早霧せいなさん&咲妃みゆさんのサヨナラ公演、観てきました!

前売りは予想どおりの玉砕でチケットが手に入らず、「しょうがないか~」と半ば諦めていたのですが。

申し込んでいたVISA貸切公演が当たってめでたく観劇できることに。ありがとうVISA!VISAありがとう!!!

観たのは5月27日(土)の15時公演。千秋楽が29日なので、大劇場サヨナラの2日前。そんなギリギリに貸切公演……と思ったけど28日の11時公演も貸切だったし、一般チケット取れないはずよね……。

で、さて。

フランキー堺主演の映画『幕末太陽傳』を初ミュージカル化した今回のお芝居。映画は観たことがなく(名作として有名なのは知ってましたが)、どういうお話なのかほとんど知らずに席に着いたのですが……。

面白かった!!!

すごい!

ミュージカル・コメディと銘打たれているとおり、喜劇なんだけど、喜劇ってなかなか難しいでしょ。普通のお芝居でも泣かせるより笑わせる方が難しいと思うんだけど、宝塚の、それも大劇場でこの手の喜劇をきちんと成立させるすごさ。

早霧さんがねぇ、めっちゃ巧いんですよねぇ。まさに軽妙洒脱

タイトル通り、舞台は幕末。場所は品川遊郭にある相模屋という旅籠。主人公の佐平次はお金もないのに他人に驕り、どんちゃん騒ぎをしたあげく、しれっと「その分働かせてもらいます!」と相模屋に居着いてしまう。当人曰く「居残り稼業」。

相模屋で起こる騒動を持ち前の機転で解決しながらちゃっかり小金をせしめていく佐平次、あっという間に相模屋の人気者。

店には高杉晋作はじめ長州の浪士たちが集い、外国人屋敷の襲撃を計画。こはるという女郎が起請文争いを起こしたり、そのこはると板頭を争うおそめが心中騒ぎを起こしたり。はたまた店の若旦那と駆け落ちしたいと佐平次に協力を求めてくる大工の娘おひさ。

明るく陽気に、そしてどこかちゃらんぽらんにそれらの厄介事を収めていく佐平次なんだけど、実は胸を病んでいて、余命が長くないことを自覚している……。

って、これ、『グランドホテル』だよね。全然雰囲気違うし、オットー・クリンゲラインには別にいざこざを収めるような才覚はなかったけど、「もう自分は長くない」と知った男が“宿”に逗留して、そこでの様々な人間模様に触れることで残りの人生に対して前向きになる、っていうの。

かたや上流階級のグランドホテル、かたや女郎宿。

女郎宿の方がもっとエネルギッシュで、もっと猥雑で、生き生きとしていて。
(『グランドホテル』は『グランドホテル』で大好きだし名作ですが)

おそめとこはるが互いの着物をむしり合って喧嘩するとこなんか、まったく宝塚のヒロインらしくないんだけど、咲妃さんがこれまた巧くてチャーミングで、良いんだよねぇ。辞めちゃうのもったいない。

望海さん扮する高杉晋作はそんなにしどころのない役なんだけど、だからこそ望海さんの存在感が生きるというか必要というか。

高杉に対して佐平次が一席ぶつシーンは佐平次が「ただのお調子者じゃない」一面を見せる重要なシーン。

おちゃらけに見えてやる時はやる、みたいなの、前の公演のケイレブに通じるところあるし、ルパンにも似てるし、そう考えると早霧せいなという男役の集大成的な役だよね、佐平次。

「ここではないどこか、新しい人生を」とおそめと歌うシーンは退団する二人へのはなむけでもあるんだろうし、うん、本当に素敵なお芝居だったなぁ。

のっけからミラーボールで「金比羅ふねふね♪」というセンスも素晴らしく。デキシーランドジャズっぽいアレンジだった気がする。“ミュージカル”としてもよくできていたと思います。

最後の墓場のシーンはちょっとテンポがのっそりして、それまでの良い流れを切っちゃったようにも見えたんだけど、オチは楽しいし汝鳥さんが見られてオールドファンとしては嬉しい。

トップ、準トップの三人だけでなく他の組子さん達もみんないい味出してて、「芝居の雪組」の伝統は続いてるんだなぁ、と思いました。

次期娘役トップが決まっている真彩希帆さんも大工の娘おひさを好演。声がきれいだなぁと思いました。

おひさに「今すぐお礼はできないけど十年後には」と言われて、「十年後?こんな時代、十年後なんてどうなってるか」って佐平次が答えるシーンも印象的。十年後、そんな約束をされても、佐平次はきっともう生きていない……。

佐平次の余命など知らないおひさは、「だからこそ、私はもっともっとお金を貯められてるかも」って答える。幕末という時代の転換点、その変化を「いいもの」として未来に希望を持つおひさと、時代がどうなろうとその時生きているかどうかわからない――だから希望なんて持てなかったろう佐平次。

十年後。

実際に報酬が受け取れても受け取れなくても、十年後を語るおそめのその「希望」が、佐平次にとってきっと何よりの褒美だった――。

あと、VISA貸切公演なので「肘、肘、膝、膝、VISA!」という早霧さんのアドリブがあったり、鬼島役の香綾さんは「あ、三井くん!いや、住友くん!」と言って笑わせてくれたり。

いいねぇ、ほんと。

で、さらに、ショー『Dramatic“S”!』がいいんですよっ!!!

中村一徳先生のショーはいつもハズレがないんですが、今回はさらにパワーアップしててすごかった!!!

ジャズやラテン、お馴染みのスタンダードと音楽の好みがドンピシャな上に、スピーディで軽快、ほぼすべての場面が群舞で、しかもどの場面も振り付けが素晴らしい!!!

振り付け、誰?と思ったらプロローグの後のジャズの場面がBryant Baldwinさん、中詰めのラテンと初舞台生のロケットがKAZUMI-BOYさん。

またこのロケットが!

久々に「おおおおおっ!」と思う出来でした。いや、初舞台生見るの自体久しぶりなんですけど、「喜多先生が蘇った!?」と思っちゃいました。振り付けも良かったし、その振り付けを見事に踊る初舞台生達もとても良かった。

「Snow Troup・絆」と題された場面にはうるうる。「あなたに会えた幸せ」「みんなといたから楽しかった」みたいな歌詞が泣かせてくれる上に、次々と組子が歌い踊るのを見守り受け止める早霧さんの姿。

サヨナラ公演の時のショーって、トップが準トップに「後を託す」みたいなシーンがあったりするんですけど、準トップだけじゃなく組子のみんなとの別れと感謝(でも決して湿っぽくなく軽快)、良かったです。

ベサメ・ムーチョでの黒燕尾大階段、フィナーレまでもう本当にあっという間。

楽 し す ぎ る ♪

音源欲しい。NHKさん、BSで放送してくれるといいな……。



VISA貸切公演なので終演後に早霧さんの挨拶もあり。(上演前には梨花組長の挨拶がありました)

お芝居もショーも充実しすぎてきっととてもゼーハーしてるであろう二回公演の最後にまだ挨拶させる鬼畜なVISA、でもありがとう、ホントありがとう。

素晴らしいサヨナラ公演でした。観られて良かった!