※以下ネタバレあります!これからご覧になる方はご注意下さい!


7月28日11時公演を観劇してきました。

お正月にはルパン三世を演じていた早霧さんが今度はしっとりと日本物のお芝居。ホントに宝塚は懐が深いですね。

あ、ルパンの後、博多座で『星影の人』もやったんでしたっけ。ルパン三世→沖田総司→江戸中期の弱小藩主の息子(今回の『星逢一夜』での役どころ)、そして来年には『るろうに剣心』をやるという。

日本物のお芝居が続きますねぇ、雪組。

『ルパン三世』も予想以上の出来で楽しかったですが、今回の『星逢一夜』も良かったです! いやー、もう、めっちゃ泣かされました。お友だちに「なんで『ベルばら』で泣くの?」とか言われるぐらい涙腺弱いんで、私の「泣く」はあまりあてになりませんが(笑)、お話もとてもよくできていたし、早霧さん始めみんな熱演で、胸に迫る素晴らしい舞台でした。

徳川吉宗の治世、舞台は九州の小藩三日月藩。早霧さん演じる主人公は藩主の息子天野紀之介。藩主の子、と言っても妾腹の次男坊で家臣達からあまり期待されておらず、しょっちゅう城を抜け出しては星を見ている。

物語は、彼がまだ10歳くらいの少年の頃から始まります。そう、トップスターはじめ主要メンバーみんな「子ども」です。これが実に生き生きと可愛くて、楽しい。

星逢いの夜(七夕のことだそう)、紀之介はたまたま村の子ども達と親しくなります。望海さん演じる源太、そして咲妃さん演じる泉(せん)。殿様の子と百姓の子。源太の父も泉の父も、一揆を起こした罪で死罪になっていて、初めのうち泉は紀之介を敵視するのですが、ある事件をきっかけに打ち解け、紀之介と村の子ども達はすっかり仲良くなります。

自分達で作った星観の櫓はまるで彼らの秘密基地。でも楽しい子ども時代は突然終わりを告げます。兄の急逝により「気ままな次男坊」からいきなり「跡取り」になった紀之介。そして江戸へ行くことになるのです。

「行きたくないなら行かなくてもよい」という紀之介のお母さんの台詞が秀逸。下級武士の生まれで家臣からも重んじられていないらしいこのお母さん、終始冷静で素敵です(出番は少ないですけど)。行かなくてもいいけど、おまえが江戸に行かなければ天野家は断絶、三日月藩は……。って、お母さんそれ脅してるよね(^^;)

「おまえは皆が思っているより賢い子じゃ。自分で決めなさい」

お芝居見てる時は「自分の子どものこと信頼してるんだな。よく見てるんだな」って思ったけど、こうして思い返してみると冷たいような気がしなくもない……。

江戸に上がったわずか13歳くらいの紀之介少年(名を晴興と改めます)はその星の知識と物怖じしない性格が幸いして将軍吉宗に目をかけられ、どんどん出世していくことになります。

なんと将軍の姪との縁談が持ち上がるほど出世する。

7年後、久しぶりに故郷へ帰った晴興の前には、美しく成長した泉の姿。お互い憎からず思っていた二人だったけれど、すっかり「武士」として出世街道まっしぐらの晴興と百姓の娘、結ばれるわけもない……のに抱き寄せる晴興(^^;)

おめぇ江戸では出世のため将軍の姪との結婚やむなし、って感じだったじゃーん。何なの妾にする気なの。

一方泉は源太に嫁入りすることが決まってる。決まってるんだけど、泉の晴興への想いを知っている源太は「泉には幸せになってもらいたい、泉の幸せが一番だ」と晴興に泉を譲ろうとする。

源太いいヤツすぎやろ~~~~~~~!

