(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください)


2月2日から期間限定公開されていた『555』20周年作品、滋賀では2月16日からの公開でした。
2月16日といえば『ハイキュー!!』映画の公開日でもあり、上映スケジュールを確認すると『ハイキュー!!』の方は『鬼滅』や『呪術』なみの上映回数、一方の『555』は朝と夜の2回だけ。おおお、2回か…。でも滋賀で上映してくれるだけで本当にありがたい。これまではわざわざ京都まで足を運ばないといけないことがほとんどでしたから。

ちゃんと入場特典もありましたし。
1週目は555かウルフオルフェノクがもらえて、残念ながらオルフェノク。うーん、やっぱり555が良かったなぁ。

私は『ディケイド』からしか平成ライダーを見ていなくて、『555』はリアルタイムでは見ていません。TVシリーズはCSの再放送で見て、劇場版『パラダイス・ロスト』もDVDレンタルか何かで見ました。
でもそれももう10年くらい前のこと。細かい部分はすっかり忘れてしまっていて、今回登場する北崎も「北崎?北崎って誰だっけ?」とググったほど(^^;)
あの片肌脱ぎのワイルドな少年がこんな立派なスーツのおっさん(失礼)になったのか…。

そんなわけで、『555』にめちゃめちゃ思い入れがある、というのではなかったんだけど、「20年目の555」、面白かったです!
草加が最高! あの実にいやらしい、性格の悪いニヤリ顔がたまらない。村上さん、なんであんな表情できるの。井上敏樹大先生に「俺の方が草加巧い」って言われて練習したの。

映画見る前に「ラジレンジャー」で井上先生&村上さんのお話を聞いていたから、冒頭の解剖のシーンには「なるほど」と思ったし、草加が真理に迫るシーンでは「昔はこういう場面撮るの大変だったのかぁ」と。
ただベンチに腰掛けるだけでも草加近いんだよ! なんで空き缶捨てたあとでそんな近づこうとするんだよ、草加ぁぁぁ!

TVシリーズで死んでしまっている草加、でも井上先生が「出たいだろうと思って」今回もしっかり出してくださったそうで、むしろ草加の映画になってたよね。たっくんよりたぶん出番多い。ラストも草加のアップだし。

「台詞を口に出しながら書いてる」らしい井上先生、今回の仮面ライダーミューズの、「見ないで」「恥ずかしいです」も声に出してらっしゃったのかしら。あのくだり、3回ぐらいあったけどちょっと鬱陶しかったな~。

お話は、TV本編のだいぶあと。
真理は敬太郎の残したクリーニング店を切り盛りしていて、そこには「いつの間にか戻ってきていた」草加と、敬太郎の甥の条太郎がいます。
菊池クリーニング店の2号店は海堂さんがラーメン屋に変えてしまっていて、働いている3人の若者は全員オルフェノク。真理たちはオルフェノクを守るために活動している。

一方、かつてオルフェノクを庇護していたスマートブレイン社はオルフェノクを狩る組織となっていて、そこの社長が立派なスーツ姿の北崎。スマートレディも代替わり。
北崎の下についている殲滅隊隊長、胡桃玲菜が変身するのが仮面ライダーミューズ。変身アイテム・ミューズフォンがスマホ形になっていて、時代を感じました。折りたたみフォンじゃないんだー。

草加はカイザに、そしてラーメン屋の若者ヒサオがデルタに変身して、たびたび殲滅隊と交戦。「こんな時たっくんがいてくれたらなぁ」と条太郎は言うのだけど、実は条太郎は巧には会ったことがない。
巧は数年前(※具体的にどれくらい時間が経っているのか、この物語がTVシリーズの何年後なのかも明示されてはいない)に姿を消して行方不明。
「最後に見た巧の姿が忘れられない」と言う真理。

もうオルフェノクの詳しい設定を忘れてしまっているのだけど、TV本編の最後で、「いつまで生きられるかわからない」という話がそういえばあったよね。細胞がさらさらと灰になって崩壊していく、だからもうクリーニングの仕事を続けることができない。「洗濯物を汚してしまうんだ」
「散歩に行く」とだけ言って店を出て行った巧。真理はピンと来てとっさに「マヨネーズ買ってきて。今晩お好み焼きにするから」とお遣いを頼むものの、結局巧は帰ってこなかった。

「でも草加くんも死んだと思ってたら戻ってきたし」いつか巧もきっと…と一縷の希望を捨てられない真理。
「乾がいなくなったのはおまえのせいだろ。おまえが一発やらせてやんなかったから」などとゲスなツッコミをする海堂さん。テンション高い唐橋さんの演技とても楽しくて良かったけど、しかしそういうこと言っちゃうのかー。海堂ってそんなキャラだったっけ???

