(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください。記憶違い多々あると思いますがご容赦を)



はい、今年も夏映画観てまいりました。公開4日目、7月31日。
すでにTwitter(「𝕏」と言わないといけないのか?)で「キングオージャー映画良かった!」という評判を見ていたので、期待して行ったのですが。

ほんと良かったです!
30分とは思えん濃さ。
すごいなぁ、キングオージャー。

物語は、ギラくんの戴冠式で始まります。
ラクレス君があんなことになり(生きてると信じてるよ、ラクレス君!)、ついにギラが正式にシュゴッダムの王となる。
ヤンマ君達他の国王たちも参列、国民の前でにぎにぎしく戴冠式が行われようとしたその時、一人の女性が「おいでおいでハーカバーカへ」と歌いながら現れる。

謎の女性!?と思ったら実はギラの知り合い。かつて同じ養護院にいたデボニカという娘らしい。二十歳の誕生日、ギラたちがケーキを用意して待っていたのに帰ってこず、そのまま行方をくらましてしまったデボニカ。ギラは再会を喜ぶけれど、彼女の方は「チッ」と舌打ちをして、「よけいなことを」という態度。

デボニカ役は声優の佐倉綾音さん。実写顔出し出演はほとんどされないそうで、とても貴重な映像になりそうですが、声はもちろん歌も素敵、お芝居もとても良くて素敵なヒロインでした。

養護院時代は「年上のくせにぐうたら」だったとギラに言われていて、回想シーンのぐうたら姉ちゃんなデボニカも良かったし、ハーカバーカの案内人として素敵な赤い衣装で「謎の女性」してるのもよく似合ってて。

シュゴッダム国王は即位の際、死の国ハーカバーカに赴いてご先祖様からシュゴッダムの真の歴史を学ばなければならない、それがしきたりだ、ということで、他の王様たちも一緒にいざ!ハーカバーカへ。

ハーカバーカのCG映像がまたすごかったです。「死の国」なのにめちゃめちゃ色彩豊富で、クジラみたいなのが泳いでたりして。
「死の国」なのに生き生きしてる。

デボニカの案内で、ギラは二千年前の王ライオニール・ハスティーと出会います。他の王たちとはいつの間にかはぐれるんだけど、ライオニールと会ってからはぐれたのか、先にはぐれたのか、ちょっと覚えていません(^^;)

ヤンマ君がふと気づくとヒメノ様やカグラギ殿がいなくなっていた……気がします。元の世界へ帰ろうと思っても出口はなく、ヤンマ君はパソコンを取り出してなんとか外界と繋がろうとする。ジェラミーがこっそりヤンマ君に絡めていた蜘蛛の糸(ジェラミーは一緒には来ていない)を使うことでンコソパと通信が繋がり、「シオカラ!嘘発見器を使え、今すぐ!!」と。

どういう仕組みかはわからないけど、嘘発見器を使ったシオカラ君、ハーカバーカのヤンマ君のところへテレポーテーションできてしまいます。
テレポーテーションというか、「どこでもドア」みたいなのから入ってくる。
そしてご丁寧にそのドアを閉めてしまうシオカラ君。

「バカ野郎っ!そこから帰るつもりだったんだよ!!!」

せっかくのヤンマ君の苦労も水の泡、単にハーカバーカにシオカラ君を呼んだだけになってしまった。

一方リッタンはゴッカン(?)の幻覚に囚われ、これまで彼女が裁いてきた――そしてその結果死んだ魂たちにゴォォォォッ!と襲われています。人の形はしていなくて、魂の吹雪に遭っているような感じ。
「ヴァァァァァ!」と例の奇声を上げつつも、「私には彼らの声に向き合う責任がある」と立ち向かうリッタン、格好いい、素敵、さすが。
でもやっぱりつらい、心まで凍えそう。つい耳塞いじゃう。

と、そこへモルフォーニャ
どうやってハーカバーカにやって来たのか謎なんだけど、苦しむリッタンを背後からそっと抱きしめ(てはいなかったかもしれない、私の妄想かも)、「ちゃんと聞いてごらん」と耳を押さえていた手をはずさせる。

すると聞こえてくる、「ありがとう」の声。

「死んだ人には人気みたいよ?」とリッタンを元気づけるモルフォーニャ。リタモル尊い
そして揺るがない心を取り戻したリッタンの右目(いつも隠されてるオッド・アイ)のアップがあった……気がする。このタイミングかどうかは忘れたけど、アップは確かにあった、尊い!

