『ファウンデーション』の続きを借りに図書館に行ったら「新しく入った本」コーナーに本書が並んでいて、ついつい手に取ってしまいました。

図書館に入ったのは最近なのでしょうが、この本自体は6月26日の発売らしく、すでに発売後3か月が経過。
「最強SNSツール登場!?新しい波に乗り遅れるな!」という煽り文句も「今さら感」パないんですが、読んでみて、逆に今読むからこそ味わい深いな~、という気もしました。

マストドンがやたらに話題になっていたのは今年の4月から5月にかけて。
私もその頃にマストドンデビューし、当初はITmediaさんの「マストドンつまみ食い日記」を追いかけたりしていたものの、今ではすっかり「マストドン全体」のこととかどーでもいーやー、という感じになっていました。

なので今改めて「マストドンとは」というこの入門書を読んで、「はぁ、なるほど~」と。

小林啓倫さん、コグレマサトさん、いしたにまさきさん、まつもとあつしさん、堀正岳さんという5人の執筆者がそれぞれの切り口で「マストドン」について語ったあと、全員による「マストドンの未来を考える」という座談会がついています。

まず小林さんがざっと「マストドン開発史」を、そして自身で趣味のインスタンスを立ててらっしゃるコグレさんが「ユーザーから見たマストドン」の話。

いしたにさんはいちはやくマストドンに企業アカウントを作った日産の話。
日産がニコ生で多くのユーザーを集めていることも知らなかったので、興味深かったです。
個人的にはマストドンはあんまり企業に――ビジネスに結びつかないんじゃないかと思っていて、「企業がインスタンスを立ててファンを囲いこむ」のはありだとしても、よそが立てているインスタンスの中に「宣伝垢」を作ってもあまり流行らないんじゃないか。少なくとも私はフォローしないな、と思ってました。

でもニコ生配信と組みあわせてfriends.nicoでトゥートする、という日産のやり方はなるほど。マストドンに限らず、SNSでは企業は「直接的にモノの宣伝をする」より、「ファンを増やす」「ブランド力を高める」方がうまくいくんでしょうね。

ちなみに日産のアカウントはhttps://friends.nico/@NissanJPです。(「テストアカウントです」って書いてあるな(^^;))

その後、企業垢って増えてるのかな? どうなんでしょう。

で。

friends.nicoもそうですが、企業が作った大規模インスタンス「Pawoo」について、運営母体ピクシブの担当者さんにインタビューしているのがまつもとさん担当の章。

Pawooは2017年10月6日現在登録ユーザーが290,514人ということで。(「日本のマストドンインスタンス一覧」参照)

ユーザー数はぶっちぎりですよね。スマホ用アプリもいち早く提供してくれてて、私も毎日使わせてもらってます。

Pawoo立ち上げの経緯とか、いわゆるロリ絵騒動(外国のインスタンスから「その絵はマズい」と連合を切られ、画像をキャッシュしないことで回避した話)はリアルタイムで聞いてはいた(というかネットニュースで読んではいた)けど、紙の本でまとまってると振り返りやすくて良い。

そして最後、堀さんの担当は「マストドンが示す分散型SNSの可能性」
一般ユーザーとしては「分散型SNS」ということをそんなに意識することはないんですけどね。TwiiterやFacebookと違って1企業が運営している「サービス」ではなく、「仕組み」「枠組み」で、その同じ仕組みを使って企業や個人がSNSサーバーを立てることができ、サーバー同士が「連合」することができる。

座談会のところで、こんな話が紹介されています。
マストドンのトゥートの公開範囲に関して、現状「自分の所属するインスタンスにのみ公開」という設定がないんですよね。
「未収載」でも「非公開」でもフォロワーさんには流れるので、他インスタンスからリモートフォローしてくれている人には読まれてしまう。フォロー関係ではなく、「自インスタンスのユーザーかどうか」で区切る公開設定があってもいい、いや、欲しいな、と私も思うんですが、それに対するマストドン開発者オイゲン氏の答えは、「なぜそれを問題視するのかわからない」というもの。

彼は「インスタンスに閉じこもったら、分散化した意味はなくなって、また小さな中央集権になるだけ」と強く信じているのですね。「連合こそがすべて」なのに、なぜその逆を行こうとするんだ、というのが彼の反論です。 (P197)

うーん。
「連合」全然見てないし、リモートフォローもほとんどせずに「インスタンスに閉じこもって」マストドンを利用している身としては、「えー、だってー」と思ってしまいます(^^;)

私としては、コグレさんの

大事なのは、自分の興味のあるインスタンスがあるか、自分が楽しめるインスタンスがあるか、で、もしなくても自分の手でインスタンスを立ち上げられるということこそが、ああマストドンがあってよかったな、という話なんではないかと思っています。 (P79)

という意見に共感。
これって、あんまり「連合」を意識してないですよね。ネットの海をはるばる探しに行かなくても「自分の興味のあるインスタンス」を作れてしまう、「よそ」はともかく「自分が楽しいものを」っていう……。


表紙には「乗り遅れるな!」なんて書いてあるけど、どのライターさんも、マストドン自体が流行るか流行らないかはあんまり問題じゃない、「分散SNS」という仕組み自体が重要だ、っていう割と落ち着いた目線で書いてらっしゃるのが良かったです。

「マストドンつまみ食い日記」によるとこの10月6日でマストドンは公開1周年を迎えたそう。さて、この先マストドンはどうなるのか?
来年の今頃、私はまだトゥートしてるかな…?