ」という言葉はもうあったのでしょうか? 細菌学者のもとを訪れた無政府主義者がコレラ菌を盗んで大騒ぎ…という内容ですが、まさかこれ読んで「そーか!」とテロリストの皆さんがバイオテロを企てるようになったとかそんなことは…。

でもこれ、盗んでいく無政府主義者より、盗まれる細菌学者さんの方がちょっとアブナいというか。

『行け、産めよ殖やせよ、水槽に満てよ』そうすると、死が――謎めいた原因不明の死、迅速なおそろしい死、苦痛と恥辱に満ちた死が――この街に放たれ、犠牲者をもとめて徘徊するんです。 (P12)

などと嬉しそうに説明するんだもん。無政府主義者じゃなくてもちょっと盗んで撒いてみたくなるよね(おい)。

続く『奇妙な蘭の花が咲く』はいわゆる怪奇植物もの。「これってきっとヤバい花だよね?」と読者に予感させつつ進むその筆致が巧い。なんだかわからないものは育てない方が無難ですねぇ。

あと『劇評家悲話』が面白かった。

芝居なんか見たこともなかった主人公が上司に命じられて劇評家に。毎日のように劇場に通ううちに主人公は役者のような大仰な身振り手振りセリフ回ししかできなくなり…。

私は日を追うごとに「演劇的」になってゆく。しかも、演劇的な振舞いの途轍もない愚かさを、私ほど痛切に感じている人間はいないのだ。 (P141)

日常生活でも舞台にいるかのように振る舞うと彼女に振られるんだ……そりゃそうか……。

『初めての飛行機』と『小さな母、メルダーベルクに登る』はお話がつながってるんだけど、なんというか、この「小さなお母さん」、大変な息子を持ってしまったなぁ、と同情。

わたしは母を安心させるために、教習を受けたと言った――親に心配をかけないために嘘の一つもつかなくては、孝行息子とはいえない。 (P184)

操縦習ったこともないのに飛行機買って、あげく町をめちゃくちゃにして賠償金で首を回らなくさせるとか、全然孝行息子じゃないと思うんだ…。

まぁ、町がめちゃめちゃになったのは彼のせいだけじゃないんだけど、結局町にいられなくなってイタリアに逃げて、またそこでもお母さんを巻き込んで大変な目に。

一歩間違えればお母さん死んでるよ、っていう話なの、『小さな母、メルダーベルクに登る』。

あの頃は、気骨のある若者ならば誰でも自由に空を飛んで――好きなものをぶち壊して――損害がどれだけになるとか、法的責任はどうだとかいうことは、あとでゆっくり考えればよかったのである。 (『初めての飛行機』 P202)

そりゃあそれが若者の特権かもしれないけど……。

ううむ。

ウェルズさんはどういうつもりでこのお話を書いたのかなぁ。

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