リッタンはヤンマ君のそばで幻覚に囚われていたんですが、いつの間にかはぐれていたヒメノ様の方は、亡き父上母上と再会している。
「ごめんよ、ヒメノ」と幼くして国王の責務を負わせてしまったことを謝るような父上母上。死者の国なので死んだ人(の魂)がいるのは不思議ではないのですが、「もう離さないよ」とヒメノ様を抱きしめ、「ここで一緒に暮らそう」と。

「いいえ、お父さまお母さま。私はお別れを言いにきましたの」と、亡霊の誘いなどには乗らないヒメノ様。きっぱりと、決然と、懐かしくてたまらないであろう両親のもとから去って行く。
「お迎えに上がりました、ヒメノ様」とセバスが現れると、「遅い」と一言。

いや、モルフォーニャもセバスも、ほんとどうやってハーカバーカに来たの? ヤンマ君はあんなに苦労してシオカラ君を呼んでいたというのに。

ヒメノ様と同じくいつの間にか姿を消していたカグラギ殿は、燃えるトウフ城内で先代の王イロキと向かい合っている。
イロキ役は雛形あきこさん。予告で見ただけでも「おーっ!」となるビジュアルですが、見た目もお芝居も存在感たっぷり、カグラギ殿との丁々発止に息を呑まされる。贅沢な配役ですよねぇ、ほんとに。

細かい台詞は忘れちゃったけど、カグラギ殿はイロキから国を奪った、それはイロキが私欲のためにしか動いていなかったから。イロキになじられ責められても、「すべて民の幸福のため」と余裕綽々なカグラギ殿さすが。

「それぞれの過去と向き合うことになる国王たち」と宣伝にあったとおり、リッタン、ヒメノ様、カグラギ殿は過去としっかり向き合った上で前に進む展開、でもヤンマ君だけシオカラ君とのコントになってて……実はあれも何か過去と関係があったのかしら(たぶんない)。

で、肝心のギラ
ライオニールと引き合わされたギラは、デボニカが「ギラが王にふさわしいかどうか見きわめるため遣わされたスパイ」だったと知らされる。
代々ライオニールに仕えてきた血筋のデボニカ、二十歳になるとライオニールの「器」になるための準備に入る。だからあの誕生日の日、何も言わず養護院から姿を消した。

ちょっとここも細かいことは忘れちゃったけど、「ギラでは優しすぎる」「優しさでは世界は救えない」ので、「二千年前にチキューを救った実績のあるこのオレ様が蘇ってやるぜ、ヒャッハー!」ということらしい。蘇るためにはデボニカの命が必要なのだと。彼女の命を新しい器として、ライオニールが生まれ変わる、みたいな。

「そんなことをしたらデボニカは!?」

もちろん死にます。
「覚悟はできている」と言うデボニカ。でももちろんギラにはそんなことは許せない。彼女の命を犠牲にするなんて。

「今年、チキューにはとんでもない災厄が起こる。だからオレ様が復活しなきゃダメなんだ!」と主張するライオニール。「大勢の人間が死ぬ。みんな大切な人がいて、幸せな明日があるはずなのだ。それをおまえは奪おうというのか」とかなんとか。
要は、デボニカ一人の命のために他の大勢を見殺しにするのか?って話なんだけど。

ギラ、「おめでたいな」って返すんだよね。
「あんたの時代にはそうだったのかもしれない、だが今、生きることは地獄だ!」と。

このくだり、すごいびっくりしたし、ここからのやりとり、ギラやデボニカのお芝居も相まって、めちゃめちゃグッときてしまった。うるうるしちゃったよ。

「生きることは地獄だ! だからこそ、俺は小さな幸せを守る王になりたい」

「生きることは地獄」と言うヒーローなんて――特に戦隊ヒーローがこういうことを言うの、前代未聞なのでは。普通は「生きていることは幸せなことだ、だからその幸せを奪うことは(人を殺すことは)いけない」って論法になるじゃないですか。「生きてる」ってことを全肯定して、それがどんな「生」なのかは問わない、「生きてりゃとりあえずいいことあるさ」みたいな。

ギラは「こんなつらい世界にしたのはおまえだ」とも言ってて、その辺は今ひとつよくわからなかったんだけど、二千年前にチキューを救ってシュゴッダムの初代国王となったライオニール、でも「世界を救う」ことが、イコール「人々を救う」ことだとは限らない。シュゴッダムの民たちは“平和”と引き換えに、たとえば重税に喘いだり、自由を制限されてきたのかもしれない。

養護院で貧しい暮らしをしてきたギラは、シュゴッダムの民が決して幸せではないことを肌で感じてきた、ということなのでしょう。

王家の人間であるギラがなぜ養護院で育つことになったのか、そこの秘密は本編でもまだ明かされていない(よね?)けど、「民の暮らしは厳しい」を身を以て知っている、良い設定ですよね。

「オレ様でなければチキューは救えない」「オレは英雄だぞ」と言うライオニールに対して、「英雄を倒す、俺は邪悪の王だ!」と答えるギラ。

いい加減面倒くさいなぁ、と思っていたギラの「邪悪の王」ムーブ、「英雄殺し」に繋がってくるとは!

