『ローマ帽子の秘密』に続く国名シリーズ第2弾。

あっという間に読んじゃいました。

少し冗長なところのあった1作目に比べスムーズな展開で、どんどんページを繰ってしまう。1作目ではあくまで父親リチャード・クイーン警視が捜査の主役で、エラリーは父親を手伝っている感じだったのが、この2作目ではいよいよ「名探偵エラリー登場!」という感じで前面に出てきています。

本来はお父さんの部下であるはずの警察官達をアゴで使ってる感あって、いくら警視のお墨付きとはいえ警察より先に重要な現場に入って証拠品を収集。最後は「お父さん喉の調子が悪くて喋れないから代わりに僕が全部説明するね(・ω≦) !」で警察委員長の前で推理を披露しちゃう。

いいのかそれで、ニューヨーク市警(笑)。

五番街の有名なデパート、その名も「フレンチ百貨店」の1階にあるショーウィンドウ。そこでは毎日12時になると展示商品のデモが行われている。いつものように店員が壁収納タイプのベッドの宣伝をしようとスイッチを押したとたん。

ベッドとともに壁から現れたのは女性の死体だった!

その女性はフレンチ百貨店の社長夫人。たまたま社長秘書のウェストリーがエラリーの学友だったこともあり、エラリーは百貨店最上階の社長のアパートメントにずかずか入っていって、「殺されたのはショーウィンドウじゃなくここじゃないか?」などと現場検証を始めるのですね。

まぁ、警察委員長として赴任したばかりのウェルズ閣下が「現場を知らないめんどくさい管理職」で、父クイーンの方はその相手で手一杯ということもあったのですが。

父親が人望厚い警視というのは名探偵にとって実にありがたい属性ですねぇ。

で、そのアパートメントではいくつもの手がかりが見つかり、殺された夫人のみならず、夫人の娘(夫人と社長は再婚なので、夫人の連れ子)も行方がわからないことが判明。

『ローマ帽子』の時は「被害者のシルクハットがなくなってる」だけだったのが、今回は細々(こまごま)とした手がかりがいっぱいあって、一つ一つ説明をつけつつ犯人を絞っていく感じ。

死体が発見されたのが火曜日のお昼、そして木曜日の朝にはエラリーが警察委員長や容疑者(百貨店の関係者)を集めて推理を披露。すごいなー、スピード解決だなー(笑)。

いや、でも、ほんと、流れがスムーズで、どんどん読んじゃうんですよ。後から考えると確かに「あんなにいっぱい手がかりあったけどよく考えたらあの一つだけでもう犯人絞れてた?」って思ったりもするんだけど、でも読んでる間はエラリーの捜査にわくわくドキドキ。

今回ももちろん途中に「読者への挑戦状」があります。

というか、今回からはっきり「挑戦状」になる。

『ローマ帽子』の方ではクイーン父子の知人であるJ.J.マック氏という人物が「挑戦状」書いてたんだけど、今作の「挑戦状」はエラリーの名義でなされてる。

読者への挑戦の締めの文句が「アリヴェデルチ!(また会おう)」なんだから、ほんとエラリーってカッコつけ(笑)。

ちなみにJ.J.マック氏は今回も「まえがき」を担当しています。

そして「前作でも好評を博したので」という注釈付きで今回も「エラリーによる登場人物紹介」があります。

クイーン家の若き万能執事ジューナについては「登場の機会があまりにも少ない」と記され、父クイーン警視のことは「今回の事件では本領を発揮できず、いつになく苦悩する」と紹介。

そして自分自身については

エラリー・クイーン:幸いにも事件を解決する。

ほんといいキャラだなぁ、エラリー(褒めてます(笑))。

今作の解説に、「エラリーの口調が他の訳よりずっとくだけている理由」が書かれているのですが

「若き日のエラリーは、少なくとも父親に対しては、思いっきり生意気でやんちゃな存在であったはずです。そして、父親はそれを大きな包容力で受け入れている」 (P517)

うんうん、やたらに書物の言葉を引用したり、捜査が進展せず頭を抱える父親に「きょうの出来事がひとつ残らず無意味だったとでも?」とにやりと笑いかけるところなんか、実にそーゆー感じ。

「いい子だ。おまえがいなかったらわたしはどうしていいかわからないよ」と父親に泣き言を言われて「よしてくれ」と顔を赤らめたりね。

萌えるわ、この父子(笑)。

ただ、最後エラリーに「犯人はおまえだ!」的に追い詰められた犯人が自殺しちゃうんだけど、その遺体に駆け寄ったクイーン警視が「神よ、息子を与えてくれて感謝します」って言うのはちょっと。

いやいやいや、犯人死なせてもうたらあかんでしょ。息子褒め称えてる場合ちゃうでしょ。

まぁその辺は時代性かなぁとも思いますが。1930年の作品ですもんねぇ。昭和5年ですよ。

85年前のミステリ。

でも全然古くない。

すごいなぁ、クイーン。


ちなみに、前作は「ローマ帽子」と言いながら「ローマ劇場でシルクハット」、今作は「フランス白粉」と言いながら「フレンチ百貨店で……」何?

麻薬組織が絡んでくるので「French Powder」というのは麻薬のことなのかなとも思いますが。

どうなんでしょう。

エラリー・クイーン研究家の飯城勇三氏の丁寧な解説がついてるんですけど、タイトルに関しては言及がないのですよね。手がかりとして口紅は出てくるけど、白粉は出てこないんだけどなぁ。

ともあれ面白かったです♪ 早く3作目が読みた~い!(しかしまだ入手できてない(´;ω;`))


【※この他の国名シリーズ、その他クイーン作品についての感想はこちらから】