スマートブレインは「オルフェノクを見かけたら通報を」とCMを流し、出前の途中でオルフェノクに変身しておばあさんを助けたヒサオが通報され、殲滅隊に取り囲まれる。

ここ、ひどかったよねぇ。
交通事故から助けてもらったおばあさん、「ありがとうございますありがとうございます」ってぺこぺこ頭下げといて、ヒサオの姿が消えたとたんしれっと通報するんだもん。人の心とかないんか。

でも「人の心」だからこそなのかなぁ。それとこれとは別っていうか。人間には不可能なスピードで動ける怪物を目の当たりにして、たとえそのおかげで自分の命が助かったとしても、すんなり受け入れることなんてできない。脅威は脅威。
自分たちとは違うもの、自分たちよりも強力な力を持ったものに対して、人間は恐怖を感じずにはいられないのかもしれない。

デルタに変身して戦うヒサオ。海堂たちも駆けつけて戦うものの、AI予測を駆使して戦う仮面ライダーミューズを相手に苦戦。そこへ巧が現れ、「待ってました!」と思ったら彼は逆に殲滅隊の方に味方して――。
「あいつ裏切りやがった!!!どういうつもりだ!」とまたまたテンションの高い海堂さんに、「彼のことはよくわかっている。何か事情があるのかも」などといい子ぶる草加。いや、おまえに「よくわかってる」とか一番言われたくないだろ。

巧が変身するネクストファイズもアイテムはスマホ。ネクストファイズの戦い方の演出というか描写、面白かったなぁ。

ヒサオは戦闘で死んでしまって、人手不足のラーメン店を手伝う草加。草加が湯切りしてるカット、超良かった。ご丁寧に2カットあったよね? 真面目な顔でザルをシュッと振る草加、面白すぎる。村上さんご自身のアイディアで実現した場面らしく、インタビュー動画で「みどころです!」っておっしゃてたけど、ほんとあれはみどころ、不意打ちの面白場面だった。

えーっとそれで、「裏切り者」呼ばわりされたあとで巧は真理に会いに来て、「渡したいものがあっただけ」と言ってマヨネーズを渡す。
何年越しだよ。
どんな遠いとこまでマヨネーズ買いに行ってたんだよ。
てか、もしあの日買ってたマヨネーズだったらとっくに腐ってるのでは。

マヨネーズと一緒に全部説明したんだったかな。あの日、細胞どんどん灰になって「もうダメだ、死ぬ」みたいになって、気がついたらスマートブレインに救助されていた巧。細胞崩壊を止める薬と冷凍睡眠カプセルみたいなやつで延命されている。

もともと俺は――ファイズは、オルフェノクと戦っていた。だから、やってることは変わらない、と巧は言う。「オルフェノクに未来はない」「死んでるのか生きてるのかわからない」。
自分がオルフェノクだからこそ、そしてその自分が延命措置を施されなければ結局死んでしまう身だからこそ、「オルフェノクに未来はない」と言うしかないのかな。だからってスマートブレインの言うなりにならなくてもいいじゃん、という気もするのだけど。

胡桃玲菜は巧に好意を持っていて、嫉妬からか、真理を拉致って、強制的に彼女の“F記号”を発動させる。そして真理はオルフェノクに
なんで嫉妬すると真理をオルフェノクにするのか、ちょっとよくわかんないところもあるけど、彼女をオルフェノクにしてしまえば合法的に殺せる、ってことだったのかな。人間をむやみに排除することはできないけど、オルフェノクなら殲滅対象、堂々と消すことができると。

ラーメン店が殲滅隊の襲撃を受け、駆けつける草加と真理。その前に草加、真理にちゅーしようとしてたのに、電話が鳴って台無し。電話かかってきた時の草加の「チッ」って表情がまた良かったよね。もうちょっとだったのにね、惜しかったねぇ、ぶははは。

殲滅隊との戦いで思いがけずオルフェノクに変身してしまった真理は、ショックのあまり身投げしようとする。でももうオルフェノクなのでそう簡単には死なない。巧に助けられ、廃校みたいなところで看病される。
血塗れだったはずの服がきれいになっていて、おばさんはつい「巧が着替えさせたのかな」と思ってしまいました。

オルフェノク同士になってしまった巧と真理。

おばあさんが通報するシーンでも思ったけど、人間とオルフェノクの間にはやっぱり越えがたい壁があるよね。「共存できる」と言っていた人間でさえも、現実に自分がオルフェノクになってしまったらやっぱりショックで、すぐには受け入れられない。巧がオルフェノクでも関係ない、と思っていただろう真理でさえも……。