カグラギ殿とイロキのやりとりでも、「私の時代の方が国は豊かだった」「でもそれはあなたが私腹を肥やすためでしょう」みたいな話があった気がするんだけど、「国を救う」とはどういうことか、「民を幸せにする」とはどういうことか、「英雄」とは……。

テーマが深すぎる

ギラがデボニカに、「本当は生きたいはずだ、甘いケーキを食べたいはずだ」っていうところもね。デボニカの誕生日、彼女は帰ってこないまま夜が過ぎ、ケーキはネズミにかじられてしまった。「ネズミ」だとギラは思っていた。
でも数年ぶりに再会したデボニカが、「あんな甘いケーキ」と言ったことで、「あれはデボニカだった」と気づく。

巧いよねぇ。30分でこんなに色々ぶち込んでくるのすごすぎる。

ギラの気持ちに応えて「我が王!」と王冠をギラの方に投げるデボニカ。
さらに、「過去」との整理をきっちりつけて決戦の場に集まってくる他の王様たち。もちろんちゃっかりジェラミーも登場。「蜘蛛の糸は昔から、地獄に繋がってるってね」

ギラがライオニールに向かって「おまえは一人だが俺は一人じゃない、それぞれに王として立ちながら、同じ目的に向かって進む仲間がいる!」とかなんとか言ったのも熱かった。
「俺を騙すつもりならもうちょっとうまくやれよ」と言うカグラギ殿、「父や母が死を勧めることなどありえないわ」と言うヒメノ様。

あの「過去の亡霊」たちは全部ライオニールの策略で、実際の「死者の魂」ではなかったのかな???

ともあれ五人の王とジェラミーは見事ライオニールを討ち果たし、現実の世界に戻って無事に戴冠式。ギラに王冠を載せるドゥーガさんが感極まってうるうるしてるのが面白かった(でも王冠って普通、もっと“上の位”の人から授かるものでは……司祭っぽい人がわざわざドゥーガに渡してたけど、司祭っぽい人がそのまま授ける方が自然では)。

ラストシーンは、無事養護院に「普通の女の子」として戻れたっぽいデボニカがケーキ食べて「甘っ!」って言ってるお茶目な姿。
最後までできすぎじゃーん、すごい。

冒頭でジェラミーが「おまえさんは王になって何がしたいんだい?」ってギラに聞いて、その時は「わからない」って答えてたギラが、ライオニールとの戦いで「自分は小さな幸せを守る王になるんだ」と決意を新たにする。

脚本、演出、配役、キャスト陣のお芝居、そして30分にまとめる編集力、見事でした。

ただこれ、この「即位する時の試練」、ラクレス君の時にもあったの? 他の王たちが「シュゴッダムの王が即位する時にはハーカバーカが云々」と伝説(?)を知っていたので、ライオニール、新しい王が即位するたび相手の人格と技倆を推し量って、時には自ら腕試ししたりしてたっぽいけど、もしそうだとしたらラクレス君があんな王になってしまったのは、「優しさでは救えない!」とライオニールにこてんぱんにされたからなのでは……。

少年時代には「民こそ国」と言っていた彼が変質してしまったのは、「そんな甘っちょろいことでは国は守れないんだ」とライオニールに言われたからとか。

ラクレス君にもデボニカみたいなお目付役がいたのかどうかも気になる。

「代々仕えてきた」も謎で、デボニカの家系の人、自在に「死者の国」と行き来できるって、どういうことなの…。いや、ギラ達もハーカバーカ行けてたから、「死の国」だけど必ずしも「死者の国」ではなく、生きたままでも存在できるんだろうけど、死者に代々仕えてる家系ってすごくない? これまでにも「おまえは二十歳になったら器となる準備を」って言われてきた人が代々いるわけなんでしょ? たまたま「今はその時ではない」で首繋がってきた人たちが。

そこを深く考え出すとちょっと「???」となるんだけど、でも全体としては素晴らしかったです。
ギラとライオニールの闘いの場面でナノさんの挿入歌「INFERNO」がかかったのも格好良かった。映画用に作られたわけじゃなく、最初から「全力キング」と一緒に主題歌CDとしてリリースされ、第6話でも流れたのだそうで。

知らなかった、、、気づいてなかったよ、、、、、

「全力キング」もそうだけど、これまでの戦隊モノの音楽とは違うイメージで、面白いよねぇ。キングオージャー、色んな部分で『ドンブラ』とはまた違う攻め方、尖り方してる。

入場特典はギーツのコアID。ドライバーにセットすると音がするらしいけど、当然ドライバーなんか持ってないので宝の持ち腐れ。
去年も3週目あたりからドンブラグッズだったし、今年も途中でキングオージャーグッズになるのでは。順番逆にしてくれればいいのにな。


【2023/08/06追記】

ライオニール役が中村獅童さんだってこと、書き忘れてるじゃないかー! 「豪華な配役」の部分を書き漏らすとはなんという不覚。獅童さんのライオニール、二千年前の英雄にして二千年間「オレ様が最強」と思って復活の日を待ってきた強さと重さがみなぎっていて、絶妙に「ヤな奴感」もあって、さすがでした。あの獅童ライオニールにぶつかっていくギラ君のお芝居も良かったなぁ。酒井くんすごい。