※以下ネタバレあります!これからご覧になる方はご注意ください!



はい、観てきました。
GACKTさん主演だし原作は魔夜峰央先生の伝説のコミックだし、観ないわけにはいきません。

とはいえ原作コミック、読んだことがないんですけどね(^^;)


だからどこまでが原作のネタでどこからがオリジナルなのかよくわからないし、キャラの再現度とかもわから……いや、もう予告編見ただけで再現とかへったくれとかいう話じゃなくお腹いっぱいになってしまいますけども。



うん。
濃かった!
くそバカバカしかった!(褒めてる)

なんていうか、ほんとにみんな濃くて。百美の父親東京都知事役中尾彬は絵に描いたような金満親父だし、その妻武田久美子はなんで日本人なのに普段からロココで暮らしてるのかわかんないし、執事の伊勢谷友介がまた。

ポスター画像も口裂け怪人二十面相みたいだもんね。

なんか、変な役ハマりすぎてヤバい。

虐げられる埼玉出身クラスの高校生には加藤諒、GACKTさんの「父親」は白塗り麿赤児、神奈川県知事としてちょろっと出て来るのは竹中直人で……。

どこをどう切り取っても濃すぎるだろう!!!

しかしだからこそこの茶番が茶番に見えないというか(いや茶番だけど)、徹底して「非日常(ファンタジー)」を作り込んでいるがゆえにGACKTさんが高校生でも群馬がサバンナでも通行手形が必要でも「自然」に思える。

さいたま県民には「さ」マークが浮かび上がり、未来警察ぽいゴーグル警備員にビビビと電磁攻撃される世界がこう、しごく「フツー」に成立できちゃってる。

まぁ、ラジオから流れる「都市伝説」として描かれてるせいもあるんですけど。

物語は、車で熊谷から東京へ向かう一家の描写から始まる。
父親ブラザートム、母親麻生久美子。娘は島崎遥香
一家も、そして娘の彼氏も埼玉出身でありながら結納は東京で行うということで、父親は助手席に妻、後部座席に娘を乗せて軽ワゴンで東京を目指す。

その道中、カーラジオ(もちろんチャンネルはFMさいたまNACK5)から流れてくる「都市伝説」が本編。

この構造、うまいなぁと思いました。
「そんなバカな」という非日常な本編を視聴者目線でツッコむ「現実」の人々。
でも父親は物語にすっかり入れ込んでしまうし、物語の中で埼玉vs千葉になるのと同じく、埼玉出身の父と千葉出身の母は「“ちばらき”つったなぁ!?」と喧嘩になるし。

麻生久美子のあそこの啖呵、すごく良かった(笑)。

彼女は実際に千葉出身で、ブラザートムさんも熊谷の小中学校を卒業したらしく、島崎さんも埼玉出身(Wiki参照)。
キャスティング、力入ってるなぁ(笑)。

ブラザートムさんもすごくいい味で、なんか本編以上にこの一家の話を楽しんでしまった。娘は「東京に住むのが夢」で、その夢がもう少しでかなう(結婚後の新居は東京の予定だった)はずが、ラジオからこんなヘンテコな都市伝説が流れてきたせいで……。

で、その肝心の「都市伝説」。

埼玉県民が東京に出入りするためには通行手形が必要で、不法入都民は前述のとおり浮かび上がる「さ」マークで警備隊に確保&強制退去される。
東京都知事の息子百美が生徒会長を務める名門高校では出身地域ごとにクラス分けされ(同じ東京都民でもどこの区か、市か、みたいなことでランク付け)、埼玉出身者は敷地の隅のボロ小屋で自習、「その辺の草でも食わせておけ!」と言われている。

そんな白鵬堂学院(これって「博報堂」のもじりなのかもしれないけど、“白鵬”に反応してしまう相撲クラスタ)に転入してきた帰国子女、麻美麗役がGACKTさん。(これも元宝塚トップスター麻美れいさんからだよね?)

