(※以下ネタバレあります。これからDVD等で楽しまれる方はご注意ください。記憶違い等はご容赦を)



朝美絢さん主演全国ツアー公演『仮面のロマネスク』『Gato Bonito!!』、愛知県芸術劇場大ホール公演をライブ配信で楽しみました。

『仮面のロマネスク』、原作はラクロの『危険な関係』。wikiによると原作とはかなり違う結末になっているそう。

私は1997年の初演、ユキちゃん(高嶺ふぶき)サヨナラ公演『仮面のロマネスク』を観ているんですが……ほとんど記憶になく(^^;)
なんか、正直あまり面白いと思わなかった気がするのですが、今回の雪組公演、とても良かったです。
悪くてエロい朝美さんがとにかくいい!
夢白さんの“魔性の女”も見事!!
二人の丁々発止がものすごい緊張感で、「えええ、これどうなるの、どうなっちゃうの」と、昔の記憶がないのを幸い、はらはらしながら観ていました。

「よくこれ宝塚で、しかも大劇場でやったなぁ」とヒヤヒヤもしましたし。

再演はこれが4回目なんですよね。中日劇場1回、全国ツアーで3回。こんなエロい宝塚を全国で…! 意外と人気ある演目なのかしら。麗しいトップスターの色気をたっぷり摂取できる作品だものね。

舞台は1830年、王政復古下のパリ。朝美さん扮するヴァルモン子爵は名だたるプレイボーイ。一方、夢白さん扮するメルトゥイユ公爵夫人は「身持ちの堅い若き未亡人」を装いながら、裏では男をとっかえひっかえ、恋の駆け引きを楽しむ魔性の女。
二人は以前恋人同士だったことがあり、今も親しく互いの恋の成り行きをあけすけに語り合う仲。

ある夜、メルトゥイユは自分を裏切った男へのあてつけに、その婚約者・セシルを誘惑するようヴァルモンに依頼する。ヴァルモンはその時、若いセシルよりもトゥールベル法院長夫人の方に興味を引かれていて、それを察したメルトゥイユは「もしトゥールベル夫人を落とせたら、褒美に私自身をあげるわ」と約束。
かくして危険な恋のゲームが始まった――。

貞淑な人妻トゥールベル夫人役は希良々うみさん希良々さんもとても良かったなぁ。法院長という立派な夫を持ち、夫婦仲も良さそうで、「私は十分に幸せ」「これ以上の快楽も喜びも望まない」と言いながら、ヴァルモンに何度も情熱的に迫られ、しだいに「イヤよイヤよも好きのうち」みたいになっていってしまう。
その葛藤、苦しみ、密かな恋情……。痛いほど伝わってくるお芝居、出番も多いし、準ヒロインといっていい立ち位置で、素敵でした。
初演の時は誰が、と思ったら星奈優里ちゃんがやってたのね。ほんとに何も覚えてないや(^^;)

セシルに恋するうぶな青年ダンスニー役を縣千さん
セシルはジェルクール伯爵というだいぶ年上の将軍と婚約してるんだけど、ダンスニーはそれを承知でセシルに恋心を募らせるし、セシルの方もまんざらでもなくダンスニーに惹かれている。で、メルトゥイユとヴァルモンはダンスニーに「セシルとの仲を取り持ってやる」と言いつつセシルを誘惑するという……。
そしてダンスニーはダンスニーでメルトゥイユの誘惑に負けてどうも一夜を共にした感じで……ズボン直しながら部屋から出てくるのが生々しい(^^;)

純情でうぶで真面目な青年、若い縣さんの持ち味によく合ってました。初演の時はトドちゃん(轟悠)だったのかぁ、うーむ。もはや大ベテラン時代のイメージが強すぎて、トドちゃんのダンスニーが想像できない。

ダンスニーは最終的に騙されていたことに気づき、ヴァルモンに決闘を申し入れます。自分の恋心を弄ばれただけでなく、愛するセシルを傷物にされたわけだから怒って当然ではあるんだけど、「おまえもさっきズボン直してたんじゃん」と思わないこともない。

決闘の末、ダンスニーはセシルと想いを通わせるんだけど、ジェルクール伯爵との婚約はどうなったんでしたっけ。それとこれとは別ってことなの……???

