(※以下ネタバレあります。これからご覧になる方はご注意ください。観てからだいぶ時間が経って書いているので、記憶違いなどはご容赦を)



3月8日13時公演を観てまいりました。
久しぶりの大劇場です!
昨年10月の宙組、11月の雪組のチケットを取っていたのに、どちらも中止になり、昨夏7月に花組さんを観て以来の観劇となりました。

今回も3月2日の公演が急遽中止となり、その後5日まで中止、8日も望み薄か……と思っていたら8日から公演再開!ギリギリセーフ!!!

はぁぁぁぁぁぁ、もう、ほんとに再開の情報出るまで生きた心地がしませんでしたよ。「また?また中止?もう私、二度と生で宝塚観られないの??」って。
チケット取る時も不正防止画像が出ない罠に引っかかって買えないところだったし、行きの電車は途中で止まりそうになるし、無事に観劇するハードルが高すぎる……。

そんなわけで。
待ちに待った生観劇!
小池先生のオリジナル作品、実はあんまり好みじゃないんだけど(『PUCK』と『天使の微笑 悪魔の涙』は好き)、今作は楽しめました。ショーがない代わりにふんだんに織りこまれたレビューシーン、柚香さん星風さんのさすがのお芝居とエンターテイナーっぷり

途中、柚香さんの手を取って「意外に温かい手」とかって言うところで星風さん、「熱っ!」って。火傷でもしたみたいにパッと手を離して、一瞬柚香さんが「???」ってなってたの面白かった。「女王様にそんなコメディエンヌの才能が」とかって返してはったけど、一瞬放送事故みたいになってた。思いがけないアドリブだったのかしら。

なんか、公演中止がコロナのせいだったし、もしかしてほんとに柚香さんの手がすごく熱かったことがあったのでは…とか思ってしまった(^^;)
別の場面で柚香さんが同じように「熱っ!」って言って「お返し」してたの、お茶目だったな~。

星風さん扮するカトリーヌは劇場「アルカンシェル」の花形歌手。
柚香さん扮するマルセルはニジンスキーの再来とも言われながら教師と喧嘩してダンススクールを飛び出し、アルカンシェルでも自由に踊ろうとして「うちの看板シーンを勝手に変えるな!」とスタッフに怒られたりしている。

マルセルはカトリーヌのことを「女王様」と揶揄したりして、はじめのうち二人の仲はちょっと険悪なんだけども、パリにナチスが侵攻し、喧嘩している場合ではなくなってしまう。
ユダヤ系の演出家たちがアメリカに亡命し、カトリーヌは演出を、マルセルは振付を担当することになる。
そこへやって来るナチスの文化統制官コンラート。上演はクラシックしか認めない、ジャズなんて御法度…。あれ、なんかこういう話ついこないだも見たような(→月組公演『フリューゲル』感想記事)。

コンラートの求めに応じてオペラの歌曲を歌わせられるカトリーヌ、とっさに「僕が伴奏を」とピアノを弾く柚香さんが格好いい。星風さんの歌声も素敵。

コンラート役は輝月ゆうまさん。歌もとてもうまいしお芝居も貫禄があってすごい、と思ったら専科さんだった!
専科さんだけど柚香さんと同期、柚香さんの退団公演で敵役を務めるの、劇団側の配慮でもあるのかしら。歌声だけでなくカトリーヌ本人の魅力にも惚れ込んで自分のものにしたがるコンラート、でもただのスケベ親父じゃなくてナチス高官としての威厳、プライドの方が何倍も上回っている渋い役、輝月さんのお芝居、とても良かったです。

でも普通ならこういう立ち位置の役、二番手さんがやるのでは?と思いますよね。主役にとっては恋敵でもあるし。
二番手にして次期トップである永遠輝せあさんはコンラートの副官フリードリッヒ。ナチス側なんだけど、この人はとても良い人。もともとドイツのラジオ局で流行りの音楽を担当していたとかで、マルセル達に「ドイツ軍の兵士がパリで聞きたいのはジャズなんですよ!」と「ご禁制の音楽」を使うことをそそのかす。

