「NHKアナウンス室編」ということでわかる通り、これはNHKの「ことばおじさん」こと梅津アナウンサーが担当していた「気になることば」というコーナーから生まれた本です。

「まえがき」と「文庫版あとがき」は梅津アナウンサーが書いてらっしゃいますが、本文もそう
なのじゃないのかしら。

「文庫版」となっている通り、2008年に単行本として出版された『NHK気になることば』が改題の上文庫化されたもの。

単行本には続編もあるようです。



「気になることば」コーナーで取り上げられたトピックを採録しているようで、一つ一つは非常に短い。文庫本のページでおよそ2ページ。なのでサクサク読めるし、隙間時間に読むにはぴったりです。

軽い気持ちで読めるのに「へぇー」と思うことがいっぱいある。

2ページずつですからそれぞれの蘊蓄は決して深くはないけれども、たとえば「未明」は何時頃か?とか、考えると面白い。

NHKの番組から生まれた本ですから、「NHKの放送ではこのように使っています」という話も多く、また、視聴者さんから寄せられた「この使い方はおかしくないですか?」というような疑問に答える形も多い。

そして単行本が2008年発行ともう6年前なので、「イケメンは流行り続けるのでしょうか」という文章があったり(「流行る」を通り越してすっかり普通の言葉になった気がします)、「うざい定着?」という話があったり。

「うざい」なんて、少なくとも子ども時代にはなかった言葉だよなぁ。いつの間にか普通に口にするようになってしまった。

この本の――というか、「ことばおじさん」の素敵なところは、

私は番組を引き受けるにあたって、一つの方針を立てた。それは基本的に、「これが正しい日本語」と断定しないこと。(中略)言葉が生まれる前に、言葉の規則があったわけではないし、時の権力者が「正しい言葉」を押しつけても無理なことである。「言葉」は文化であり、生きているのだ。 (「文庫版あとがき」から P320)

というそのスタンス。

正しいか間違ってるかではなく、「こういう使い方をすると誤解が生じるかもしれませんね」という本文の語り口。なんというか、「安心して」読めます。

色々「へぇー」なことがいっぱいあったのですが、「メリヤスという言葉はポルトガル語やスペイン語が語源で、ずばり“靴下”の意味」というのには驚きました。

そーだったのかー。

今では編み物の基本的な編み方としての「メリヤス編み」以外にあまり「メリヤス」って言葉を聞かないと思いますが、昔は「メリヤスの肌着」とか言ってたんですよ。

靴下の肌着。

そーだったのかー。

「魚」と書いて「さかな」と読むことが正式に認められたのはなんと昭和48年になってからだそう。まだたった40年くらいしか経ってない!


言葉の世界は本当に深いですね。