埼玉出身者に親切にしたということで疑いをかけられ、「格付けチェック」よろしく「東京テイスティング」。瓶に封じられた空気が東京のどこの地区のものか当てるって……そんなんわかるかーい!(もちろん格付け無敗のGACKTさんにはわかる)。

ヒートアイランド現象云々について英語でスピーチするよう言われて英語→フランス語→スペイン語→中国語と流暢に喋っていらしたのもさすがGACKTさん。

そもそもあの衣裳と鬘で存在してておかしくないの、GACKTさんとタカラジェンヌぐらいだもんね(そういえば転入生を紹介する教師はヅカの男役風味だった)。

優秀で都会的な(という言葉の意味をその衣裳からして百美も取り違えているような気がするが)麻美麗、その正体は「貴様、埼玉だな!?」で、父親から埼玉の通行手形制度を撤廃せよとの密命を帯びている。

キスされたことをきっかけに麗に心を奪われ、「あなたが埼玉県人でもついていく」と行動をともにする百美。
実は千葉解放戦線のリーダーで麗を敵視する執事伊勢谷友介。

埼玉への逃避行の途中千葉勢に捕まった麗たちを助けたのは伝説の埼玉県人「埼玉デューク」

何だよ埼玉デュークって(爆)。

しかしこれが京本政樹御大なのでもうすべて納得するしかない。
実は麗の本当の父親っていうのもビジュアル的に納得しかない

また衣裳が素晴らしいよね。
ファンタジー時代劇ぽい衣裳で刀持って「仮面の男」で白馬に乗って現れるって、京本さんの扱い方を心得すぎだろうスタッフ。

GACKTさんと京本さんの共演ほんと嬉しいし、さぞ現場では意気投合したのではないかと思うけどどうなんだろう。
本当は是非「必殺仕事人」で共演してほしかったけど。GACKTさん30代前半ぐらいの時にやってほしかった、仕事人……。今からでももちろんいいけど……。

埼玉と千葉の争い……と見せかけて真の敵は東京。
最後はちょっといい話になりすぎた感もあったかな。
「都市伝説」と「現実」がラストで合流するのは面白いとして、百美ちゃん、いくら麗が好きでもすっかり埼玉の人になっちゃうのはどうなの。未来の東京都知事として他の都道府県にも公平にさぁ。ずるいよ埼玉だけ!

ほんとね。
GACKTさんがリーダーなんてずるいよね。
滋賀なんてネタにもされない、羨ましすぎるよ埼玉

壮大なる茶番劇ではあるけど、百美が「東京を離れて他県民の苦しみがわかった」と言うところでは「そうだろうそうだろう」とか思っちゃうし、「通行手形制度を利用して東京都知事が私腹を肥やす」っていうのも、「そうだ!地方は東京に搾取されてるんだ!」と日頃の東京一極集中への恨みがつい。

映画見る前の日に沖縄では県民投票があって、「これ沖縄解放同盟だったら洒落にならないよな」とか。

映画では「国家」は出てこなくて、あくまで悪いのは東京都知事だったりするけれども。


冒頭、「この物語はフィクションです」というところでは魔夜先生自らご登場。後ろのバレエダンサーの中に先生のご子息がいらしたそうなんだけど、白タイツ軍団にびっくりしてる間に終わってしまった(^^;)

その後の熊谷市のブラザートム家の描写で鶏が産んだ卵がピタゴラ装置的なものでフライパンに落ちるの楽しかったし、一家の乗った車が田畑の中を走っていく、そこにたんぼアートで「翔んで埼玉」ってタイトルが書いてあるのも良かった。

えーっとそれからGACKTさんが「出陣じゃ!」っていうとこといかにも謙信様だったよね。流山決戦も川中島ぽかった。

麻美麗、あんな格好ですごく非日常だったけど、でも自分の正体がばれるのを厭わず家政婦を庇ったり、踏み絵ならぬ踏み草加せんべいが踏めなかったり、中身はすごくまともというか、郷土愛に溢れた常識的な人だったなぁ。

「草でも食っときゃ治る」と言われて本当に食べようとする埼玉出身学生に「そんなの食べても治らないよ」とお薬差し出すところもすごく「まとも」じゃない?

執事阿久津の方がヤバい人感強かった。麗を嬲っての濃厚キスシーンとかさぁ。(あれはGACKTさんのリクエストだったらしいし、夢オチだけれど)

あと埼玉解放同盟の支部の内輪もめシーンに矢柴俊博さんが出てた。ニンニンジャーのお父さん。大宮支部の人だったかな。ちゃんと埼玉出身なのねぇ。キャスティングまじすごい。

でもあの「内輪もめ」のところとか、細かい地名や風物が関西人にはピンと来なくてちょっと残念だった。埼玉の人はもちろん関東の人ならもっともっと細かいところが楽しかったんだろうなぁ。しらこばととか初めて知ったもん。

はぁ。
ほんと、羨ましいぞ、埼玉!


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