結局泉は源太と、晴興は将軍の姪と結婚してあっという間に10年が経ち、晴興は将軍の右腕として改革を推し進め、その厳しい政策のせいで各地で一揆が頻発、三日月藩でも源太をリーダーに一揆の計画が。

幕府側の人間として、また領主として、源太や昔の仲間達と敵対せざるを得ない晴興。晴興の選んだ道は……。

最初の子どもの頃のエピソードが丁寧に描かれているので、その後の主役3人の運命の変転が非常に辛いんですよねぇ。どうして彼らが敵対しなきゃならないのか、生まれの差、身分の差、そして吉宗と晴興が進める改革は本当に正しいのか。

農民を締め付けることでしか国の財政を再建できないなんて。

……消費税を上げることでしか、という現代の状況とも相通じる問題です。

最後の晴興の身の処し方は見事ですけどね。一揆は抑える。けれども一揆に参加した農民の命を救うことと引き替えに、自分は出世の道をはずれ、「永蟄居」を受け入れる。

「永蟄居」って、今調べたら「終身にわたって出仕・外出を禁じ、謹慎させる」ことだそうです。30歳そこそこで残りの人生「飼い殺し」みたいな。

一揆の片を付けるために、源太とサシで勝負して彼を斬ってしまった晴興。晴興も源太も、互いにそうするしかないのはわかっていたのだろうし、相手が晴興だから、源太だから、ああいう決着のつけ方を選べたのだろう。互いを憎んだり、恨んだりはしない。恨むなら、ただ運命を恨む……。

永蟄居が決まった後、星観櫓での晴興と泉のシーンは『若き日の唄は忘れじ』のあのおふく様と文四郎(だったかな。名前間違ってたらごめんなさい)の最後のシーンに匹敵するような名場面だと思います。うう、涙なくしては……。

しかも一番最後は子ども時代の、楽しい思い出の場面で終わるんですよ。二度と戻らない、あの幸せな日々の――。もう、今思い出しても泣けてくるわ~~~~~~~~。『MOON CHILD』とか『義経秘伝』とか、この手の演出に弱いのよ、私。

どうしてあのままではいられなかったんだろう、どうして子どものままで……。

またプログラムに晴興、源太、泉が仲良く空を見上げてる子ども時代の写真が載ってて、いちいち泣けてくる。

吉宗や享保の改革が出て来るとはいえ、必ずしも時代考証は正しくないんですけど(プログラムにその旨の注意書きがあります)、人物造型も台詞も場面の繋ぎ方も非常によくできたお芝居だと思います。これが大劇場デビュー作という上田久美子先生、「百姓一揆なんて取り上げて受け入れてもらえるだろうか」とプログラムに書いてらっしゃいますが、めっちゃ良かったですよー、ほんま!!!!! 次回作も期待しています。

晴興役の早霧さんは子ども時代はとても元気で可愛らしく、江戸に行って「武士」になってからは颯爽と美しく、終盤での葛藤を裡に秘めた厳しい演技もとても良かったです。

泉役の咲妃さんもとてもお芝居が良い。可愛い子ども時代から、「なんでこんなことになってもあんたのことが好きなのか」と言う「女の顔」、そして「母の顔」まで、研5とは思えない見事さです。

源太役の望海さんも巧かった。源太はやんちゃでもないしいわゆる「敵役」でもなく、むしろいい人すぎる「主人公の親友」なんだけど、それでも一揆の時には彼がリーダーになるだろうという「器の大きさ」みたいなのが最初からちゃんと感じられて。

お話のキャラクター的にもスターさん本人の個性的にもトップコンビ+準トップ3人のバランスが良くていいなと思いました。ってゆーかそういう風に役を割り振るのも座付き演出家の腕の見せ所ですよね。オリジナル作品はこうでなくっちゃ~。

あと吉宗役が専科の英真なおきさんで、個人的にすごく嬉しかったです。我が青春の星組!

英真さん、さすがの巧さでした。嫌々江戸に来たであろう幼い晴興をして「この人のために働きたい!」と思わせる大きさを持った吉宗。

名前と顔が一致しない若手の皆さんもそれぞれしっかり役をこなしていて、本当に、「近所だったらもう1回見に来るのに~」と思える舞台でした。

お薦めです♪

ちなみに宝塚での公演は8月17日まで、東京公演は9月4日から。

長くなったので、ショー『ラ・エスメラルダ』については別記事にします。