いや、この人、「いい人」なのかな…?
いくらナチス高官が観劇する日はクラシックをやる、ジャズは裏演目といっても、そんなんすぐバレるに決まってるやん。バレたら劇場お取り潰しになるやん、何簡単に「ジャズが聞きたいんです!」とか言ってんの。

クラシックとジャズ、短い期間で二通りの演目を考えなければならないことでマルセルとカトリーヌの仲は急速に深まっていくので、フリードリッヒ、2人のキューピッドではあるけど。

フリードリッヒ自身にもロマンスがあって、アルカンシェルの歌手の一人であるアネットといい仲になっていきます。アネット役は次期トップ娘役に決まっている星空美咲さん。あまり印象に残ってないな(^^;)
永遠輝さんは徹頭徹尾爽やかな青年、ナチス副官としての軍服も、アネットを助ける際の私服(スーツ)姿もビシッと決まって格好いい。永久輝さんは歌声も本当に良いですよね~。あの声質好き。

ただ、最初に配役見た時にフリードリッヒが敵役かと思ったのに全然違って、爽やかな好青年だったの、ちょっと肩透かしでした。悪い永久輝さんも見たかったな。トップになってしまうとガチの「悪い男」はまずできなくなるから。

二番手が敵役、フリードリッヒみたいな役どころは三番手のスターさん、というのがよくある配置な気がします。
でも今回二番手がフリードリッヒなので、三番手である聖乃あすかさんが何をやるかというと――狂言回し

マルセルたちは第二次大戦中の人物ですが、聖乃さん扮するイヴは現代の人間。マルセルたちとともにアルカンシェルの舞台に立っていたコメディアン・ペペのひ孫で、お話全体が彼の語る昔話という構成。

一人だけ現代の人間なので、劇中のキャラクターとの絡みはなく、ただ説明をするだけ。メインで歌う場面もあったとはいえ、聖乃さんファンにとってはあまりに物足りない役どころだったのでは。

イヴの曾祖父ペペ役は一樹千尋お姉様! 一樹さんの歌が聴けて嬉しいぃぃぃぃぃ!!
軽妙なコメディアンのシーン、捕まって収容所送りになってる時のくたびれた姿、さすがのお芝居です、好き。

ジャズを演るのがバレてマルセルは捕まるし、カトリーヌはコンラートとともにドイツに連れていかれ、ペペはなぜか政治犯として収容所送り。加担した罪でフリードリッヒも慰問局に左遷。
しかし彼が慰問局にいたおかげでマルセルはペペの救出に成功するし、カトリーヌとも再会。
少し都合が良すぎる気がしないでもない(^^;)
その場では「私はここに残るわ」と言っていたカトリーヌがすぐパリに戻ってくるのも「えー」って感じだし、コンラートやフリードリッヒが再びパリに集結するのもかなり都合が良すぎる。

クライマックスはナチスによるパリ爆破の阻止、最後までコンラート一人が悪を全部背負う感じなのも微妙ではありました。フリードリッヒの方にもっと葛藤が描かれても良かったような。祖国への想いとパリの友人&恋人たちとの間で板挟み…にほとんどなってなかったよね、フリードリッヒ。

フィナーレ部分は衣装も非常に素晴らしく、麗しい柚香さんを堪能。最後にがっつりショーも観たかったなぁ。一本立てよりお芝居とショーの二本立てがやっぱり好き。

パリの市章に刻まれた「たゆたえども沈まず」という言葉をモチーフに、幕を上げられない、自分たちのやりたい舞台を創れないという葛藤を描く……。作・演出の小池先生はコロナ禍の上演中止を念頭に構想されたらしいのだけど、どうしても昨秋からの公演中止の方を思い浮かべてしまいました。

「何が起ころうとも、お客様は熱い舞台を望んでいる」

劇中の台詞、ほんとにその通りなんだよーーーーーー! 何があっても、宝塚の舞台、スターさんの輝きを嫌いになることはできない。唯一無二の世界なんだ……。
だからこそ、歌劇団にはもっと生徒を大事にしてほしいけれども。

「たゆたえども沈まず」
沈まずに、この先もずっと夢の舞台を見せてほしいよ、宝塚。

5月の宙組公演、どうなるんでしょうね……。