二人で少し会話したあと、出ていこうとする真理を巧が引き留めて、「助けてくれ」と縋る。ここはちょっとびっくりしたな。「え、たっくん、そういうことするんだ」と。そんなふうに弱音を吐いて、真理に甘えちゃうのかぁ、そうかぁ。
縋られて、真理も受け入れちゃうし。
オルフェノク同士の愛の営みシーン、史上初では???
人間態同士の“絵”じゃないからこそ描けたシーンだった気はする。巧と真理がそのまま絡んでたらやっぱりちょっと生々しいもんね…。オルフェノク同士だからこそファンタジックに処理できる。

でも。

なんだよー、海堂の言う通りなのかよー、って思っちゃったなー。
ラスト、あのマヨネーズでみんなでお好み焼きを楽しく食べてるところで終わって、猫舌の巧のために真理がふーふーしてあげたりラブラブで、こじらせて暗くなってた巧がすっかり明るくなって、「生命線伸びた」とか言ってて、「やっぱり一発が必要だったんかい!」と思わずには。

真理も条太郎に向かって、「条太郎もオルフェノクになったら?悪くないわよ」なんて言ってさー。いや、あんた、死のうとしたじゃんよ……何その手のひらクルー。

TVシリーズの恋愛模様&すれ違いめんどくさかったし、特撮に恋愛要素はそんなにがっつりなくていいと常々思っているので、巧と真理がああいう形ではっきり結ばれてしまうの、なんかこう、むずむずしたなぁ。いや、ハッピーエンドなんだけどさー。

草加が正体現して真理をはねのけるところ、てっきり「乾と寝たな!」って激昂するのかと思っちゃったし。
あの草加の流れだと絶対そうならない? 本物じゃないからそれまでの真理へのアプローチは全部嘘、そんなことより真理がオルフェノクになったことが問題、ってこと???

今作の草加は実はアンドロイドで、スマートブレインから派遣されて真理がオルフェノクになるのを待っていた(いずれなるに決まっているのでその時に殲滅するために)って言うんだけど、草加の正体がそうなら、おばあさんやコウタが通報しなくても、はなからスマートブレインは菊池ラーメン店がオルフェノクの巣窟だと知ってたことになるよね?

一口にスマートブレインと言っても色々組織があるとか、アンドロイド草加が報告せずにいたとかなのかな…。

あの草加、アンドロイドにしては「草加」すぎて、記憶も表情もふるまいかたもあまりに見事に草加をコピーしていて、一体どんな技術を使ったらあそこまで「人格」を再現できるんだろう。
スマートブレイン社すごい。

草加と同じく北崎もアンドロイドだった。
草加の方は「真理に近づく」という名目で草加型にする理由があるけど、なんであっちはわざわざ北崎だったのかな。制作の都合上以外にそれっぽい理由があるとしたら、オルフェノクのことはオルフェノクが一番わかっている、みたいなことだろうか。
オルフェノクを狩るにはオルフェノクの力が必要で、だから巧を生かしてネクストファイズにしていた……?

「あんなやつらには共食いさせておけば良いのです。その方が面白いでしょう?」と言ってほくそ笑んでる人間がいるのかなぁ。

アンドロイド北崎はめっちゃ強くて、ネクストファイズでもダメで、条太郎がファイズギア持ってきて、「わかってるじゃねぇか。やっぱり俺はこいつで行く」と巧が満を持してオリジナルのファイズになるのはアガった。またそこの戦闘シーンに「Justiφs」が流れるんだよねぇ。熱い!

「私も一緒に」と真理もオルフェノク態で参戦、愛の力で二人は見事北崎を撃破。ネクストファイズより劣るはずのファイズで勝つ――うん、そうこなくっちゃね。

迷いが消えて覚悟が決まったら想定外の力が出るし、寿命も延びるってことなのかな。薬がなくても、細胞崩壊止まって生命線も伸びて。
ロストしたパラダイスは、こうしてリゲインドされた……。

けれどもスマートブレイン社自体が消滅するわけもなく、新たな社長としてまた草加アンドロイドが。
やっぱり絶対面白がって草加を増産してる人間がいるよね。別に草加型じゃなくていいだろうに草加型にこだわるやつが(※おそらく井上大先生と我々ファン)。

もうほんと最高だったもんね、最後のあのアップの表情。「草加ぁぁぁぁぁぁ!」ってなるもん、やっぱ草加型アンドロイドじゃなきゃだめ。おまえじゃなきゃダメだよ、草加!

ラーメン店の常連客として高岩さんが特別出演されてるのも楽しかったし、なんだかんだとても面白かった。どうして『オーズ10th』だけあんなことに…とつい思ってしまうほど。
戦闘シーンとか、ネクストファイズや仮面ライダーミューズの造型、スマートブレイン社のセットなどなど、ストーリー以外の部分もとてもクオリティ高かった。

もし木場役の泉さんが存命でらしたらまたストーリーが変わってたのかな。どういう形で井上先生は木場を出してきただろう……。