ダンスニーが生き延びているということはヴァルモンは死んじゃったの?と思いながら迎えるラストシーン。観客と同じく「あなたは生きているのか死んでいるのか」と、メルトゥイユ夫人がすっかり寂しくなったサロンで一人ごちています。
上流階級の皆さんが恋の駆け引きで遊んでいる間に再び革命の機運が高まり、逃げられる人はみんな逃げちゃって、メルトゥイユ夫人も国外へ逃れようと思ってる。そういう寂しい状況になって初めて、彼女は真情を吐露し始めるわけです。
「私は本当の愛にまで仮面をつけた、そうしないと生きてこられなかったから」と。

そこへ現れるヴァルモン。生きとったんかーい!
決闘ではヴァルモンが空に向けて撃ち、気づいたダンスニーもはずして撃ったとかなんとか。
で、やっとお互いに本心を打ち明け、「二人だけの舞踏会」で幕。
ヴァルモンは近衛連隊所属だったらしく、「負けるとわかっていて国王側について戦う」――つまり、このあと死を覚悟して戦場に赴くわけで、二人とも「これが最初で最後のダンス」とわかって踊る。

ヴァルモンとメルトゥイユは実のところ最初から相思相愛で、やっと仮面をはずした時にはもう一緒にはいられない情勢だった。でもだからこそ、想いを通わせ合った最後のダンスは甘く美しくせつない……んだけど、この二人の「ゲーム」に巻きこまれたトゥールベル夫人のことを思うと手放しにハッピーエンド(?)を喜べない。ヴァルモンに打ち捨てられたトゥールベル夫人、最後修道院に入るんですよね。ヴァルモンにさえ出会わなければ、彼に言い寄られなければ、法院長夫人として平和に暮らしていけたのに。そりゃあ、出会ったことでめくるめく恋情と快楽を知ることができたとも言えるんでしょうけど。

そんなわけで、主人公2人に共感するのは難しいお話なのだけれど、でも夢白さんのお芝居はものすごく良いし、にこりともせず「仮面の愛」を貫く朝美さんも美しくエロティックで、「あなたがいたから生きていられた」という主題歌のとおり、この2人はこんなふうにしか生きられなかったんだな、と納得もさせられてしまって。

ヴァルモンの家は一度没落したのを彼の手腕で盛り返したらしいし、メルトゥイユも家の決めた結婚の末、未亡人になって、しかも時代は確実に「王侯貴族の没落」に向かっている。「いずれ破滅が来る」という予感の中、それでも「虚構の社交界」で生き抜いていかなきゃならない、そのためには仮面をつけ、享楽だけがすべてと自分に言い聞かせなければ……。

ヴァルモンの方はちゃんと「あなたはただ一人の人だ」ということを言っていて、彼女の気を惹くために女遊びしてたような感じもあるけど。

とにかく昔観た時よりもずっと良かったです。時代背景的にもコスチューム的にも次の『ベルばら』の前哨戦という感じがして、夢白さんのカペー未亡人がとても楽しみになったし、このエロくて悪いヴァルモンを経過したあとで、朝美さんがどんなオスカルを見せてくれるのかも本当に楽しみ。
ヴァルモンも近衛の人間だったものね~。軍服姿美しかったけど、今回は黒髪。オスカル様はブロンド。ポスター(※リンクは公式PDF)麗しいよね~可愛いよね~~~~~。

他のキャストではヴァルモンの従者アゾラン役の聖海由侑さんがとても目立ってました。アゾラン、主人と同じくプレイボーイで、しかもあけすけに主人の女遍歴について外で喋ってて、ヴァルモンが内心を表に出さず、どちらかというと陰気な感じなのに対して、あっけらかんとしたアゾランがバランスを取っていた感じ。
聖海さん、口舌も良く、目を惹くお顔立ちで、ダンスニーよりも二番手ぽい印象を持ってしまった。初演の時はトウコちゃん(安蘭けい)だったらしく、「あー、なるほど」という気がいたします。

ショー『Gato Bonito!!』は2018年の大劇場公演『凱旋門』の時の併演作品ですね。当時の感想記事こちらですが、「望海さん歌いまくりのラテンショー」が「朝美さん歌いまくりのラテンショー」になっていて楽しかった!
朝美さんの歌も安心して聞ける。「エル・クンバンチェロ」も「ブエノスアイレスのマリア」も良かったなぁ~~~~~。客席降りの「黒猫のタンゴ」では「ぴよりんチャレンジ」。可愛かった。
夢白さんの「コパカバーナ」は意外にパンチが効いていて良かったし、朝美さん&夢白さんのタンゴでのデュエットダンスも格好良くて素敵。
最後まで賑やかに踊りながら幕が下りる、楽しいショーでした♪

途中、縣さんの女役、ちょっと怖かったかな(^^;) 初演の時は彩風さんが女役だった場面よね、確か。縣さん、歌が弱いよね。もう少し歌うまくなってほしいし、なんだろ、全体的にもう少し色気というか雰囲気が出てくるといいなぁ。
あと咲城けいさんがきれいだった。お芝居ではジェルクール伯爵役でヒゲつけてて、そんなに出番も多くなかったけど、今回のメンバーの中では縣さんに継ぐ三番手位置? 次の『ベルばら』ではどの役をなさるのかな。

まだオスカルまでしか発表されてないものねぇ。アンドレはやはり縣さんなのかしら。
彩風さんの退団公演でもありチケット取れる気がしないけど、その時はまたライブ配信で(フラグ)。