2013年8月9日金曜日

『赤い輪』/モーリス・ルブラン



ついにおしまいです。

偕成社完訳ルパン全集別巻5、最後の一冊『赤い輪』。

うーん。

最後なのに。

なんか、消化不良っちゅうか物足りないっちゅうか、なんでこれ最後に持ってきたん……。

面白くないわけじゃないけど、設定が「犯罪形質が遺伝する」っていう、現代ではちょっと呑み込みにくいものなのですよね。

興奮すると手の甲に「赤い輪」が現れるジムという男がいて。

彼の家系には犯罪者が多くて、「呪いの赤い輪」なんて言われてる。

ジムは落ち着いてる時には自分のその「呪われた血」を悲しんでいて、「こんな宿命はもう終わりにする!」と一人息子のボブを手ずから殺してしまうほどだったのですが。

ジムの「呪い」をある種の「病気」として研究していた法医学者レイマーは、ボブとジムの死で断たれたはずの「赤い輪」が、とある女の手に現れるのを目撃するのです。

一体どういうことなのか?

ジムにはまだ血縁者がいたのか???


実はそれは他ならぬレイマーの想い人、お金持ちの令嬢フロレンスだったのです。

フロレンスもまたレイマーに恋していたがゆえに、「自分の正体」をいつレイマーに知られるかとひやひやし、レイマーも「フロレンスが怪しい」と思えて苦悩する。

この、「バレそうでバレない」展開がさすがルブランさんだし、赤い輪が現れるととたんに大胆な冒険者っぷりを発揮するフロレンスの「犯罪」と言うより「義賊」的な行いはルパンのそれを彷彿とさせ面白い。

でも「遺伝」っていうのがー。

しかもただその「性格」を受け継ぐだけじゃなくて、「赤い輪のあざが浮かび上がる」っていうのがー。

どうにも嘘くさい。

しかも最後には「治せる」と来る。

一体それはどーゆー「遺伝」なの。そんな「意志のきびしい鍛錬と精神のトレーニングによって」治せるものなら、それは「病気」というより普通に「性格」とか「性癖」に近いものなんじゃ……。脳の機能障害とかそういうことじゃないってことでしょ……?

いや、まぁ、精神的な「病気」だというのはまだいいとしても、「赤い輪が浮き出る」っていうのは遺伝するもんなのかー。

それに、治せるんならまずジムを治してやれば良かったじゃん。苦悩のあまり息子を殺して自分も死ぬ、なんて可哀想な結末を迎えさせずに。

フロレンスが不細工だったら絶対こいつ(レイマーのことね)容赦なく逮捕してるよなー、と思ってしまう。

ルブランさんの作品だから、冒険と恋が密接に絡んでいるのは仕方ないけど、今までで一番好感が持てないよ、レイマー。

アメリカ人だからか?

そう、このお話、舞台はアメリカ。何でもアメリカの映画会社からの依頼で書いた作品だそうで。最初に発表されたものと、単行本になったものとでは章立てが大幅に違っているらしく、内容にもかなり相違があるのではないかという話なのだけど。

でもアメリカが舞台になっていることは変わらず、フロレンスの出生の秘密には「西部」のゴタゴタというか無法地帯ぽい世相がうまく絡められてる。

あと、フロレンスの家にはヤマという日本人の召使いがいたり。

ヤマって、「ヤマザキ」とか「ヤマモト」とかの略なのかしら。

最後の一文はルブランさんらしく洒落ているし、「遺伝的な病」とはいえ、優雅な令嬢でありながら大胆不敵に義賊を演じるフロレンスは、まことにルパンの(というかルブランさんの)趣味っぽい。

うん、ルブランさんって、二面性のある女性が好きだよねぇ。

ただ美しいだけじゃなく、おしとやかなだけじゃなく、自立心があって、時に危険を顧みず大胆な行動に出る。

フロレンスも、義賊のままの方が魅力的なような。

ええ、もちろん、たとえ「弱者を救うため」であっても、窃盗は犯罪ですけども。


ああ。

それにしても。

終わってしまった。

寂しい。

また1巻から読み返そうかしら、ルパン全集……。

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